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ベヌスタ(Haworthia cooperi var. venusta)葉の面に出る白毛と、3 年で変種になった名前

鉢いっぱいに寄り集まった軟葉系ハオルチアのロゼットを斜め上から写した写真。三角形の葉は灰緑色で、面ぜんたいが細かい白い毛におおわれて霜が降りたように見える。奥の株は紫褐色を帯び、細い花茎が 2 本立ち上がっている
葉の面ぜんたいを細かい白毛がおおう Photo: S Molteno / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
SPECIMEN — HAWORTHIA COOPERI VAR. VENUSTA
ベヌスタHaworthia cooperi var. venusta / ハオルチア・クーペリー・ベヌスタ
系統軟葉系・クーペリーの変種 自生地南ア 東ケープ州 見分けの鍵葉の面に出る毛

ベヌスタは、葉の「面」ぜんたいに細かい白い毛が出る軟葉系のハオルチアです。ハオルチアの毛はふつう葉のふちと裏の稜に生えるので、面まで白く霞む株は棚のなかでもすぐ目に留まります。透明な窓とは別の、質感で選びたい方に向く変種です。小型のままとどまり、場所を取らないのも扱いやすいところ。名前の来歴と記録の少なさも、この頁でひととおりたどれます。

この記事でわかること
  • ハオルチアの毛は、ふつう葉のふちと裏の稜(竜骨)に生えること。葉の面に出るのは、クーペリーではベヌスタの 1 集団だけと記されていること(自作図解で示します)
  • それでも「面に毛がある = ベヌスタ」とは言えないこと。同じ 1 つの記述が、その理由まで書いていること
  • 1996 年に種として発表され、3 年で変種になったこと。クーペリー 13 変種でいちばん短いこと。しかも発表の翌年、のちに変種へ移す当人が「名前の付けすぎの例」として名指ししていたこと
  • 野生の記録が世界で 3 件しかないこと(13 変種で最少)。2009 年に 15 の種下分類群でただ 1 つ「深刻な危機」と判定され、いま産地は非公開になっていること
出典つきで整理した図鑑です — 品種は「候補」と「次に見る所」まで示します

ベヌスタとは — 13 変種でいちばん新しい名前

この頁 / VARIETY
毛が「面」に出ている、という一点
ハオルチアの毛が生える場所の既定と、そこから外れた 1 集団。「なぜこの形質で名前が立ったのか」を知りたい人のための頁です。
別の頁 / SPECIES
クーペリーの全体像
親にあたる種と、そこに属する13 の変種の地図。ベヌスタが全体のどこに座るかを俯瞰したい方はこちらから。
別の頁 / HOW TO TELL
クーペリー系の見分け方
手元の株の名前を手順で絞り込みたいときはこちら。本頁は手順ではなく、その手順の根拠と限界の側を扱います。

上の 2 枚目・3 枚目はそれぞれ別の記事です — ハオルチア・クーペリー(13 変種の全体像)クーペリー系の見分け方 からどうぞ。姿から絞り込む手順は後者が図解でまとめています。

まず、この植物の立ち位置をはっきりさせておきます。ベヌスタは、葉が硬く厚い硬葉系ではなく、葉がやわらかく光を透かす軟葉系のハオルチアです。そのなかでもクーペリー(Haworthia cooperi)という種の、13 ある受理変種のひとつという位置にあります(GBIF の分類バックボーンを 2026-08-14 に照会した実測値)。

そして、13 のなかでいちばん名前が新しい変種です。基になった名前 Haworthia venusta C.L.Scott が発表されたのは1996 年。13 変種の基準異名を全部並べると、次に新しい truncata(1955 年)より41 年あとで、最も古いピリフェラ(1870 年)とは126 年離れています。ハオルチアという属の名前の歴史のほとんど最後に付いた名前だ、ということです。

TAXONOMY / MEASURED 2026-08-14
ベヌスタはクーペリーの 13 変種のひとつ — 図に出るのは 3 つ
ツルボラン科 AsphodelaceaeALOOIDS
ハオルチア属 HAWORTHIA(軟葉系)/ 2013〜2016 年の 3 属分割後も残留
属と変種の所属・受理状態は GBIF Backbone(var. venusta = usageKey 2780135 / status ACCEPTED / 親 2780103)、組合せの発表頁は同 publishedIn を 2026-08-14 に照会した実測値

この頁が引き受けるのは「毛の位置」の話です。ハオルチアの品種頁は、ふつう姿ぜんたいの説明から入ります。ところがベヌスタの場合、一次記載に書かれていることが、驚くほど少ないのです。Bruce Bayer が『Haworthia Revisited』(1999)に置いた本変種の記述はたった 1 文で、内容は「粗い白毛におおわれている」「仔を吹くとしてもごくまばら」「小型のままにとどまる」の 3 点だけ。ロゼットの径も葉の枚数も花の色も、変種としては 1 つも書かれていません(2026-08-14 に本文を照会して確認)。

逆に言えば、この 1 文の「粗い白毛」だけで名前が立っているということです。そしてその毛がどこに生えているかを属全体の文脈に置き直すと、この変種が何者なのかがはっきりします。それが03 章です。

なお、これは「ハオルチアの分類が不安定だ」という話の一例でもあります。ハオルチア属に何種あるかという問いには、研究者によって桁の違う答えが返ってきます。林雅彦氏は 546 種、Ingo Breuer 氏は 366 種、Bruce Bayer 氏は 60 種という数を示してきました。細かく分ける立場と、まとめる立場の幅です。南アフリカ国家生物多様性研究所(SANBI)のレッドリストも、この属が「似ていることより変異のほうを重く見る名づけが過剰に増えてきた」状態にあると注記しています。ベヌスタの 3 年間は、その事情がいちばん短い時間に凝縮して現れた例と読めます。

