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硬葉系13 章約25分で読めます

十二の巻(ファスキアータ)の育て方と見分け方|白い帯を観察

採集地の記録(MBB Kabeljouws River)が添えられた、十二の巻(Haworthiopsis fasciata)として記録された株。礫と枯れ草の中で赤みを帯びたロゼットが群れる
採集地の記録つきの株(MBB Kabeljouws River)。Photo: Abu Shawka / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
SPECIMEN — HAWORTHIOPSIS FASCIATA
十二の巻Haworthiopsis fasciata(旧 Haworthia fasciata)
魅力細い葉の外側に連なる白い帯育て方を見る →

細い緑の葉の外側に、白い帯が何段も並ぶ。ファスキアータは、葉を包む模様と立ち上がる輪郭を楽しむ硬葉系です。

十二の巻という名で買った株を調べるなら、外側の縞を眺めたあとに葉の内側へ。アテヌアータとの比較、育て方、名札の取り違えを順に確認すると、株の名前を調べる手がかりが増えます。

十二の巻(ファスキアータ)の見どころ — 外側の白い帯と、内側の面

観察
外面に白い段、上面に広がる緑
全体の番号 → 同じ場所の拡大
ファスキアータとして掲載された栽培株。奥の上面と手前の外面を見比べる。
  1. 中心へ向いた上面1番の拡大で見る。
  2. 手前へ向いた外面2番の拡大で見る。
奥の長い葉。緑の広い面には、外面のような白い帯が見えない。 元写真の1番を拡大。
1 中心へ向いた上面奥の長い葉。緑の広い面には、外面のような白い帯が見えない。
手前中央の葉。白い粒が横向きの段をつくる。 元写真の2番を拡大。
2 手前へ向いた外面手前中央の葉。白い粒が横向きの段をつくる。
外の白い帯を見たら、次は中心側を覗く。
同じ株の別の葉で、見えている面を比較します。 下段は同じ写真の番号部分を拡大表示。
Photo: S Molteno / CC0, via Wikimedia Commons(部分拡大)

白い帯のある外面から目を上げると、奥の葉には緑の広い上面が見えます。外面だけの写真では分からない、十二の巻のもう一つの見どころです。

かんたん派は、株全体と中心側の上面を撮るところから。こだわり派は下の分岐で記載と照合し、名札・親株・由来の記録も残します。葉を折って繊維を出す必要はありません。

見どころと育て方
  • 外側の白い帯と内側の面を分けて見る
  • 十二の巻の流通名だけでfasciataと決めない
  • RHSとNC Stateの明るさ・強日射保護を両方読む

育て方 — 明るさと、強い日差しからの保護

十二の巻(ファスキアータ)を育てる
かんたん派
すること明るい場所で強い日差しを避ける
楽しみ方白い帯と細い葉の輪郭を楽しむ基本になります。
こだわり派
すること新葉の間隔を見て、十分な明るさと強い日差しの保護を両立させる。光の調整へ。
楽しみ方模様の観察と、置き場所による伸び方を別々に追えます。

