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オブツーサとは学名・自生地・クーペリー 13 変種のなかでの位置

オブツーサとして流通する株の例。丸くふくらんだ葉先の上半分がくもりガラス状の窓になり、暗い脈が扇状に立ち上がる
Photo: Tariskal / CC0, via Wikimedia Commons
SPECIMEN — HAWORTHIA COOPERI VAR. TRUNCATA
オブツーサHaworthia cooperi var. truncata(流通名: オブツーサ・雫石・玉露)
系統軟葉系・クーペリーの変種 自生地南ア東ケープ州 見分けの鍵丸い葉先と扇状の脈

多肉植物の売り場で必ず見かける「オブツーサ」。丸くふくらんだ葉先の上半分がくもりガラスのように透け、その下から暗い脈が扇状に立ち上がります。光の角度が変わるたびに表情が動く——いちばん有名な軟葉系ハオルチアが人を惹きつけるのは、この一点です。透明感のある多肉を 1 鉢から始めてみたい方に向いています。

この記事でわかること
  • 流通名「オブツーサ」の実体が Haworthia cooperi var. truncata であること
  • 学名 H. obtusa が現在は別系統(シンビフォルミス側)を指していること
  • 自生地の環境が、窓・低い草姿・群生というかたちを決めていること
  • クーペリーの 13 変種のどこに位置し、近縁と何を見て分けるか
出典つきで整理した図鑑です — 品種は「候補」と「次に見る所」まで示します

オブツーサはハオルチアのどこにいるか

PLACEMENT
3 つに分かれた属の、どこに残ったのか
旧 Haworthia は 3 属に分かれたASPHODELACEAE / ALOOIDS
属の 3 分割は SANBI PlantZAfrica(Haworthia genus)の記述による。オブツーサは分割後も Haworthia に残る側

オブツーサは、3 つに分かれたハオルチアの仲間のうち、いまも Haworthia という属名を名乗り続けている側にいます。分子系統の研究によって、かつて 1 つだった Haworthia 属は 3 つに分けられました。硬い葉の仲間は Haworthiopsis(旧 Haworthia subgenus Hexangulares)へ、大型で硬質な仲間は Tulista(旧 subgenus Robustipedunculares)へ移り、残ったのが軟葉系・万象・玉扇を含むグループです。十二の巻やアテヌアータの記事で属名の書き換えが話題になるのに、オブツーサでその話をあまり聞かないのは、単純にオブツーサの属名が変わらなかったからです。

もう一段おりると、オブツーサは独立した種ではありませんHaworthia cooperi(クーペリー)という 1 つの種の下にある、変種(variety)という階級に置かれています。売り場では「クーペリー」と「オブツーサ」が別の商品として並ぶので、まったく別の植物のように見えますが、分類の上では親子です。この関係を頭に入れておくと、次章以降の名前の話も、あとで出てくる「13 変種」の話も、いっぺんに見通しがよくなります。

基本情報 — 学名・自生地・耐寒性

QUICK SPEC — 2026-07-24 実測 オブツーサ — 基本データ
受理名
Haworthia cooperi var. truncata(H.Jacobsen)M.B.Bayer
階級
変種(variety)/親は Haworthia cooperi Baker
基礎異名
Haworthia obtusa f. truncata H.Jacobsen
もう 1 つの異名
Haworthia ikra Breuer
系統
軟葉系(分割後も Haworthia に残る)
自生地
南アフリカ・東ケープ州(Cape Provinces)
生育環境
南向きの崖の裂け目・標高 400〜1,000m種群の値
年降水量
300〜400mm種群の値
耐寒性
自生地に霜は降りない/越冬値は要確認
殖え方
株元から仔を吹いて群になる
流通名
オブツーサ/雫石/玉露要確認
出所
GBIF Backbone・World Flora Online・SANBI

基本情報は、出所が言えるところまでを出所つきで書き、言えないところは「要確認」で止めます。ハオルチアは、育て方の記事に書かれた数値が孫引きを重ねて根拠を失っていることが少なくありません。この表では、学名は GBIF Backbone と World Flora Online、自生地と環境は南アフリカ国立生物多様性研究所(SANBI)の記述に限り、それ以外は書きませんでした。標高・降水量に「種群の値」と付いているのは、オブツーサ単独の測定値ではなく H. cooperi という種のレベルで記録されている数字だからです。