基本情報 — 学名・自生地・耐寒性

ベヌスタの基本データ Quick Spec
受理名 Haworthia cooperi var. venusta (C.L.Scott) M.B.Bayer
階級 変種(種ではない)。親種 = Haworthia cooperi Baker
組合せの発表 Bayer・1999 年『Haworthia Revisited』56 頁
基になった名前 Haworthia venusta C.L.Scott(独立種として発表)
その発表年 1996Bradleya 14: 87。13 変種でいちばん新しい
種でいた期間 3(1996 → 1999)。13 変種で最短本記事の核
ツルボラン科(Asphodelaceae)
系統 軟葉系(Haworthia 狭義 / クーペリーの変種)
著者 Charles Leslie Scott(1913–2001)/ 組合せは Martin Bruce Bayer(1935–2023)
シノニム 2 件(GBIF・WFO)/ 1 件(SANBI)。13 変種で最少グループ
タイプ標本 Britten 781(Bayer 1999 の引用)。方眼番号が資料内で 2 通りに割れる
自生地 南アフリカ固有東ケープ州のみ(SANBI・親種の頁)
産地の細かさ 非公開 — SANBI が Information redacted と記す本記事の核
局所性 1 か所でしか知られていない(Bayer 1999 の図版説明)
変種の識別 粗い白毛におおわれる。他の変種の「わずかに毛がある傾向」を誇張したもの(Bayer 1999)
仔吹き 吹くとしてもごくまばら(Bayer 1999)
大きさ 小型のままにとどまる(Bayer 1999)。変種固有の数値は無い要確認
ロゼット径 120 mm まで — ただしこれは種の記載値種の値
20〜40(種の記載値)。葉縁の刺は 2 mm 未満(あれば)
花序は 20 cm まで・花は 20〜30 個で花被は白(種の記載値)。花期の月は確認できず要確認
越冬の目安 属全体の一般指針として最低 3〜5℃ を下回らない要確認
保全評価(現行) Not Evaluated(未評価)— 理由は「種内分類群は評価しない」(SANBI・2024.1)
保全評価(過去) CR(深刻な危機)— Raimondo ほか(2009)。15 の種下分類群でただ 1 つ
親種の評価 Data Deficient — Taxonomically Problematic(SANBI・2014-03-19)
出現記録 GBIF 3 件(標本 1 / 観察 2)。iNaturalist 4 件13 変種で最少
語源 「愛らしい(charming)」+ 採集者への献名— Bayer が 1 行で両方を書いている
流通名 ベヌスタ(学名のカタカナ表記)

この表には、他の品種頁と違う書き方をした欄が 3 つあります。ひとつはロゼット径と葉の枚数で、「種の記載値」と断ってあります。Bayer 1999 は、クーペリーという種のレベルでは数値を書いていますが、ベヌスタという変種の項には数値をひとつも置いていません。変種の項にあるのは、書誌・タイプ・語源と献名・定性的な識別の 1 文・産地・図版説明だけです。そこで表の数値は「種の値」として読んでください。

ふたつめは「産地の細かさ」です。南アフリカのレッドリストは、本変種の頁の分布欄に「Information redacted, contact SANBI(情報は非公開。SANBI に問い合わせよ)」とだけ記しています。GBIF に登録された唯一の標本記録も、産地の欄が「locality information redacted」になっています。そのため産地は州(東ケープ州)までにとどめます。詳しくは08 章で扱います。

みっつめはタイプ標本の欄です。Bayer 1999 は本変種のタイプとして Britten 781 という標本を引いていますが、同じ本の同じ項のなかで、産地を示す 1/4 度方眼の番号が 2 通りに割れています(タイプ引用では 3226、分布欄では 3326)。グレアムズタウンの方眼は 3326 なので前者は誤記と考えられますが、ここでは、割れているという事実だけを記します。

公的機関の栽培解説は、この植物にはありません。SANBI が運営する PlantZAfrica というサイトには、種ごとの解説が置かれている植物があります。2026-08-14 に確認したところ、pza.sanbi.org/haworthia-cooperihaworthia-cooperi-var-venustahaworthia-venusta も、いずれも HTTP 404 でした。同じサイトの シンビフォルミスの頁は 200 で開きます。サイトの障害ではなく、この種の頁が作られていないということです。したがって耐寒温度・灌水頻度・用土配合・遮光率といった栽培の数値は、この経路から取れませんでした。推測では書かず、「要確認」として空けてあります。属全体の目安の根拠はハオルチアの越冬(耐寒性)にまとめています。

毛はふつう、葉のふちと裏の稜に生える

粗い砂利のあいだに座る軟葉系ハオルチアの単頭ロゼットを真上から写した写真。三角形の葉の面ぜんたいに白く細かい毛が生え、毛は葉の中央の筋から左右へ放射している。外側の葉は紫褐色を帯び、葉のふちにも毛が並ぶ
葉の「面」に毛が出ていることがいちばんよく分かる 1 枚。毛は葉の中央の筋から左右へ放射するように並び、ふちにも並んでいます。外側の葉は紫褐色を帯びています。本記事はこの株を「ベヌスタである」と断定しません — Wikimedia Commons の分類カテゴリが H. cooperi var. venusta であるという事実だけを示します。Photo: Abu Shawka / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

ここからがこの記事の中心です。「ベヌスタは毛が多い」という説明は、あちこちで見かけます。ですが、それでは何も言っていないのと同じです。ハオルチアには毛のある種がたくさんあります。大事なのは量ではなく、毛が「どこに」生えているかでした。

Bayer は、別のテキストでその既定を書いています。『Haworthia Update』シリーズの Volume 2 第 8 章に、毛(彼は spination = 刺毛と書きます)の生える場所についての一節があります。要点は次のとおりです。

通常、この種の刺毛は葉縁(margins)と竜骨(keels)に生える。葉の面(surface)に刺毛が出るのは、H. cooperi では 1 つの集団だけ — すなわち var. venusta である。(Bayer『Haworthia Update』Volume 2 第 8 章より・要約)

この 1 文が、この頁のすべてです。「毛がある / 無い」ではなく、「毛はどこから出るか」という軸が最初にあって、ベヌスタはその軸の上で例外の側に立っている。まずその軸の名前を、図で押さえておきます。

ANATOMY / SCHEMATIC
FIG.01 毛はどこから出るか — 葉を幅の方向に切ってみる
葉を幅の方向に切った断面の模式図上を向いた面がゆるく盛り上がり、左右の端がふちになり、下側には稜が一本下へ張り出している。ふちと下の稜からは毛が出ている。上を向いた面から毛が出るかどうかが、この記事で扱う分かれ目になる。厚みや比率は計測値ではない。 1 2 3
1
葉の面(おもて)

上を向いた側。ここに毛が出るかどうかが、この記事の分かれ目です。図では破線で「出る場合」を示しています。

2
葉のふち(葉縁 / margin)

葉を幅の方向に切ったときの左右の端。毛の既定の位置その 1。クーペリーの多くの変種で毛が出るのはここです。

3
裏の稜(竜骨 / keel)

葉の裏側に走る背の線。毛の既定の位置その 2。表からは見えず、株を横や下から見る必要があります。

当サイト作成の模式図(2026-08-15)。位置関係だけを示すもので、厚み・比率・毛の本数は計測値ではありません。「刺毛は通常 葉縁と竜骨に生える」は Bayer『Haworthia Update』Volume 2 第 8 章の記述

用語をそろえておきます。日本語で「毛」と言うとき、園芸の現場ではノギ(葉先から伸びる長い毛)を指すのがふつうです。一方、Bayer が spination と書くのは葉の表面から出る短い突起・毛の総称で、位置の話をするときはこちらの語のほうが正確です。本記事は「毛の位置」を扱うので、後者の枠で書きます。

そのうえで、ベヌスタが何をしているかを見ます。下の図は、同じ葉をおもて面から見たものです。左が既定の状態(毛はふちだけ)、右がベヌスタの状態(ふちに加えて、面にも)です。