明るさと強い日差しを分ける

RHSは十分な明るさを確保し、強い日射からは保護すると説明しています。full sunという位置区分と、この保護条件は両立するものです。

新しい葉の間隔を見ながら置き場所を調整します。

水と用土

RHSはサボテン用の用土、風通しと低い湿度、生育中の適度な水やりを勧めています。冬はほぼ乾いた状態に管理。

季節の管理と用土・鉢の選び方を合わせて確認します。

冬の冷え込み

RHSのH2(1〜5℃)は英国の園芸上の耐寒性区分です。個々の鉢の限界温度として使わず、凍結を避けて管理します。

名札と株姿の食い違いを読む

写真で確かめる見えた面から、次に確かめるものを選ぶ
Q1葉の上面は、十分に写っている?
陰・重なりで見えない上面の写真を追加株を回すか、少し上から撮ります。見えない面を「粒なし」と扱わない。
上面が見えるQ2へ白い帯のある外面と混同せず、中心側の面を見ます。
Q2上面の白い粒は、どう見える?
上面に白い粒が見えるアテヌアータなどと比較両者の見分け方で葉形も照合します。
上面に白い粒が見えないファスキアータの記載と照合外面の白い帯、株姿、名札と由来をセットで見ます。
細部がぼやける一枚の上面を撮り直す粒が見えない理由を、写真の解像度と植物の特徴に分けます。
緑=候補と照合 金=見える写真を追加 破線=次の観察へ。葉は折らずに見ます。
手書きの名札に『Haworthia fasciata』と書かれた鉢植えの硬葉系ハオルチア。葉の内側にも白い疣が一面に散っている
名札には手書きで Haworthia fasciata とある(米国バーモント州の民家)。ただし写真では葉の内側にも白い疣が一面に散っており、記載にある「内面は平滑」という特徴は確認できない。Photo: Daderot / パブリックドメイン, via Wikimedia Commons

名札に fasciata と書いてあっても、その株が記載どおりの特徴を示しているとは限りません。この名札つき写真は、上面に粒が見える枝をたどる実例です。

記載では「白い疣は葉の外側だけ、内面は平滑」。しかしこの写真の株は、内側にも白い粒が一面に散っています。

葉の内側にも白い疣がある場合は、アテヌアータなどの候補と比較します。販売名や植物園の札だけで確定せず、親株・増殖・受入記録を照合しましょう。

L 25181ライデン植物園
植物園の名札に『Haworthia fasciata』とある硬葉系ハオルチア。白い点が散る程度で、白い疣の横帯は見当たらない
名札は Haworthia fasciata
白い点が散る程度横帯は見えない断定はしない
L 990033ライデン植物園
植物園の名札に『Haworthia fasciata』とある多肉植物。短く厚い舟形の葉が塊になり、白い疣は見当たらない
名札は Haworthia fasciata
短く厚い舟形の葉疣が見当たらない断定はしない

2 枚とも、同じ日にオランダのライデン植物園で撮られたものです。どちらの名札にも Haworthia fasciata とありますが、写真から確認できる姿は互いに違い、いずれもこの種の記載形質を示していません。

植物園には受入番号(L 25181 / L 990033)まで記録されています。それでもなお、名札と実物が一致しない例が起こる。

この写真の組から、名札と掲載株の特徴が噛み合わない例を確認できます。どの段階で取り違えが起きたのかは、受入や増殖の記録をさらに調べる問題です。

ここから引き出せる姿勢はひとつです。名札は出発点であって結論ではない。

名札、株全体の写真、葉の内外の特徴をひと組で読むと、表記と植物の姿を切り離さずに比べられます。

購入前に、葉と名札・由来を比べる

手がかり
店頭で見える
記載と照合
単独で決め手
葉の内側の質感
◎ ◎ ○
外側の白疣の並び
◎ ◎ △
産地・採集番号
△ ◎ ○
葉の繊維
— ◎ ○
名札の学名表記
◎ △ △

読み方 … ◎ = よく効く / ○ = 効くが単独では不足 / △ = 資料の対象範囲 / — = 購入前には使えない。この図鑑の整理であり、絶対的な基準ではありません

買うときは葉の内側を覗き、外側の白い帯と見比べます。名札の学名と親株・増殖の記録も合わせて確認してください。

記載では「内面は平滑」で、粒が一面に散っているならアテヌアータを含む別の候補が浮上します。白い横縞そのものが見えず、面に細い線が交差していたり、葉が三列に重なって立ち上がっていたりする場合は、竜鱗やビスコーサという別の硬葉系です。

ただし株ごとの違いも栽培条件による見え方の差もあるので、1 つの手がかりで確定させないのが安全です。2 種の見分けを詳しく追う場合は十二の巻とアテヌアータの違いへどうぞ。