学名の来歴 — 2 段階でできている

1955 年
Haworthia obtusa f. truncata H.Jacobsen として記載(品種=forma の階級)
1999 年
M.B.Bayer が『Haworthia Revisited』で H. cooperi の変種へ組み替え
現在
Haworthia cooperi var. truncata(H.Jacobsen)M.B.Bayer = 受理名
著者引用
丸括弧の H.Jacobsen = 最初の命名者/その後の M.B.Bayer = 組み替えた人

いまの学名は、1955 年に付いた名前を 1999 年に別の階級へ移した結果できたもので、2 人の名前が並んでいるのはそのためです。植物の学名には、うしろに命名者の名前が付きます。Haworthia cooperi var. truncata (H.Jacobsen) M.B.Bayer という表記は、「もともと H.Jacobsen が付けた名前を、M.B.Bayer が別の位置へ移した」という履歴をそのまま表しています。丸括弧に入っている方が最初の命名者です。

この履歴を知っておくと、古い本や海外のサイトで Haworthia obtusa f. truncata という表記に出会っても戸惑いません。同じ植物の、古い呼び方です。もう 1 つ、GBIF は異名として Haworthia ikra Breuer も挙げています。ハオルチアには種を細かく分ける立場の研究者がいて、そこで立てられた名前が、別の立場の整理では異名の側に落ちる——ということが実際に起きています。ハオルチアの学名は「正解が 1 つに決まっている」世界ではない、という感覚を持っておくのが大切です。

自生地 — 環境がこの姿をつくった

WHERE
日陰の崖
南向きの石英質砂岩の崖。棚・裂け目・割れ目に固く根を張る。直射が回り込みにくい、涼しく暗い場所。
HOW MUCH
年 300〜400mm
雨は年間を通じて降るが、春から夏に山がある。標高はおよそ 400〜1,000m。乾期には葉が紫を帯びて休む。
SO WHAT
窓・低い姿・群生
暗い場所で光を集めるための窓、光の量を加減する内曲した葉、崖で生き残るための仔吹き。姿は環境の答え。

オブツーサの見た目は好みで選ばれた造形ではなく、南アフリカ東ケープ州の「日陰の崖」という環境に対する答えです。SANBI は H. cooperi の生育環境を、南向きの石英質砂岩の崖にできた棚や裂け目だと記述しています。標高はおよそ 400〜1,000m、年降水量は 300〜400mm。日当たりのよい平地ではなく、光が回り込みにくい暗く涼しい岩場が本来の住所です。この「暗い」という条件が、次章で扱う窓の意味に直結します。

同じ記述には、姿を読み解く鍵がもう 2 つあります。1 つは、葉が扁平で内側に曲がっていること——これは受ける光の量を自分で加減するはたらきだと説明されています。もう 1 つは、乾いた季節に葉が紫を帯びて休眠に入ること。強い光に当てると紫や褐色に染まるのは異常ではなく、もともと持っている反応だと分かります。そして株元から旺盛に仔を吹いて密な群になるのも、崖という不安定な場所で数を確保するための性質です。

耐寒性と越冬 — 言えることと、言えないこと

TEMPERATURE
自生地の気温帯と、越冬の目安
気温
自生地の日平均 12–27°C 越冬の目安 3–5°C(要確認)
0°C10203040°C
自生地の日平均帯夏の高温 35–40°C霜(自生地には無い)
気温は SANBI PlantZAfrica の H. cooperi var. picturata 自生地記述。越冬温度は種固有の一次情報が無く要確認

この植物について確かに言えるのは「自生地に霜は降りない」ということで、「何℃で枯れる」という数値は一次情報が見つかりません。SANBI の記述によれば、H. cooperi の自生地は夏に 35〜40℃ まで上がり、日平均の最高はおよそ 27℃、最低はおよそ 12℃。冬は涼しくなりますが霜は降りません。そして栽培については、霜・過度の日射・過湿から守る必要があると明記されています。越冬でいちばん重要なのは「何度か」より「霜に当てないこと」だと分かります。