HAIR POSITION / SCHEMATIC
FIG.02 毛がふちだけの葉と、面にも出る葉
葉をおもて面から見た二つの型の模式図左は毛が葉のふちにだけ並ぶ型で、これがハオルチアのふつうの状態。右は同じ葉のふちに加えて、面いちめんに短い毛が並ぶ型。毛は実物では白いが、図では細い線で表している。裏側の稜は描いていない。 1 2
1
ふちだけ — ハオルチアのふつうの状態

毛は葉の輪郭に沿って並び、面には出ません。裏の稜(竜骨)にも出ますが、おもて面の図では見えないので描いていません

2
面にも出る — ベヌスタ

ふちの毛はそのままに、面ぜんたいにも短い毛が並びます。Bayer は本文で「粗い白毛」、図版説明では「短く光沢のある毛」と書き分けています。実物の毛は白ですが、図では細い線で表しています

当サイト作成の模式図(2026-08-15)。毛の長さ・本数・太さは計測値ではありません — 一次記載にその数値が存在しないためです。描いた形質は「面ぜんたい・細かい・白い」まで

この 2 枚を並べると、上の写真の見え方が変わると思います。写真の株は、葉の輪郭だけでなく面の上にも毛が立っていて、その毛が中央の筋から左右へ放射するように並んでいます。表面が霜を降ろしたように白っぽく見えるのは、この面の毛が光を散らしているからです。Bayer は本変種の項の冒頭に「この非常に美しい変種は、意外にも(surprisingly)」と置いています — 記載した本人にとっても、クーペリーとしては想定外の毛の付き方だった、ということです。

Bayer 自身は、この毛を 2 通りの言い方で書いています。本文では「粗い白毛(coarse white-haired)」、図版の説明では「短く光沢のある毛(short shiny hairs)」。同じ著者が同じ頁で違う形容を使っているので、「長い / 短い」「粗い / 細かい」のどちらとも決められません。図に描いたのは位置と密度だけです。

姿から名前を絞り込む手順は、この頁の担当ではありません。「葉が反り返るか / 舟形か / ノギがあって群生するか」という 3 択で軟葉系を大きく振り分ける手順は、クーペリー系の見分け方に図解でまとめてあります。本頁は同じ表をもう一度作りません。この頁が引き受けるのは、その手順の根拠と、限界のほうです。そして限界のほうも、同じ 1 つの記述に書かれています。

「面に毛がある = ベヌスタ」ではない

分類群葉の面に毛が出るか(Bayer の記述)読み方
H. cooperi var. venusta
(この頁)
出るH. cooperi ではこの 1 集団だけこの頁の主題
H. gracilis var. isabellae
(現 H. cooperi var. isabellae)
1 つの集団で同じことが起きていると明記同じクーペリーの別の変種。しかも別のテキストで Bayer は「Scott の venusta と同じ色と葉面の毛を持つ、とても小さな isabellae」を見たと書いている
H. decipiensまばらな葉面の刺毛はかなり普通別の種。SANBI は親種クーペリーの評価文でも「H. decipiens と紛れる」と書いている
H. nortieri同上(かなり普通)別の種
H. arachnoidea少しある別の種
出典はいずれも Bayer『Haworthia Update』Volume 2 第 8 章(葉面の刺毛について)と Volume 1 第 1 章(isabellae の観察)を 2026-08-14 に照会した実測。この表は「ベヌスタを否定する表」ではなく、「面の毛だけでは決まらない」ことを示す表です。なお var. isabellae は現在 H. cooperi の受理変種で、Bayer が上の記述をした時点の名前(H. gracilis var. isabellae)と現行名が異なります。

03 章で引いた 1 文には、続きがあります。Bayer は「葉の面に刺毛が出るのはクーペリーでは var. venusta だけだ」と書いたすぐあとで、同じことが H. gracilis var. isabellae の 1 集団にも起きていること、まばらな葉面の刺毛は H. decipiensH. nortieri ではむしろ普通で、H. arachnoidea にも少しあることを続けています。

つまり、この記事の主張とその限界は、同じ 1 つの記述から出ています。「クーペリーの中では例外」であることと、「ハオルチア全体では唯一ではない」ことが、同じ段落に並んでいる。これは珍しい形です。ふつう、断定を避ける理由は「一次情報が足りないから」ですが、ここでは一次情報がそろっているのに、その一次情報が断定を止めているのです。

とくに注意したいのが 2 行目です。var. isabellae は、いまはベヌスタと同じ H. cooperi の受理変種です。同じ種の中に、面の毛を持つ集団がもうひとつあるということになります。しかも Bayer は別のテキストで、「Scott の venusta と同じ色と葉面の毛(spininess/hairiness)を持つ、とても小さな isabellae」を実際に見たと書いています。写真 1 枚では、その 2 つを分けられません。

見る場所
この記事の写真 2 枚から
読み取れること
写真だけでは
決まらないこと
葉の面の毛
面ぜんたいに細かい毛が立つ 同じ形質を持つ別の分類群がある
毛の並び
中央の筋から左右へ放射する この並び方が変種に固有かどうか
葉のふちの毛
輪郭に沿って並ぶ ハオルチアの既定なので情報にならない
裏の稜(竜骨)
2 枚とも上から撮られていて写らない 株を横や下から見ないと確認できない
灰緑。外側の葉は紫褐を帯びる 色は種の記載にある変化幅の内側
大きさ
比較物が写っておらず測れない 「小型のまま」を写真で確かめる手立てが無い
産地
2 枚とも栽培株で、産地の情報が無い 記録側の産地も非公開になっている

左列は本記事に載せた実写 2 枚(扉と 03 章)の所見、右列は写真からは決まらない項目。写真の同定は撮影者と Wikimedia Commons の分類カテゴリによるものです候補として読む

手順から入りたい方は見分け方ガイドの入口からどうぞ。

1996 年に生まれ、3 年で変種になった

1946 年の標本から現在まで — 名前が立って消えるまでが 3 年 FIG.04Timeline
第 1 期 標本 Britten, G.V. が採集番号 781 を採る 名前が付く 50 年前。所蔵は NBG
第 2 期 記載 Scott が独立種 Haworthia venusta を発表 Bradleya 14 巻 87 頁。13 変種で最も新しい名前
第 3 期 名指し Bayer が「名前の付けすぎの例」に挙げる 発表の翌年。5 つの名前のうちの 1 つとして
第 4 期 変種へ Bayer 自身がクーペリーの変種へ移す 『Haworthia Revisited』56 頁。種でいたのは 3 年
第 5 期 評価と非公開 CR 判定 → 5 年後に評価ごと取り下げ いま産地は非公開。記録は 3 件のまま
名前が立つ動き 名前が畳まれる動き 記録の側の動き 概念図