上面と外面が見える小株の写真は、冒頭の拡大図で見比べられます。

2026年7月24日の通販検索では、「十二の巻」に217件が一致しました。近縁・選抜・交配も混じる呼び名での検索件数なので、原種fasciataの流通量や値段を表す数ではありません。

参考までに「ハオルチオプシス」は 105 件、「アテヌアータ」は 158 件です。

十二の巻の検索には原種・近縁・選抜・交配の表記が混在します。

通販検索の一致件数には、表記揺れや別分類群の商品を含みます。現在の在庫数や、植物学上の種ごとの販売数とは分けて読んでください。

「錦」などの園芸銘がついた株については、名前の出どころを確かめてください。園芸品種名の正式な登録先は日本ハオルシア協会(ICRA)で、硬葉系の Haworthiopsis もその対象範囲に含まれます。

協会の記録に辿れない銘は、流通のなかで付いた呼び名であることもある。和名・学名・流通名の対応は名前の対照表から引けます。

基本情報 — 学名・自生地・耐寒性

十二の巻(ファスキアータ)の基本データQuick Spec
外側白い疣が帯状に並ぶ
内側平滑な面が比較点
観察葉を折らず中心を覗く
光明るさと強日射保護を両立
雨の季節資料なし(2026-10-17 時点) → 雨の季節の表
水生育中は適度、冬は乾かし気味
冬RHS区分H2・凍結を避ける
学名データ・出典の範囲

学名と分布は資料が扱う分類群を確認して読みます。耐寒性ではRHS区分とUSDAゾーンのように尺度が異なるため、数値だけを並べて食い違いとはしません。

学名。現在の受容名は Haworthiopsis fasciata (Willd.) G.D.Rowley で、2013 年の Alsterworthia International 特別号 10 号 4 頁が初出です。

もとになった名前(基礎異名)は 1811 年の Apicra fasciata Willd.。園芸の場で今も広く使われる Haworthia fasciata は、この種の旧学名にあたります。

どちらの表記も同じ植物を指します。

自生地。南アフリカ共和国の固有種で、州でいえば東ケープ州にだけ分布します。

南アフリカ国立生物多様性研究所(SANBI)のレッドリストは、分布域を「ハムトース川流域からポートエリザベス(現ジェコベーハ)まで」と記述しています。生育環境は「酸性の砂岩由来土壌にできた、草質のフィンボスの石礫地」。

日本の室内で見る姿からは想像しにくい、痩せた石礫地が本来の住まいです。

RHSのH2(1〜5℃)は英国の園芸上の耐寒性区分、NC StateのUSDAゾーンは地域の冬季最低気温に関する別の尺度です。数値の下端を並べて矛盾とせず、鉢では凍結を避けて管理します。

RHSのH2(1〜5℃)とUSDAゾーンは異なる尺度です。両者から属共通の限界温度を作らず、夜間最低温度と窓際の冷気を確認し、凍結を避けます。

冬の置き場所と水やりへ。

分類上の位置づけと関連資料
「十二の巻」という言葉が乗っている 2つある層 FIG.01Two layers
LAYER 1 — 学名の層
原種 Haworthiopsis fasciata
1811 年に記載された実在の種。南アフリカ東ケープ州の固有種で、採集地の記録つき個体や保全評価が公的データベースに残る … この記事が扱うのはこちら
LAYER 2 — 流通の層
園芸名としての「十二の巻」
白い横縞の硬葉ハオルチアを広く指す呼び名。近縁のアテヌアータやその選抜・交配が同じ名で並ぶことがある … 見分けの詳細は別記事へ

「十二の巻」という和名は、いま 1 つの植物だけを指していません。白い横縞の入った硬葉のハオルチアはひとまとめにこう呼ばれやすく、店頭では近縁の Haworthiopsis attenuata(アテヌアータ)やその選抜・交配が同じ名札で並ぶ例があります。

そこでこの記事は、範囲を原種側に絞ります。扱うのは学名 Haworthiopsis fasciata として記載され、公的なデータベースに分布・保全・下位分類の記録がある植物です。