目安は最低でも 3〜5℃ を下回らせず、できれば 5℃ 以上。これは属レベルの指針で、オブツーサ固有の値としては要確認です。冬は水やりを控え、窓辺の冷え込みと霜を避けてください。この目安の根拠と冬の管理はハオルチアの越冬(耐寒性)にまとめています。

「オブツーサ」という名前が指しているもの

NAME ROUTING
「オブツーサ」と「H. obtusa」は、行き先が違う
レーン A — 日本の流通名「オブツーサ」TRADE NAME
レーン B — 学名 Haworthia obtusa Haw.(1825)SCIENTIFIC NAME
GBIF Backbone 実測(2026-07-24): H. obtusa Haw. は SYNONYM、受理名は H. cymbiformis var. obtusa (Haw.) Baker

日本で「オブツーサ」と呼ばれる株の実体は H. cooperi var. truncata であり、学名 Haworthia obtusa が現在指しているのは、それとは別の系統です。GBIF Backbone で Haworthia obtusa Haw.(1825 年記載)を引くと、この名前は異名(SYNONYM)として扱われ、受理名は Haworthia cymbiformis var. obtusa (Haw.) Baker と返ってきます。つまりシンビフォルミス(京の華・宝草の仲間)の側です。呼び名の「オブツーサ」と、学名の obtusa は、いま同じものを指していません。

なぜこんなことになったのか。手掛かりは前章の来歴にあります。1955 年に付いた名前が Haworthia obtusa f. truncata ——「H. obtusa の truncata という品種」だったからです。当時はオブツーサの側が H. obtusa の傘の下にありました。その後 H. obtusa という種名自体がシンビフォルミス側の変種として整理され、truncata はクーペリーの変種へ移された。移動先が別々だったので、名前と実体がすれ違ったまま残ったのです。日本の流通名は 1955 年当時の学名を今も引きずっている、と考えると腑に落ちます。

ちなみに、この 2 つの名前はどちらも葉先の形を言っています。ラテン語の obtusus は「鈍い・丸い」、truncatus は「切り取られた」。丸くふくらんだ葉先と、その先が切り落とされたように平らな面——オブツーサを実際に見ると、この 2 語が両方とも当てはまることが分かります。

もう一方の obtusa は、絵として別物

Haworthia cymbiformis var. obtusa に分類されている株を真上から。葉先が丸くにぶい三角で、窓に灰緑の網目状の模様が広がる
Wikimedia Commons で Haworthia cymbiformis var. obtusa のカテゴリに分類されている株(ベオグラード・Jevremovac 植物園)。葉先は丸くにぶい三角で、窓の模様は網目状。Photo: Marija Gajić / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

名前だけの話ではなく、姿としても別物です。上の写真は、ファイル名こそ「Haworthia obtusa」ですが、Wikimedia Commons の現在の分類カテゴリは Haworthia cymbiformis var. obtusa です。葉は舟形にふくらみ、葉先は丸くにぶい三角形。窓は葉の上面に広く乗り、模様は灰緑の網目状です。扉の写真——上半分がくもりガラスのような面になり、暗い脈が下から扇状に立ち上がるオブツーサ——と見比べると、受ける印象がはっきり違います。

同じ群落を斜めから見たところ。葉の横顔がふくらみ、先端が丸いことが分かる
同じ群落を斜めから。葉の横顔がふくらみ、先端が丸く終わっている。Photo: Marija Gajić / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

ただし、ここでも断定はしません。この 2 枚の同定は Commons の分類カテゴリによるもので、当サイトが検分した結果ではありません。「Commons ではこう分類されている株が、こういう姿をしている」という提示です。名札に Haworthia obtusa と書かれた株を見かけたら、その名前は2 通りの行き先を持ちうる——だから名前ではなく実物の葉先と窓を見る、というのが現実的な向き合い方になります。