この年表の第 2 期から第 4 期までが、たった 3 年です。1996 年、Charles Leslie Scott が『Bradleya』第 14 巻 87 頁に Haworthia venusta という名前を独立した種として発表しました。原記載の産地表記は国際植物名索引(IPNI)の実測で “Cape Province.” ——ケープ州、それだけです。そして1999 年、Bruce Bayer が『Haworthia Revisited』56 頁で、この名前をクーペリーの変種へ移しました

3 年という長さが何を意味するかは、他の 12 変種と並べると分かります。クーペリーの 13 変種について、基準異名(基になった名前)の発表年と、変種の組合せが立った年を全部照会しました。

変種基になった名前階級その発表変種になった年間隔
venusta(この頁)H. venusta C.L.Scott199619993 年
leightoniiH. leightonii G.G.Sm.1950197626 年
truncata(オブツーサ)H. obtusa f. truncata H.Jacobsen品種1955199944 年
gordonianaH. gordoniana Poelln.1937199962 年
isabellaeH. isabellae Poelln.1938200264 年
dielsianaH. dielsiana Poelln.1930199969 年
teneraH. tenera Poelln.1932200270 年
gracilisH. gracilis Poelln.1929200273 年
piliferaH. pilifera Baker18701999129 年
picturata / viridisいずれも H. gracilis変種変種199920023 年(階級は下がっていない)
cooperi / doldii基準異名なし
GBIF Backbone の H. cooperi(usageKey 2780103)の子ノードを全数照会し、各変種の基準異名とその書誌・組合せの発表年を突き合わせた実測値(2026-08-14)。picturata と viridis も 3 年だが、この 2 つはもともと H. gracilis の変種で、親が替わっただけで階級は下がっていない「種から変種へ落ちるまでが 3 年」という現象は venusta だけで、次に短い leightonii(26 年)の 8 分の 1 以下、最長のピリフェラ(129 年)とは 43 倍の差になる。

そして、この 3 年には続きがあります。1997 年——種として発表された翌年——Bayer は別の論考のなかで、次の趣旨のことを書いています。個々の集団を別種として扱うなら、新しい発見のたびに新しい名前が要り、体系は無秩序になって破綻する。まさにその問題の証拠が、H. batteniaeH. pringleiH. joeyaeH. venustaH. mcmurtryi の記載である——と。

「これらはいずれも、他の変異の大きい種のなかに収めることができる。」(Bayer 1997「Haworthia cymbiformis var. reddii — 仮説の検証」より・要約)

この 5 つの名前のなかに、ベヌスタが入っています。発表からわずか 1 年後、のちにその名前を変種へ移すことになる当人が、公開の場で「名前を付けすぎた例」として名指ししていたということです。そして 3 年目に、その当人の手で変種になりました。

分類の粒度をどこに置くかは研究者の判断で、細かく分ける立場(林雅彦氏は 546 種)とまとめる立場(Bayer 氏は 60 種)には大きな幅があります。ここで拠りどころにしているのは、照合先の 4 つがそろって Bayer の扱いを採っているという事実のほうです。

照合先Haworthia venusta C.L.Scott の扱い実測した値
GBIF BackboneシノニムusageKey 2780136 → 受理 2780135(H. cooperi var. venusta)
World Flora Online(2026-06 版)シノニムwfo-0000653836wfo-0000650042
SANBI レッドリストシノニムとして列挙変種頁(2215-308)の Synonyms 欄に 1 件だけ記載
iNaturalist独立の taxon が無い変種 taxon 599562 に集約される
Wikimedia Commonsカテゴリが存在しないCategory:Haworthia venusta は未作成(API が missing を返す)
5 つの公開プラットフォームを 2026-08-14 に個別照会した実測値。POWO(Kew)は HTTP 403 で照会できなかったため、出典に挙げていません。学名を扱う 3 つはそろってクーペリー側へ畳んでおり、画像を扱う Commons にはそもそも旧名のカテゴリが無い(2 枚とも現行の受理名の名義で上がっている)。

シノニムの少なさも、名前の若さの裏返しです。ベヌスタのシノニムは 2 件(GBIF・World Flora Online の実測)。クーペリー 13 変種のシノニム数を数えると、isabellae 15 / ピリフェラ 14 / tenera 12 ……と続き、ベヌスタは truncata・doldii と並んで最少グループです。150 年で 4 回親が変わったピリフェラが 14 件を抱えているのとは正反対で、理由は単純にこの名前がまだ 30 年しか経っていないからです。名前の重さは年数に比例するという当たり前のことが、13 変種の表にそのまま出ています。

2 件目のシノニムには、少し変わったものが入っています。Haworthia salina var. venusta (C.L.Scott) Breuer(2016 年発表)という名前で、ベヌスタを H. salina という別の種の下へ移した組合せです。そして H. salina は、GBIF・World Flora Online・SANBI ではいずれもピリフェラのシノニムとして扱われています。つまり 2016 年に、ベヌスタとピリフェラを「同じ 1 つの種の変種どうし」と見る体系が別に立てられているということになります。本文の主軸に置くのは、GBIF・WFO・SANBI が受理している名前のほうです。

「愛らしい」と、ある採集者の名前

項目記述出所
語義venusta: charming(愛らしい・魅力的な)Bayer 1999・変種の項の語源注記
献名「そしてグレース・ブリテン嬢に因む」— 同じ 1 行に並べて書かれている同上
その理由「彼女の優れた腊葉標本が、Gerhard Marx による近年の再発見につながった」同上(要点)
タイプ標本Britten 781(GRA)。分布欄では Britten 781(GHS, NBG)と Britten and Archibald 781(BOL, PRE)を挙げるBayer 1999
方眼番号タイプ引用は 3226、分布欄は 3326 と割れている。グレアムズタウンの方眼は 3326同上(どちらが正しいかは判定しない)
GBIF の唯一の標本1946-06-09 採集 / 採集者 Britten, G.V. / 採集番号 781 / 所蔵 NBG。カタログ番号 NBG0274832-0GBIF Occurrence 実測(2026-08-14)
その照合採集者名・採集番号・所蔵先の 3 つが Bayer のタイプ引用と一致するただし GBIF 側に「タイプである」という記載は無い本記事の突き合わせ(断定しない)
語源・献名・タイプ引用は Bayer, M.B. 1999『Haworthia Revisited』8. Haworthia cooperi(著者自身が公開しているテキスト。査読誌ではありません)、標本記録は GBIF Occurrence をそれぞれ 2026-08-14 に照会した実測値。Scott 自身が 1996 年の原記載で語源をどう述べたかは、原典(Bradleya 14: 87)を直接参照していないため未確認です。

ベヌスタという名前は、2 つのことを同時に指しています。Bayer が変種の項に置いた語源の 1 行は、venusta: charming(愛らしい)」「そしてグレース・ブリテン嬢に因む」を並べて書いています。ラテン語の語義と、一人の採集者への献名が、同じ 1 行に入っているということです。