手元の株は、葉の内側の疣、外側の帯、株全体の姿を比較するところから。名札の学名と由来の記録も合わせます。

実際に「十二の巻」の名札で展示されている株が、写真の側では別の種として整理されている例があります。下の 1 枚がそれです。

園芸名『十二の巻(JYUNINOMAKI)』として撮影された硬葉系ハオルチアの株。Wikimedia Commons 側の同定は Haworthia attenuata
園芸名「十二の巻(JYUNINOMAKI)」として大阪の植物園で撮影された株。ただし Wikimedia Commons 側の同定は Haworthia attenuata ‘JYUNINOMAKI’(ファイルのカテゴリも Haworthiopsis attenuata)で、本記事が扱う fasciata ではありません。流通名と学名がずれる一例として掲載しています。Photo: KENPEI / CC BY 3.0, via Wikimedia Commons

この 1 枚は、和名と学名がずれる現象そのものです。園芸名は「十二の巻」でも、写真を管理している側の同定は attenuata になっています。

どちらが正しいかをこの図鑑が裁定することはできませんが、「十二の巻」というラベルだけでは種を決められないことは、この 1 枚からでも読み取れます。

2 種の違いを実際に見分けたい場合は、十二の巻とそっくりなアテヌアータの違いで葉の内側を軸に整理しています。系統ごとの位置づけはハオルチアの品種と系統の全体像が入口です。

変種と型 — 認められているもの・流通の呼称

下位分類の 2つある層 — 認められた変種と、それ以外の呼び名
var. fasciata 基準変種
扱い
POWO が認める変種
観察数
iNaturalist で 56 件
位置づけ
種の基準となる型
var. browniana 2016 年に整理
扱い
POWO が認める変種
観察数
iNaturalist で 7 件
産地
ユーテンハーヘ北西
variabilis / patensie 別の層
扱い
現行の変種ではない
variabilis
古い型名で、いまは異名
patensie
POWO・SANBI に見当たらない

いま認められている下位分類は、var. fasciata と var. browniana の 2 つだけです。Kew の POWO(Plants of the World Online)が受容しているのはこの 2 変種で、それ以外の名前は別の層に属します。

var. browniana は、もともと Haworthia browniana Poelln. として記載され、Bayer が fasciata の品種(forma)として扱った経緯を持ちます。現在の組み合わせ Haworthiopsis fasciata var. browniana (Poelln.) Gildenh. & Klopper は 2016 年の Phytotaxa 265 巻で成立しました。

産地はユーテンハーヘ(Uitenhage)の北西と記録されています。

var. brownianaNW Uitenhage
var. browniana として記録された株。赤褐色の土の上で、葉の外側に細かい白い疣が横に並び、内側は滑らかに見える
産地記録つきの株(1)
細かい白い疣横に並ぶ内側は滑らか
var. brownianaNW Uitenhage
var. browniana として記録された株の別カット。葉先が赤く色づき、細かい白い疣の横列が見える
産地記録つきの株(2)
葉先が赤い同じ産地の別カット栽培下の株
モナコの植物園で『Haworthia fasciata variabilis』の名札とともに植えられた、白い横縞のある硬葉ハオルチアの大群落
モナコの植物園の大群落。同定は園の名札によるもので、名札にある「variabilis」は現在は独立した分類群ではなく異名として扱われます。Photo: Tangopaso / パブリックドメイン, via Wikimedia Commons
記載と照合の詳細

iNaturalist の観察数で見ると、種全体が 380 件、var. fasciata が 56 件、var. browniana が 7 件です(2026-07-24 時点)。変種として記録される観察はごく少なく、ほとんどは種のレベルで止まっていることが分かります。

「variabilis」と「patensie」は、変種ではありません。前者(f. variabilis Poelln.)は SANBI が挙げる 17 の異名のひとつで、かつて付けられた型名が現在は使われていないという位置づけです。