流通名と学名の対応

呼び名使われる地域・場面指していると思われる学名裏付け
オブツーサ日本の園芸流通で最も一般的H. cooperi var. truncata1955 年の基礎異名に由来。学名としては現行でない
雫石(しずくいし)日本の園芸流通同上(の呼び換え)園芸流通名。学名的な裏付けはない
玉露(ぎょくろ)日本の園芸流通同上/近縁を含む場合あり園芸流通名。指す範囲が一定しない
水晶殿・草玉露中華圏の流通・展示obtusa 系として扱われる株Wikimedia Commons のファイル名で確認できるのみ(要確認)
Haworthia obtusa古い文献・海外サイト・名札H. cymbiformis var. obtusa(現行)GBIF Backbone で SYNONYM。受理名は別系統

呼び名はどれも園芸の流通名で、学名のように意味が定まってはいません。とくに「玉露」は、店や地域によって指す範囲が違います。当サイトはこれらを同定の根拠にはしません。名前は入口として便利ですが、そこから先は葉先の形・葉縁の毛・窓の模様という実物の形質で確かめます。銘(紫・黒・錦などの選抜名)の系統と選び方は、オブツーサの種類と違いで扱っています。

窓は何をしているのか

ANATOMY
葉先のどこを見ているのか — 3 つの部位
オブツーサとして流通する株の葉先を拡大したところ。くもりガラス状の窓の面と、その下端から立ち上がる暗い脈が見える 1 2 3
1
窓の面

葉先の上半分を占める半透明の面。すりガラスのように光を通す。ここが平らに広いほど「窓がいい」と言われる。

2

窓の下端から指のように立ち上がる暗い筋。オブツーサでは扇状に広がるものが多く、模様の個性になる。

3
窓の外側

光を通さない濃い緑の部分。窓とのコントラストが強いほど、透明感が際立って見える。

写真: Tariskal / CC0, via Wikimedia Commons(オブツーサとして流通する株の一例。同定は投稿者由来)

窓は飾りではなく、暗い場所で光を葉の内部へ届けるための装置です。SANBI は、葉の表面の窓が光を内部組織へ通し、日陰で涼しい崖という環境でも光合成を成立させていると説明しています。葉の大部分を岩や土に隠したまま、先端の窓だけで光を受け取る——オブツーサの葉先が丸くふくらみ、その上半分が透けているのは、この戦略が極端に出た形です。窓という器官そのものの成り立ちはハオルチアの品種と系統の全体像にまとめています。

この見方は、栽培の判断にもそのまま効きます。窓が光の入口なら、そこを遮ることが最も損だということです。用土で窓が埋まる、ほこりが積もる、葉が重なって下の窓が隠れる——どれも光量を落とします。逆に強すぎる光では、乾期の反応と同じように葉が紫や褐色に染まって光をブロックしにいきます。窓の状態は、その株が受けている光がちょうどよいかを教えてくれるいちばん分かりやすい指標です(光の当て方の詳細は育て方は「窓」で決まる、伸びてしまった株は徒長の原因と直し方へ)。

なぜ株は低く座るのか

自生地では、葉のどこが見えているか FIG.01Section
上 / Window 葉先の窓だけが表に出る 乏しい光を受け取る入口。ここを隠さない
中 / Body 葉の本体は岩の裂け目の中 乾燥と強光から守られ、水分をためる
下 / Root 根は割れ目の奥へ固く 崖にしがみつき、少ない水をとらえる
SANBI の自生地記述(棚・裂け目・割れ目に固く根を張る/窓が内部へ光を通す)にもとづく
概念図

自生地では葉の大半が岩の裂け目に収まり、表に出ているのは窓の面だけ——鉢の中でも、株が低く座っているのが自然な姿です。SANBI は、この仲間が崖の棚や裂け目・割れ目に固く根を張ると記述しています。上の図は縮尺ではなく、どこが露出しているかの関係を示した概念図です。深い鉢に高く盛って植えるより、株元が用土に触れるくらいの浅い座らせ方のほうが、もとの姿に近くなります。