Grace という名前には「優美」という意味があるので、「Grace と venusta が掛けてある」と読みたくなります。けれどもBayer はそう書いていません — 語義と献名が並べて記されている、というところまでです。

そして、その献名の理由がこの記事のもうひとつの軸につながります。Bayer は続けて、「彼女の優れた腊葉標本が、Gerhard Marx による近年の再発見につながった」という趣旨を書いています。つまり、この植物はいちど見失われていたのです。

ここで時系列を並べ直すと、順序がはっきりします。1946 年に標本が採られ、50 年後の 1996 年にその標本から名前が付き、それを頼りに野生の株が再発見され、3 年後に変種になった——という順序です。この 3 点は別々の一次記録が支えています(標本は GBIF、発表年は IPNI と GBIF、再発見の経緯は Bayer の記述)。なお再発見が何年のことかは、Bayer が「近年(recent)」としか書いていないため分かりません。

1946 年の標本については、もう少し書けることがあります。GBIF に登録されているベヌスタの標本記録はこの 1 点だけで、採集者名(Britten, G.V.)・採集番号(781)・所蔵先(NBG)の 3 つが、Bayer が引くタイプ引用と一致しますただし GBIF のレコードには「タイプ標本である」という記載がありません。したがって書けるのは「一致する」までで、「タイプそのものである」とまでは書けません。

記録が 3 件しかない — 13 変種で最少

クーペリー 13 変種の野生記録の数(GBIF・2026-08-14 実測) FIG.05Records
var. pilifera(ピリフェラ)126
var. isabellae95
var. gordoniana68
var. cooperi(基本変種)38
var. gracilis38
var. dielsiana34
var. tenera21
var. picturata20
var. leightonii17
var. viridis9
var. doldii4
var. truncata(オブツーサ)4
var. venusta(この頁)3

ベヌスタの野生記録は 3 件です。クーペリー 13 変種のなかで最少で、種全体 549 件の 0.55%。最多のピリフェラ(126 件)の42 分の 1にあたります。そして 3 件しかないので、全部を表に出せます——他の品種頁ではできない粒度です。

#記録の種別提供元 / 記録者産地
1植物標本(腊葉標本)1946-06-09NBG(南アフリカ国立生物多様性研究所)/ 採集者 Britten, G.V.・採集番号 781産地情報は非公開(locality information redacted)/ 東ケープ州
2人による観察2013-09-13iNaturalist(リサーチグレード)/ audissou東ケープ州・座標はぼかされている
3人による観察2019-10-26iNaturalist(リサーチグレード)/ cameron_wesson東ケープ州
GBIF Occurrence(taxonKey 2780135)の全 3 件を 2026-08-14 に照会した実測値。国はすべて南アフリカ、州はすべて東ケープ。1 件目の標本は、採集者名・採集番号・所蔵先が Bayer の引くタイプ引用と一致しますが、GBIF 側に typeStatus の記載が無いため、当サイトは「タイプ標本である」と断定しません(06 章)。

市民科学の側の数字も出しておきます。iNaturalist のベヌスタ(taxon 599562)の観察は4 件で、内訳はリサーチグレード 2 件 / 野生と記録されたもの 2 件 / 栽培・飼育と記録されたもの 2 件でした。野生の 2 件はどちらも南アフリカ東ケープ州(2013 年と 2019 年)で、これが GBIF の 3 件のうち 2 件と同じものです。栽培の 2 件はウクライナとオーストラリアで、南アフリカの外にも株が渡っていることが分かります。

ここで但し書きを付けます。件数は記録された回数であって、野生での個体数でも分布の広さそのものでもありません。GBIF の記録は標本が中心で、研究者が野外で採集して残したものが多くを占めます。栽培で殖やされて広まった株ほど記録には残りにくいという構造があるので、「野生記録が少ない = 珍しい」とも「多い = ありふれている」とも、単純には言えません。変種ごとの記録の濃淡そのものについては、クーペリーの頁が 13 変種ぶんの表で扱っています。

ただしベヌスタの場合、その但し書きを置いてもなお、数字は極端です。3 件のうち 1 件は 80 年前の標本で、残る 2 件は 12 年前と 6 年前の観察。「野生でこの植物を見た記録」は、公開データベースの上ではこれだけということになります。Bayer も図版の説明に「Known only at one locality(1 か所でしか知られていない)」、別のテキストでは「きわめて局所的な、毛のある変異体」と書いています。

2009 年の「深刻な危機」と、伏せられた産地

評価された対象カテゴリ出典 / 版
H. cooperi var. venustaCR B1ab(iii,v)+2ab(iii,v)(深刻な危機)Raimondo et al.(2009)
H. cooperi の他の 11 変種(cooperi / dielsiana / doldii / gordoniana / gracilis / isabellae / picturata / pilifera / tenera / truncata / viridis)いずれも Least Concern(低懸念)Raimondo et al.(2009)
H. leightonii の 2 変種 / H. azurea M.Hayashiいずれも Least ConcernRaimondo et al.(2009)
Haworthia cooperi Baker(種)Data Deficient — Taxonomically Problematicレッドリスト版 2014.1(評価日 2014-03-19)
H. cooperi var. venusta(現在)Not Evaluated(未評価)
理由 =「種内分類群は評価しない」
SANBI 2024.1(変種の頁)
SANBI 南アフリカ植物レッドリストの本変種の頁(2215-308)と親種の頁(2215-4008)の「Assessment History」を 2026-08-14 に照会した実測値。評価履歴は全 16 行あり、2009 年に個別評価された 15 の種下分類群のうち、CR は var. venusta ただ 1 つで、残り 14 はすべて Least Concern。親種の現行評価の評価者は L. von Staden、R.R. Klopper、J.C. Manning。

2009 年の版では、クーペリーの 15 の種下分類群が個別に評価されていました。そのうち14 が Least Concern(低懸念)で、ただ 1 つ、ベヌスタだけが CR(Critically Endangered)= 深刻な危機という判定を受けています。

この CR が何を意味するかは、SANBI 自身の定義の範囲だけで書きます。記号 B1ab(iii,v)+2ab(iii,v) の 1 文字ずつを解説するには IUCN の基準本文が要りますが、そのサイトは 2026-08-14 の照会時に HTTP 403 を返して読めませんでした。そこで、SANBI が公開しているカテゴリ表と用語集で定義されている語だけを並べます。