後者「patensie」は英語版 Wikipedia が f. patensie として挙げているものの、POWO にも SANBI にも見当たりません。栽培や流通のなかで使われている呼称と考えるのが妥当です。

異名の多さ自体が、この種の歴史を語っています。SANBI が掲げる異名は Aloe fasciata、Apicra fasciata、Haworthia subfasciata をはじめ 17 名。

200 年のあいだ、いくつもの属といくつもの型名のあいだを行き来してきた植物だということです。

原種としての姿 — 記載形質を写真で見る

十二の巻(Haworthiopsis fasciata)として記録された葉を折り、断面から白い繊維が糸状に伸びている標本写真。葉の外側には白い疣が横に並ぶ
fasciata として記録された葉を折り、断面から白い繊維が露出した標本写真。葉の外側には白い疣が横に並ぶ。Photo: Abu Shawka / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

この種の記載形質は、「白い疣が葉の外側だけに横に並ぶ」ことと「葉が繊維質であること」の 2 点に集約されます。上の写真は、そのうち後者を示した珍しい 1 枚です。

硬い葉を折ると、断面から白い繊維が糸を引くように伸びています。日本語の紹介ではほとんど触れられない特徴ですが、英語版 Wikipedia は「外からは見えないが、もっとも根本的な区別点」として葉が繊維質であることを挙げ、同じ性質を持つ仲間として glauca・coarctata・reinwardtii・longiana を並べています。

葉を折った標本写真は、内部の繊維を説明する資料です。同定のために手元の葉を傷つけず、まず外側と内側の面を観察しましょう。

十二の巻(Haworthiopsis fasciata)として記録された葉 1 枚と、二唇形に開いた白い筒状花を白い背景に並べた標本写真
fasciata として記録された葉 1 枚と、二唇形に開いた白い筒状花。Photo: Abu Shawka / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
記載と照合の詳細

レインワルディを比べるときは、茎の伸び方、葉幅と疣の形も見ます。葉を縦線と横線に一律に分けるだけで種類を決めないようにしましょう。

関連資料:縦に列で並ぶ疣 — レインワルディ(鷹の爪・九輪塔)

もう一方の白い疣は、外から確認できます。RHS は葉について「外側の面に、白い疣状の突起がはっきりした帯をなす」と記述し、ノースカロライナ州立大学のデータベースも「葉の外面に白い横縞。

内面は平滑」としています。白い粒が葉の内側(上面)にも一面に散っているなら、この種ではない可能性が上がる、それがこの記載から導ける、いちばん実用的な読み方です。

花は、姿からは想像しにくいほど地味です。RHS の記載では、夏に 40cm ほどまで伸びる細い花茎の先へ、白い筒状の花をまばらにつけます。

ノースカロライナ州立大学のデータベースも、夏・白・筒状・1 インチ未満・総状花序と、ほぼ同じ内容を記録しています。

上の写真で分かるとおり、花の先は 2 つに割れて開きます(二唇形)。これは Haworthiopsis 属に共通する花のかたちで、RHS の属の説明にも書かれています。

葉ではなく花を見ると、硬葉系も軟葉系も同じ仲間なのだとよく分かります。なお果実は 3 室の蒴果で、種子には翼状の稜があると記録されています。

自生地と産地 — 東ケープのどこに生えるか

分布の帯 — 内陸の川筋から海沿いの都市まで FIG.02Range
西の端 ハムトース川流域(Gamtoos River Valley) SANBI が記す分布域の起点 … 周辺の農地拡大(牧草地化のための耕起)が脅威に挙げられている
東の端 ポートエリザベス(現ジェコベーハ) 同じく分布域の終点 … 都市の急速な拡大が脅威に挙げられている
記録のある採集地の例 … Kabeljouws River / Paradise Beach / Loerie / Gamtoos / ユーテンハーヘ北西 概念図