クーペリー 13 変種のなかでの位置

オブツーサは H. cooperi の 13 変種のうちの 1 つで、姉妹にあたる変種たちとは連続的につながっています。GBIF Backbone で Haworthia cooperi の下位分類群を引くと、受理されている変種は 13 個。SANBI も「H. cooperi var. picturata は 13 の認められた変種のうちの 1 つ」と書き、その顔ぶれまで一致します。2 つの独立した出所が同じ 13 を示しているのは、この数字がかなり安定していることを意味します。

上のカードは、そのうち流通で目にしやすい 4 つです。葉先に毛が伸びるピリフェラ、全身が白い毛におおわれるベヌスタ——見比べると、オブツーサの「毛が目立たず、葉先が丸くふくらむ」という性格が輪郭を持ちます。ただし変種どうしの境目は連続的で、中間的な株はどちらとも決めきれません

13 変種の一覧

変種名備考
var. cooperi基準となる変種
var. dielsianaPoelln. 記載 → Bayer が組み替え
var. doldiiBayer 記載
var. gordonianaPoelln. 記載 → Bayer が組み替え
var. gracilisH. gracilis(種から変種へ移動)
var. isabellaePoelln. 記載 → Bayer が組み替え
var. leightoniiG.G.Sm. 記載 → Bayer が組み替え
var. picturata崖に固有。SANBI が詳細ページを持つ
var. pilifera葉先に毛(ノギ)が伸びる
var. teneraPoelln. 記載 → Bayer が組み替え
var. truncataオブツーサ — この頁の主題
var. venustaH. venusta。全体が白い毛におおわれる
var. viridisBayer 記載

一覧を眺めると、多くの変種が「かつて別の名前だったものを Bayer が H. cooperi の下へ集めた」結果であることが見えてきます。Haworthia gracilis は種から変種へ移り、その変種たちもまとめて H. cooperi の変種になりました。ハオルチアで種の数え方が人によって大きく違うのは、こうした「まとめるか、分けるか」の判断が研究者ごとに異なるからです。日本では林の 546 種、細分派のBreuer の 366 種、統合派のBayer の 60 種という 3 つの見解が知られています。参考までに、3 属へ分割したあとの Haworthia に限れば、SANBI は38 種・131 分類群としています。

近縁との見分け — 候補と次に見る所

葉先・縁の毛・窓の模様 — 3 点だけ見る
オブツーサ H. cooperi var. truncata
葉先
丸くふくらんだドーム。上半分がくもりガラス状の面
縁・先の毛
鋸歯もノギも目立たない
窓の模様
暗い脈が下端から指状・扇状に立ち上がる
迷ったら
葉先を横から見て、丸く終わっているか
クーペリー H. cooperi(親の種)
葉先
とがった三角錐。枯れた芒が伸びる株が多い
縁・先の毛
葉縁に短い白い毛が並ぶことがある
窓の模様
縦に走る細い線状の脈
迷ったら
個体差が大きい。1 株では決めない。クーペリーの頁
もう一方の obtusa H. cymbiformis var. obtusa
葉先
丸くにぶい三角。葉は舟形にふくらむ
縁・先の毛
白っぽい細い縁。短い芒が残る株もある
窓の模様
灰緑の網目状の斑紋
迷ったら
名札の学名だけを根拠にしない。シンビフォルミスの頁

見分けは「葉先の終わり方 → 縁と先の毛 → 窓の模様」の 3 点を順に見れば、候補はかなり絞れます。ただし 1 枚の写真で決めきってはいけません。上の表は公開画像を実際に開いて観察した内容で、示せるのは「こういう特徴が見えたら、この候補に近い」という手掛かりまでです。

実際、ハオルチアは自生地でも姿が連続していて、産地情報のない栽培株はどの名前にも決めきれないことがふつうにあります。それでも困りません。育て方の判断は、クーペリー系の軟葉系だと分かれば十分に決まるからです。レツーサ系・シンビフォルミス系・クーペリー系を 3 択で分ける具体的な手順は、クーペリー系の見分け方にまとめてあります。

親種クーペリーの実写

クーペリーとして流通する株の密なマット状の群生。葉先がとがり、葉縁に短い白い毛が並ぶ
クーペリー(H. cooperi)として栽培・展示されている株(グラーツ大学植物園)。葉先はとがり、葉縁に短い毛が並ぶ。オブツーサの「丸い葉先・毛が目立たない」との差が 1 枚で見える。Photo: Agnieszka Kwiecień, Nova / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