用語SANBI の定義(要旨)
Critically Endangered(CR / 深刻な危機)入手できる最良の証拠が、CR の 5 つの基準の少なくとも 1 つに合致することを示す状態。きわめて高い絶滅リスクに直面している
Extent of occurrence(EOO / 出現範囲)すべての現存する生育地点を含む最小凸多角形の面積(km²)。迷入は除く
Area of occupancy(AOO / 占有面積)EOO の内側で、実際に占められている面積(km²)
Continuing decline対策が取られない限り続くと見込まれる、最近の・現在の・将来予測される減少
Location(ロケーション)1 つの脅威イベントがそこにいる全個体に急速に影響しうる、地理的に区切られた区域。日本語の「産地」とは同じではない
Severely fragmented個体の半分超が、小さく孤立した部分集団に分かれている状態
SANBI レッドリストのカテゴリ表用語集を 2026-08-14 に照会した実測値の要旨。記号の頭の B は「分布域の狭さを見る基準」の系統ですが、その内側の 1ab(iii,v) がそれぞれ何を指すかは IUCN の基準本文でしか裏が取れないため、当サイトは逐語の解説をしません。

ところが 2014 年に、変種ごとの評価が無くなりました。SANBI は種のクーペリーに Data Deficient — Taxonomically Problematic(データ不足 — 分類学的に問題あり)という判定を与え(2014-03-19)、その理由を「変異が大きく他のハオルチアと区別しにくい。とくに H. cymbiformisH. decipiens と紛れる。分類が解決するまで絶滅リスクを評価できない」としました。そして変種の側の頁は「Not Evaluated(未評価)」に変わり、理由の欄には「種内分類群は評価しない: Haworthia cooperi を見よ」とだけ書かれています。

整理すると、こうなります。ベヌスタは「危険がある」とも「危険がない」とも、いまは言われていません。2009 年にはこの属の種下分類群で唯一「深刻な危機」という判定を受けていましたが、2014 年に名前の線が引けなくなり、判定そのものが取り下げられました評価が外れたのは、危険が減ったからではなく、評価する単位が定まらなくなったからです。そして、その「区別しにくい相手」として評価文が名指ししている H. decipiens は、04 章で見たとおり「葉面の刺毛がかなり普通」な種でもあります。

そのうえで、いまも残っているものがあります。産地の非公開です。

出所実測した状態(2026-08-14)
SANBI レッドリスト(変種の頁)Distribution → Range = Information redacted, contact SANBI(情報は非公開・SANBI に問い合わせよ)
GBIF の唯一の標本記録locality = locality information redacted(産地情報は非公開)
iNaturalist の野生観察 2 件1 件は座標がぼかされている(obscured)
同じ状態の変種SANBI の 13 変種のうち Range を非公開にしているのは 5 つdoldii / isabellae / leightonii / truncata / venusta。残る 8 つには Range の行そのものが無い
SANBI レッドリストの 13 変種の頁を全数照会し、GBIF Occurrence と iNaturalist の該当レコードを個別に確認した実測値(2026-08-14)。「ベヌスタだけが特別に伏せられている」わけではありません — 伏せられている側の 5 つに入る、というのが正確な言い方です。当サイトはこの記事に盗採や違法採取の話を持ち込みません。SANBI の親種の頁には脅威(Threats)の欄そのものが無く、個体群動向も Unknown(不明)とだけ記されています。

この記事も、その非公開に合わせます。Bayer の公開テキストには町に隣接する地点名が出てきますが、記録を持つ機関と標本の提供元が自ら伏せているものを、ここで写すことはしません。書く地理の粒度は、州(東ケープ州)と、1/4 度方眼の番号(3326 = 約 100 km 四方の枠)までです。

姿ぜんたい — ロゼットと仔株の出方

ROSETTE / SCHEMATIC
FIG.03 真上から見たロゼットと、まばらな仔
ロゼットを真上から見た模式図中心から外へ向かって三角形の葉が三重に重なる。葉の面には毛を細い線で表している。外周に仔株を一つだけ描いてある。仔を吹くとしてもごくまばら、という記載にあわせた。大きさの比率は計測値ではない。 1 2
1
重なる葉

中心から外へ向かって葉が重なります。面の毛は、外側の葉にも内側の葉にも同じように並びます葉の枚数は種の記載値(20〜40 枚)であって、変種固有の数値ではありません

2
仔株

Bayer は本変種について 「仔を吹くとしても、ごくまばら」 と書いています。図に仔を 1 つだけ描いたのはそのためで、数を示しているのではありません。

当サイト作成の模式図(2026-08-15)。葉の枚数・大きさの比率は計測値ではありません。「仔を吹くとしてもごくまばら」「小型のままにとどまる」は Bayer 1999 の記述

ここからは、写真と図の話です。ふつうの品種頁なら書かないことですが、ベヌスタには書く理由があります。この記事に載せられる実写が、世界で 2 枚しかないからです。

画像の出どころ実測(2026-08-14)本記事で使えるか
Wikimedia Commons
Category:Haworthia cooperi var. venusta
ファイル 2 枚。どちらも CC BY-SA 4.0(S Molteno / Abu Shawka)使える。この 2 枚が全在庫(扉と 03 章に掲載)
Category:Haworthia venusta存在しない(API が missing を返す)
iNaturalist の野生観察 2 件写真のライセンスはどちらも CC BY-NC使えない(NC は不採用)
同 栽培株の観察1 件だけ CC BY だが、同定は投稿者本人のみでコミュニティの追認が無い使わない(誤同定を避けるため)
EC・専門店・SNS・個人ブログ使えない(ライセンスが不明・無断転載のリスク)
AI 生成の「写真らしい」画像使わない(実在する品種の姿として誤解されるため)
本記事の模式図3 点(FIG.01 断面 / FIG.02 毛の位置 / FIG.03 ロゼット)使う。ただし描いた形質と描いていない形質を本文に書く
Wikimedia Commons の categorymembers API、iNaturalist の観察 API を 2026-08-14 に照会した実測値。ピリフェラのカテゴリには 13 枚、クーペリーのカテゴリには 30 枚あるのに対し、ベヌスタは 2 枚です。当サイトが本文に使えるのは PD / CC0 / CC BY / CC BY-SA の 4 種だけで、ND・NC は採用しません。

そこで、足りないぶんを模式図で補いました。この記事の図 3 点(FIG.01 / FIG.02 / FIG.03)は、そのために描いたものです。いずれも線で描いた図で、写真に見えるようには作っていません。そして描いてよい形質を、先に決めてから描きました。基準は 2 つです。

  • 一次記載に出典のある形質だけを描く — 毛の位置(ふち・竜骨・面)、仔がまばらであること、小型のままであること。いずれも Bayer の記述にあるものです
  • 実写 2 枚で目視できる範囲を超えない — 毛が面ぜんたいにあること、細かいこと、白いこと、外側の葉が紫褐を帯びること。ここまでです

逆に、描かなかったものを挙げておきます。毛の長さ・太さ・本数の実寸は描いていません。一次記載にその数値が存在しないからです(Bayer は「粗い白毛」と「短く光沢のある毛」という 2 通りの形容しか書いていません)。ロゼットの径・葉の長さも描いていません。変種固有の数値が無いためです。窓の形も描いていません — 窓の型については、Bayer にも SANBI にも本変種についての記述が見つからなかったからです(窓の型ぜんたいの分類はハオルチアの品種と系統の全体像が扱っています)。