分布は、東ケープ州の一本の帯に収まっています。SANBI が記す範囲は「ハムトース川流域からポートエリザベスまで」。

生育地は 20 か所超で記録されていますが、分布域そのものの広さ(EOO)は 3,400km² と限られます。

主要な植生型として SANBI が挙げているのは、Humansdorp Shale Renosterveld、Algoa Sandstone Fynbos、Kouga Grassy Sandstone Fynbos、Tsitsikamma Sandstone Fynbos、Sundays Valley Thicket、Sundays Mesic Thicket、Motherwell Karroid Thicket、Bethelsdorp Bontveld の 8 つ。フィンボスと呼ばれる硬葉低木の植生と、シケット(密生した低木林)の両方にまたがって生えていることが読み取れます。

MBB6797鉢の栽培株
採集地 Paradise Beach の記録がついた、十二の巻(Haworthiopsis fasciata)として記録された鉢の栽培株。褐色を帯びた密な柱状の群れ
Paradise Beach fasciata として記録
密な柱状の群れ白い疣が濃い褐色を帯びる
MBB6806鉢の栽培株
採集地 Loerie の記録がついた、十二の巻(Haworthiopsis fasciata)として記録された鉢の栽培株。黄緑から赤に色づく単独のロゼット
Loerie fasciata として記録
単独のロゼット白い疣は小さめ黄緑〜赤
MBB6809鉢の栽培株
採集地 Gamtoos の記録がついた、十二の巻(Haworthiopsis fasciata)として記録された鉢の栽培株。赤褐色に染まり白い疣が明瞭
Gamtoos fasciata として記録
赤褐色に染まる白い疣が明瞭群れて育つ
記載と照合の詳細

次の 3 枚は、いずれも MBB(Haworthia 研究で知られる M.B.Bayer)の採集番号がついた株です。番号は採集された産地の記録であり、産地不明の栽培株より情報の確かさが一段上がります。

3 枚を並べると、同じ種として記録された株でも姿がかなり違うことが分かります。色は黄緑から赤褐色まで振れ、疣の粒立ちも、群れ方も揃いません。

写真には色と疣の見え方、群れ方が異なる株が写っています。産地・遺伝・栽培条件を揃えた比較ではないため、違いの原因を産地だけに求めません。

ひとつ断っておくと、この 3 枚はいずれも暗い背景で撮られた鉢の栽培株です。MBB 番号は「その産地から採集された系統である」という記録であって、写真そのものが自生地の光景ではありません。

扉写真にはMBB Kabeljouws Riverという採集来歴が付いています。これは系統をたどる情報で、写真を撮った場所や野生株であることを単独で示すものではありません。

そして、これらはすべて写真を投稿した側の同定に基づいています。この図鑑が確認できるのは「そう記録されている」という事実までで、標本にあたって検証したわけではありません。

保全ステータス — 野外集団のNT評価を読む

評価
準絶滅危惧 Near Threatened B1ab(ii,iii,iv,v)
評価機関
SANBI(南アフリカ国立生物多様性研究所)レッドリスト
評価日
2005-01-24 / 評価者 J.E. Victor & G. Marx
版
2024.1最新版で確認
分布域の広さ
EOO 3,400 km²
生育地の数
20 か所超で記録
個体群の傾向
減少Decreasing
脅威 1
ポートエリザベス周辺の急速な都市拡大
脅威 2
ハムスドルプ周辺の農地拡大(牧草地化のための耕起)
過去の評価
1996 年は Rare / 2009 年以降 NT