親にあたるクーペリーを並べると、オブツーサの特徴が「無いもの」で説明できることが分かります。この写真では、葉先がとがって枯れた芒が伸び、葉縁には短い白い毛が規則的に並んでいます。窓の脈は縦の細い線。オブツーサはこれらがいずれも目立たず、代わりに丸い面と扇状の脈を持ちます。つまり「とがりと毛が引き算された姿」——そう捉えると、店頭で並んだときの違いが見つけやすくなります。

流通と野生記録のギャップ FIG.02Asymmetry
直近 30 日の落札770
出品304
野生を含む観察記録20

オブツーサは、栽培の世界では月に数百件が売買される大衆的な多肉植物なのに、野生の姿としてはほとんど記録が残っていません。市民科学プラットフォーム iNaturalist で Haworthia cooperi var. truncata の観察を数えると、2026 年 7 月 24 日時点で全 20 件。しかもその多くは、鉢植えの栽培個体として登録されたものです。一方でオークション履歴の集計では、直近 30 日の落札が数百件の規模で動いています。売り場には無数にあるのに、自生の写真はほとんど誰も撮っていない——この非対称が、この品種のいちばん不思議なところです。

理由はいくつか想像できます。自生地が人の寄りつきにくい崖であること、栽培下で仔吹きによっていくらでも殖やせること、そして日本や中華圏の園芸文化のなかで栽培株として独自に流通が育ったこと。いずれも推測の域を出ません。確かなのは、「よく知られているのに、野生の姿はよく知られていない」植物だということ。だからこそ、名前や産地の情報が曖昧なまま流通しやすい植物でもあります。

育て方の要点

LIGHT 自生地は日陰の崖。直射ではなくレース越しの明るさが基準。窓が紫や褐色に染まってきたら、光が強すぎるサイン。
WATER 年降水量 300〜400mm の環境の植物。年間を通じて与えてよいが、冬は控えめに。乾いてからたっぷりが基本。
SOIL 用土 砂質で水はけのよい土。岩の裂け目に根を張る植物なので、粗い粒でよく乾く配合が合う。
TEMPERATURE 温度 自生地に霜は降りない。霜に当てないことが最優先。越冬の具体的な数値は要確認(本サイト共通の目安は 3〜5℃)。

育て方は、自生地の「日陰の崖・年 300〜400mm・霜なし」を室内の条件に翻訳するだけでほとんど決まります。SANBI が挙げるのは、霜・過度の日射・過湿から守ること、砂質でよく水はけする土、自生地と同じ日陰の向き、水は年間を通じて与えてよいが冬は控えめに、の 4 点。窓辺に置く用途にも向くとも書かれています。失敗のかたちも自生地から予想でき、直射で窓を焼く・暗すぎて間延びする・水はけの悪い土で根を傷めるの 3 つがほとんどです。

光・水・用土の具体的な組み立ては育て方は「窓」で決まる、用土・鉢・LED・棚といった道具の選び方はハオルチアの育成環境ガイドにまとめてあります。

用土と鉢 — 「低く座る」を再現する

オブツーサとして扱われている株を真上から。粗い粒状用土の上に、平らな窓面のロゼットが低く座っている
オブツーサとして扱われている栽培株。粗い粒状用土に低く座り、平らな窓面が上を向く。※ iNaturalist の同定は投稿者 1 名によるもので、栽培個体として登録されています。Photo: Omar Cervantes Sánchez / CC BY 4.0, via iNaturalist

粗い粒状の用土に株が低く座っている状態が、自生地の裂け目にいちばん近い姿です。この写真の株は、軽石のような粗い粒の上にほとんど埋まるように座り、平らな窓の面だけが上を向いています。深い鉢に高く盛るより、この座り方のほうが窓に光が入り、水も抜けます。ただし用土の粒が窓に乗って光を遮らないことだけは気をつけてください。窓は入口です。