そして、図はどこまでいっても図です。模式図は「こう理解すると分かりやすい」という補助であって、実物の計測ではありません。各図の下に「計測値ではありません」と書いてあるのは、そのためです。手元の株と図を見比べて名前を決める、という使い方には向きません。図が答えるのは「どこを見ればよいか」までで、「これは何か」には答えません。

育て方の要点 — 光・水・用土・冬

LIGHT 親種の生育帯として書かれているのは東ケープ州の乾いた草地で、遮るものが少ない環境。種の記載には「露出した場所では葉が紫がかる」とあり、本記事の実写 2 枚でも外側の葉が紫褐を帯びている。光量の数値は書かない。
WATER 灌水頻度の一次情報はどのソースにも無い。ハオルチア共通の考え方(用土が乾いてから与える)を当てるのが実際的。頻度の数値は書かない。なお面に毛がある株は水が毛に留まりやすいと言われることがあるが、裏づけとなる一次記述は無い
SOIL 用土と鉢 配合の一次情報は無い。本記事の実写 2 枚はどちらも粗い砂利や軽石が用土の表面を占めている栽培株だが、これは撮影者の栽培で、自生地の土壌ではない。小型のままにとどまる(Bayer)ので大鉢が要る植物ではないが、鉢径の推奨値は書かない。資材の一般解は資材ガイドへ。
TEMPERATURE 温度 越冬の具体的な数値は変種固有の一次情報が無く要確認(本サイト共通の目安は最低 3〜5℃)。SANBI の PlantZAfrica に親種の頁も変種の頁も存在しないため、公的機関からは栽培条件が取れなかった(2026-08-14 実測)。自生地が南アフリカの草地であることは、日本の屋外で越冬できるという意味ではない。

この節は、他の品種頁と書き方を変えています。SANBI が運営する PlantZAfrica にクーペリーの解説頁が無く(02 章)、Bayer 1999 も変種の項に形態の数値も栽培の記述も置いていません。本変種だけを対象にした光量・灌水頻度・用土配合・耐寒温度の一次情報は、今回の照会範囲では確認できませんでした。推測の数値は置かず、自生地の記述から導ける前提と、種・属共通の考え方までを書きます。光・水・用土はハオルチアの育て方、用土・鉢・棚・照明の選び方は育成環境ガイドにまとめています。

ひとつだけ、毛について注意があります。面に毛のある多肉について「毛が水を弾く」「毛に水が溜まって傷む」といった説明を見かけますが、ベヌスタの毛にそうした機能を書いた一次記述はありません。Bayer が書いているのは毛の位置と見た目だけです。機能の話を、姿の記述から推測して足すことはしません。

殖え方については、変種のレベルで 1 行だけ記述があります。Bayer 1999 は本変種を「仔を吹くとしても、ごくまばら(It offsets sparsely if at all)」と書いています。親種のクーペリーが「しばしば増殖性(often proliferous)」= 仔株を出しやすいと記載されているのとは、逆向きの記述です。株分けで殖やしにくい、ということになります。株分け・葉挿しといった一般的な手順はハオルチアの増やし方に、花についてはハオルチアの花にまとめています。なお Bayer は図版の説明で「容易に結実するようだ(It seems to set seed easily)」とも書いており、種子はできるようです。

最後に、姿が変わったときの読み方です。軟葉系の植物は、光が足りないと葉が立ち上がって間延びし、ロゼットの形が崩れることがあります。「図鑑の写真と手元の株が違う」ときに、まず疑うのは品種ではなく環境という順序を覚えておいてください。姿が間延びする原因と戻し方の一般論はハオルチアの徒長にまとめました。

入手時の注意 — 「ベヌスタ」と表示されうるもの

「ベヌスタ」と表示されうるもの — 断定でなく「次に見る所」の表
venusta 名義 VAR. VENUSTA
名前の出どころ
Scott・1996 の記載 → Bayer・1999 の組合せ
照合先の扱い
受理名(GBIF / WFO / SANBI)
次に見る所
毛がふちだけでなく面にも出ているか。ただし面の毛は他の分類群にも出る
旧名義 H. VENUSTA
名前の出どころ
Scott・1996 の種名(1999 年に変種へ)
照合先の扱い
同じもののシノニムとして畳まれている
次に見る所
見た目では分けない。3 年だけ使われた階級の表記であって別の植物ではない
面に毛のある近縁 ISABELLAE / DECIPIENS ほか
名前の出どころ
それぞれ独立した変種・種
照合先の扱い
Bayer が「同じ形質が出る」と明記している相手
次に見る所
面の毛だけでは分けられない。姿の手順は見分け方の頁
交配・園芸銘 HYBRID / CULTIVAR
名前の出どころ
栽培の現場で付けられた呼び名
照合先の扱い
学名の照合先には載らない
次に見る所
外から確かめる手立てがふつう無い。表示として受け取る

売り場のラベルは、いまのところ 2 通りに割れます。Haworthia cooperi var. venusta と書かれていれば現行の受理名、Haworthia venusta と書かれていれば 1996〜1999 年に使われた種名です。後者が間違いという意味ではありません。ラベルは、それが作られた時点の分類を保存していると考えるほうが実態に近いといえます。ただし、育て方や来歴を調べるときは、現行の受理名で検索したほうが公的なデータベースにたどりつきやすいのは確かです。名前の対照表に、旧名と現行名を並べてあります。

そして、ここがベヌスタの難しいところです。ラベルの学名が正しくても、その株が本当にベヌスタかどうかは、写真からは決まりません。04 章で見たとおり、面に毛が出るのはベヌスタだけではないからです。しかも野生の記録が 3 件しかない植物なので、流通している株の来歴を外から確かめる手立てが、ほとんどありません「そう表示されている」という事実として受け取るのが、いまのところ正確な態度です。

園芸銘の扱いについて。園芸銘の正式名を決めるのは日本ハオルシア協会で、同会は2014 年に ISHS(国際園芸学会)から Haworthia の国際栽培品種登録機関(ICRA)に指定されています。登録の担当は林雅彦氏で、Haworthia(HaworthiopsisTulista を含む)・AstrolobaChortolirion とそれらの交配種を、ひとつの品種名グループとして扱うという枠組みです(ISHS の ICRA 一覧・2026-08-14 実測)。園芸銘は、協会の登録名が正になります。

そのうえで、ベヌスタに結びつけられる漢字の銘を、本記事では書きません。2026-08-14 に協会の公開頁を照会したところ、venusta も「ベヌスタ」も1 件も出てきませんでした。一般の検索エンジンによる照会は、今回は bot 遮断で実施できていません。