SANBIのレッドリストは野外のfasciataをNTと評価し、個体群の傾向を減少としています。通販で使われる十二の巻という名前の件数や価格とは別の情報です。

評価の理由として書かれているのは 2 つです。ひとつは、20 か所超で記録があるとはいえ分布域が 3,400km² に限られること。

もうひとつは、生育地の消失が現在進行形であること、牧草地にするための耕起と、ポートエリザベス周辺の急速な都市拡大が名指しされています。

記載と照合の詳細

購入時は、販売株がどのように増やされたかを確認します。通販の検索件数だけでは、原種の流通量や野外集団への影響は分かりません。

野外では生育地の消失、鉢では光や水の管理が問題になります。それぞれの条件を分け、栽培由来を説明できる株を選びましょう。

名前の来歴 — Apicra から Haworthiopsis へ

NAME HISTORY / 1811 → 2016
名前が移ってきた道すじ
1811 — 記載WILLDENOW
Apicra fasciata Willd.Mag. Neuesten Entdeck. … Berlin 5: 272
19 世紀 — 属の移動HAWORTH
Haworthia fasciata (Willd.) Haw.園芸で今も広く使われる旧学名
2013 — 3 属への分割ROWLEY
Haworthiopsis fasciata (Willd.) G.D.RowleyHaworthia / Haworthiopsis / Tulista の 3 属へ
2016 — 属内の整理GILDENHUYS & KLOPPER
Haworthiopsis 属 18 種の分類を整備var. browniana が Haworthiopsis へ移る
種数の見解
林 546 / Breuer 366 / Bayer 60見解が分かれる
園芸銘の登録
日本ハオルシア協会(ICRA・2014 年指定)
対象属
Haworthia(Haworthiopsis・Tulista を含む)ほか
登録官
Dr Hayashi Masahiko
出典 = IPNI / GBIF / POWO / Phytotaxa 265(1) / ISHS ICRA リスト #100

この種の名前は、200 年かけて 3つある属を渡ってきました。出発点は 1811 年、ヴィルデノウが Apicra fasciata として記載したところです。

その後ホーワースが Haworthia 属へ移し、園芸の世界ではこの Haworthia fasciata がいまも広く通用しています。

大きく動いたのは 2013 年です。G.D. Rowley が分子系統の成果をふまえ、広い意味での Haworthia を Haworthia(軟葉系)・Haworthiopsis(硬葉系)・Tulista の 3 属に分けました。

2013年にHaworthiopsis fasciataの組合せが発表されました。旧名と現行名が併存する名札は、表記の作成時期と分類体系を確かめて読みます。

記載と照合の詳細

続く 2016 年、Gildenhuys と Klopper が Haworthiopsis 属(18 種)の属内分類を整えました。旧 Haworthia から引き継いだ 6つある節に加えて 1 節を新設し、7つある新しい組み合わせを発表しています。

var. browniana が現在の名前になったのも、この仕事の一部です。

ハオルチアが何種あるのかは、いまも決着していません。細分する立場と統合する立場で数字がまるで違い、代表的な見解だけでも林が 546 種、Breuer が 366 種、Bayer が 60 種と開きます。

本種はこのいずれの立場でも独立した種として扱われますが、「ハオルチアは○種」と単一の数字で語れないことは、頭に置いておくと混乱が減ります。

園芸品種名(銘)の正式な登録先は、日本にあります。国際園芸学会(ISHS)の国際栽培品種登録機関(ICRA)一覧 #100 に登録されているのは日本ハオルシア協会で、2014 年の指定です。

対象は原文で「Haworthia Duval(Haworthiopsis G.D. Rowley と Tulista Raf. を含む)」ほかとされており、硬葉系の園芸銘もこの協会の登録が正ということになります。登録官は Dr Hayashi Masahiko。