入手時の注意点

CAUTION 1
名札の学名は 2 通り
「Haworthia obtusa」と書かれた名札は、クーペリー系とシンビフォルミス系のどちらを指しているか分からない。名前より実物を見る。
CAUTION 2
産地情報はほぼ無い
野生記録が 20 件しかない品種で、流通株の産地表示は基本的に確認できない。産地を根拠にした同定は成立しない。
CAUTION 3
窓は状態で変わる
同じ株でも、光・水・季節で透明感と色が変わる。写真 1 枚の印象で判断せず、葉先の形と縁の毛を見る。

買うときにいちばん効くのは、名札に書かれた名前ではなく、葉先の終わり方と縁の毛を自分の目で確かめることです。この記事で見てきたとおり、Haworthia obtusa という表記は 2 通りの行き先を持ち、和名の「玉露」は店によって指す範囲が違います。産地情報もほとんど存在しません。名前から実体をたどる道は、この品種ではあまり当てになりません。逆に、丸い葉先・目立たない縁の毛・扇状の脈という 3 点は、その場で確認できます。名札の呼び名と学名の対応は名前の対照表で確かめることができます。

流通の規模 — 件数だけを見る

当サイトは相場について、金額を均した代表値を出しません。ハオルチアの落札データは表記の揺れや別品種の混入が多く、金額を均すと実態から大きくずれるためです。代わりに規模感がつかめる件数だけを示します。オークション履歴の集計サービス(aucfan)では、「オブツーサ」の出品が 304 件、直近 30 日の落札が 770 件ありました(取得日 2026-07-19)。これは検索に一致した総件数で、表記の揺れや別品種の混入を含む参考値です。数として「よく取引されている大衆的なジャンル」だと分かれば十分です。

相場の免責

上記の件数は取得時点(2026-07-19)の参考値で、価格を保証するものではありません。オークション履歴サービスの過去データは将来消える可能性があり、当サイトは金額の補正を行っていません。価格・入手性は時期・個体・購入先で変動します。当サイトはメルカリ・ヤフオク等の個人間取引ページへ誘導するリンクは掲載しません。

よくある質問

オブツーサの正しい学名は何ですか?
GBIF Backbone と World Flora Online では Haworthia cooperi var. truncata (H.Jacobsen) M.B.Bayer が受理名です。Haworthia obtusa は現在この植物の学名ではありません。
では Haworthia obtusa はどの植物ですか?
GBIF では異名として扱われ、受理名は Haworthia cymbiformis var. obtusa (Haw.) Baker です。日本でいうオブツーサ(クーペリー系)とは別の系統を指しています。
オブツーサは何℃まで耐えられますか?
最低でも 3〜5℃ を下回らせない — これが実用の線です。自生地には霜が降りず、栽培でも霜から守る必要があるとされているためです。ただしこの 3〜5℃ は当サイト共通の目安で、この変種に固有の一次情報は見つかっていません(要確認)。
クーペリーとオブツーサは別の植物ですか?
別の商品として売られていますが、分類上は親子です。オブツーサは Haworthia cooperi の 13 変種のうちの 1 つで、クーペリーの中の一群にあたります。
買った株が本当にオブツーサか自信がありません。
葉先が丸く終わっているか、葉縁と葉先に毛が目立たないか、窓の脈が扇状かの 3 点を見てください。ただしこの仲間は姿が連続していて、産地情報のない栽培株は名前を決めきれないことがあります。クーペリー系の軟葉系だと分かれば、育て方の判断には十分です。

まとめ

結論 — いちばん有名なのに、名前だけが宙に浮いている
実体は Haworthia cooperi var. truncata。学名 H. obtusa はいま別系統を指す。自生地は東ケープの日陰の崖で、窓も低い姿も群生もその答え。売買は月に数百件あるのに、野生の観察記録は 20 件 しかない。

オブツーサは、日本でいちばん親しまれている軟葉系ハオルチアでありながら、名前の行き先だけが曖昧なまま残されてきた植物です。流通名の由来になった学名 H. obtusa は、いまは別の系統を指しています。産地情報もほとんどなく、野生の観察記録は 20 件。それでも、葉先の形・縁の毛・窓の脈という実物の 3 点を見る習慣さえ持てば、迷わずに選べますし、育て方も自生地から素直に導けます。名前より、目の前の株を見てください。ほかの品種と見くらべたいときは、人気品種ランキングで他の品種を見るからたどれます。

道具はここに集約
ハオルチアの育成環境ガイド(用土・鉢・LED・棚)
銘の選び方
オブツーサの種類と違い(紫・黒・錦・ドドソン)
見分けの実務
クーペリー系の見分け方(3 つの軸で分ける)
全体像
ハオルチアの品種図鑑(系統の全体像)
出典
  • GBIF Backbone Taxonomy — Haworthia cooperi var. truncata(taxonKey 2780107・status ACCEPTED・rank VARIETY)、その異名 2 件(Haworthia obtusa f. truncata H.Jacobsen / Haworthia ikra Breuer)、および分布(WCVP: Cape Provinces / SANPC: Eastern Cape, ZA)。gbif.org(2026-07-24 照会)
  • GBIF Backbone Taxonomy — Haworthia obtusa Haw.(1825)は SYNONYM、受理名は Haworthia cymbiformis var. obtusa (Haw.) Baker(J. Linn. Soc., Bot. 18: 209, 1880)。および Haworthia cooperi の受理変種 13(2026-07-24 照会)
  • World Flora Online(2026-06 分類版)— Haworthia cooperi var. truncata (H.Jacobsen) M.B.Bayer / wfo-0000650039。worldfloraonline.org
  • SANBI PlantZAfrica — Haworthia genus(属の 3 分割 Haworthia / Haworthiopsis / Tulista、38 種・131 分類群、年降水量およそ 200〜800mm、属名は Adrian Hardy Haworth への献名)。pza.sanbi.org
  • SANBI PlantZAfrica — Haworthia cooperi var. picturata(13 の認められた変種、南向きの石英質砂岩の崖、標高 400〜1,000m、年降水量 300〜400mm、夏 35〜40℃・日平均 最高約 27℃/最低約 12℃・霜は降りない、栽培では霜・過度の日射・過湿から守る、窓が内部組織へ光を通す、乾期の紫化、株元からの仔吹き、種小名 cooperi は Thomas Cooper への献名)。pza.sanbi.org
  • iNaturalist — Haworthia cooperi truncata(taxon 599561)の観察は全 20 件、大半が栽培個体として登録(2026-07-24 実測)。inaturalist.org
  • aucfan — 「オブツーサ」の出品 304 件 / 直近 30 日の落札 770 件(取得日 2026-07-19・検索一致の総件数で表記揺れや別品種の混入を含む参考値)。aucfan.com
  • Wikimedia Commons — 本記事の写真のライセンス・作者・現行の分類カテゴリは Commons API(prop=imageinfo|categories)で実測(2026-07-24)。commons.wikimedia.org
Field Noteデータ集約図鑑

運営者は栽培による一次観察を持たないため、同定は断定せず、学名・耐寒温度・価格などの数値は出典または「要確認」として扱います。写真の同定は Wikimedia Commons / iNaturalist の投稿者および分類カテゴリに由来するもので、当サイトが検分した結果ではありません。

画像クレジット

本記事の写真はすべて Wikimedia Commons / iNaturalist の CC ライセンス画像です(PD/CC0/CC BY/CC BY-SA のみ採用・ND/NC は不採用)。本文中の写真は個別クレジットを写真の下に表示しています(図解内の拡大写真と品種カードの写真を除く)。品種カードの写真の出典は次のとおりです。
オブツーサ(カード): Photo: Zinogre / CC BY-SA 4.0, via iNaturalist
クーペリー(カード): Photo: Abu Shawka / CC0, via Wikimedia Commons
ピリフェラ(カード): Photo: Agnieszka Kwiecień (Nova) / CC BY 2.5, via Wikimedia Commons
ベヌスタ(カード): Photo: Abu Shawka / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
扉と窓の拡大(Tariskal / CC0)は同一の原本で、拡大はその一部を切り出したものです。画像クレジット一覧もあわせてご覧ください。

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