関連する記述の「林 546 種」の林と同じ人物です。

まとめ

白い帯を眺めたら、中心側の面もそっと覗く。葉を傷つけずに比較し、名札と由来を記録します。

明るさと強い日差しの保護を両立させながら、細い葉のロゼットを楽しみましょう。

FAQ

Haworthia fasciata と Haworthiopsis fasciata はどちらが正しいですか?
Haworthiaは旧属名で、採用する現在の組合せはHaworthiopsis fasciataです。古い名札も来歴として保存できます。
十二の巻の変種はいくつありますか?
2026年7月24日の照会では基本変種とvar. brownianaを扱います。売り場のvariabilisなどは、受理された変種名と分けて読みます。
何度まで寒さに耐えますか?
RHSはH2(1〜5℃)に区分しています。英国の園芸評価なので、個々の鉢では凍結と夜の冷えを避けます。
花は咲きますか?
白い筒状の花を咲かせます。花の写真だけで種類を決めず、葉と株全体も合わせて見ます。
安く売られていますが、希少な植物ですか?
栽培株の流通と野生の保全評価は別です。SANBIは本種をNTとして扱い、生育地や採取の影響を記しています。
手元の株が十二の巻か知りたいのですが。
葉の外側の帯と、内側が平滑かを見比べます。葉を折らず、アテヌアータの比較写真や名札の由来も確認します。
道具はここに集約ハオルチアの育成環境と道具|置き場所から選ぶLED・土・鉢・棚 見分けの詳細はこちら十二の巻とは|そっくりなアテヌアータとの違い・Haworthiopsis 再分類 関連記事ハオルチアの種類と選び方|窓・葉の形から比べる図鑑 関連記事ハオルチアの育て方|光・水やり・用土と冬の管理
出典
  • SANBI Red List of South African Plants — Haworthiopsis fasciata(保全ステータス NT・EOO 3,400km²・分布域・植生型・脅威・異名 17 名・評価者と版)
  • POWO / Kew — Haworthiopsis fasciata および var. browniana(受容名・下位分類)
  • GBIF Backbone — Haworthiopsis fasciata(受容状態・基礎異名・初出 Alsterworthia Int. Special Issue 10: 4 (2013))
  • IPNI — Apicra fasciata Willd.(基礎異名の初出年と書誌 1811)
  • RHS Plant Finder — Haworthiopsis fasciata (zebra haworthia)(耐寒性 H2・株の大きさ・花・栽培条件・成熟までの期間)
  • NC State Extension Gardener Plant Toolbox — Haworthiopsis fasciata(USDA 10a-11b・株の大きさ・光・葉と花と果実の記載)
  • ISHS International Cultivar Registration Authority list — #100 Haworthia Society of Japan(登録官・2014 年指定・対象属に Haworthiopsis と Tulista を明記)
  • iNaturalist — Haworthiopsis fasciata(観察数 380 / var. fasciata 56 / var. browniana 7。2026-07-24 時点)
  • Gildenhuys, S.D. & Klopper, R.R. (2016) A synoptic review and new infrageneric classification for the genus Haworthiopsis. Phytotaxa 265(1): 1-14(属内 18 種の整理・var. browniana の組み合わせ)
  • Rowley, G.D. (2013) Generic concepts in the Alooideae. Part 3 — The phylogenetic story. Alsterworthia International Special Issue 10: 1-6(3 属への分割)
  • 英語版 Wikipedia — Haworthiopsis fasciata(葉が繊維質であることを「もっとも根本的な区別点」とする記述・葉の内外面の疣の分布)
  • 種数の見解(林 546 / Breuer 366 / Bayer 60)はこの図鑑の分類方針にもとづく併記です
  • 写真は Wikimedia Commons の PD / CC0 / CC BY / CC BY-SA 画像のみを使用し、ライセンスと現行の同定を Commons API で確認しています(確認日 2026-07-24)
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冒頭のプレート(MBB Kabeljouws River): Photo: Abu Shawka / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
MBB6797 Paradise Beach: Photo: Abu Shawka / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
MBB6806 Loerie: Photo: Abu Shawka / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
MBB6809 Gamtoos: Photo: Abu Shawka / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
var. browniana(1): Photo: Abu Shawka / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
var. browniana(2): Photo: Abu Shawka / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
ライデン植物園 L 25181: Photo: Rudolphous / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
ライデン植物園 L 990033: Photo: Rudolphous / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

追加照合した資料の範囲

RHSとNCStateは明るさと強日射保護で整合。JYUNINOMAKI写真はattenuata、誤札写真は反例。

葉を折らず同定する。

本文の出品・観察件数は元の調査日を保持。写真の同定名は掲載元の記録によります。

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