価格については、この頁では扱いません。野生の記録が 3 件で、記録機関が産地を伏せている植物について、価格の話は採取の話に接続しやすいからです。

まとめ

Summary
名前が立つ理由は、たった 1 つの形質でもありうる
ベヌスタは、南アフリカ東ケープ州に生える軟葉系ハオルチアで、いまはクーペリーの変種として扱われています。ハオルチアの毛はふつう葉のふちと裏の稜(竜骨)に生えますが、この変種は葉の「面」にも毛が出ます。クーペリーという種のなかで面に毛が出るのは、この 1 集団だけだと記されています。名前は 1996 年に生まれ、3 年で変種になりました。世界に残る野生の記録は 3 件、商用に使える写真は 2 枚、そして産地は非公開です。
毛は「位置」で見る既定はふちと竜骨。面に出るのはクーペリーでは 1 集団だけ
同じ形質は他にも出るBayer が「他の分類群にも出る」と書き添えている
種でいたのは 3 年13 変種で最短。発表の翌年に著者本人が名指ししていた
記録は 3 件・産地は非公開2009 年に 15 分類群でただ 1 つ CR。2014 年に評価ごと取り下げ
  • ベヌスタの現行の受理名は Haworthia cooperi var. venusta (C.L.Scott) M.B.Bayer で、組合せは Bayer が 1999 年『Haworthia Revisited』56 頁で立てたものです(GBIF usageKey 2780135 / WFO wfo-0000650042 / IPNI 1014742-1)
  • 基になった名前は Haworthia venusta C.L.Scott で、1996 年『Bradleya』第 14 巻 87 頁に独立種として発表されました。原記載の産地表記は “Cape Province.” だけです(IPNI 991990-1)
  • 種として立っていたのは約 3 年。クーペリー 13 変種のなかで最短で、次に短い leightonii(26 年)の 8 分の 1 以下、最長のピリフェラ(129 年)とは 43 倍の差です
  • 基準異名の発表年としても 1996 年が 13 変種で最も新しく、次に新しい truncata(1955 年)より 41 年あとになります
  • 発表の翌年 1997 年、Bayer は公開の場でベヌスタを「名前の付けすぎの例」の 1 つとして名指ししていました。そして 1999 年、その当人の手で変種になりました
  • ハオルチアの毛は、ふつう葉縁(ふち)と竜骨(裏の稜)に生えます葉の面に出るのは、H. cooperi ではベヌスタの 1 集団だけだと Bayer は書いています(『Haworthia Update』Volume 2 第 8 章)
  • ただし「面に毛がある = ベヌスタ」とは言えません。同じ記述が、H. gracilis var. isabellae の 1 集団にも同じことが起きていること、H. decipiensH. nortieri では面のまばらな刺毛がむしろ普通であることを続けて書いています
  • 変種の記述は 1 文しかありません — 「粗い白毛におおわれる」「仔を吹くとしてもごくまばら」「小型のままにとどまる」の 3 点だけ。ロゼット径・葉の枚数・花期・耐寒温度は書かれていません
  • 名前の意味は「愛らしい(charming)」で、同時にグレース・ブリテン嬢への献名です。Bayer は 1 行に両方を書いています。「Grace と venusta の掛け言葉」とは書かれていません
  • GBIF の野生記録は 3 件で、クーペリー 13 変種のなかで最少(種全体 549 件の 0.55%・最多のピリフェラの 42 分の 1)。3 件は 1946 年の標本 1 点と、2013 年・2019 年の観察 2 件です
  • その標本は採集者名・採集番号・所蔵先が Bayer の引くタイプ引用と一致しますが、GBIF 側に typeStatus の記載が無いため「タイプ標本である」とまでは書けません
  • 2009 年、クーペリーの 15 の種下分類群が個別に評価され、14 が低懸念、ベヌスタだけが CR(深刻な危機)でした。2014 年に親種ごと Data Deficient へまとめられ、変種は「未評価」になりました
  • いま産地は非公開です — SANBI の変種頁は Range を Information redacted とし、GBIF の唯一の標本も産地が伏せられています。ただし 13 変種のうち 5 つが同じ状態で、ベヌスタだけが特別というわけではありません
  • 商用に使える実写は世界で 2 枚だけ(Wikimedia Commons・ともに CC BY-SA 4.0)。足りないぶんは模式図 3 点で補い、描いた形質と描いていない形質を 09 章に書きました
  • 人気品種ランキングで他の品種を見る

FAQ

毛が生えているハオルチアは全部ベヌスタですか?
いいえ。毛の有無ではなく、毛の「位置」で見てください。ハオルチアの毛は、ふつう葉のふち(葉縁)と裏の稜(竜骨)に生えます。ベヌスタが例外的なのは、葉の「面」にも毛が出ている点で、Bayer は「葉の面に刺毛が出るのは H. cooperi では 1 集団だけ = var. venusta」と書いています。ただし、それだけで決まるわけでもありません。同じ記述が、H. gracilis var. isabellae の 1 集団にも同じことが起きていること、H. decipiensH. nortieri では面のまばらな刺毛がむしろ普通であることを続けて書いているからです。姿から絞り込む手順はクーペリー系の見分け方にあります。
「Haworthia venusta」というラベルで買いました。古い名前ですか?
いまの照合先では受理されていない表記ですが、間違いではありませんHaworthia venusta C.L.Scott は 1996 年に独立した種として発表された名前で、1999 年にクーペリーの変種へ移されるまでの約 3 年間は正式な種名でした。ラベルは、それが作られた時点の分類を保存していると考えるほうが実態に近いといえます。育て方や来歴を調べるときは、現在の受理名 Haworthia cooperi var. venusta で検索すると公的なデータベースにたどりつきやすくなります。
なぜベヌスタは種から変種になったのですか?
「変異の大きい種のなかに収められる」という判断です。1996 年に Scott が独立種として発表した翌年、Bayer は別の論考のなかで、個々の集団を別種として扱えば体系が破綻すると述べ、その例として H. batteniaeH. pringleiH. joeyaeH. venustaH. mcmurtryi の 5 つの記載を挙げました。そして 1999 年、Bayer 自身が『Haworthia Revisited』でベヌスタをクーペリーの変種へ移しています。分類の粒度をどこに置くかは研究者の判断で、細かく分ける立場(林雅彦氏 546 種)とまとめる立場(Bayer 氏 60 種)には大きな幅があります。書いているのは「照合先の 4 つがそろって Bayer の扱いを採っている」という事実です。
ベヌスタは絶滅危惧種ですか?
現在は「未評価」という扱いです。南アフリカのレッドリストは本変種の頁を Not Evaluated とし、理由に「種内分類群は評価しない: Haworthia cooperi を見よ」と記しています。親種のクーペリーは Data Deficient — Taxonomically Problematic(2014-03-19)です。ただしこれは「安全」という意味ではありません2009 年の版では、クーペリーの 15 の種下分類群のうちベヌスタだけが CR(深刻な危機)と判定されていましたその判定が 2014 年に取り下げられたという順序です。カテゴリが外れたのは危険が減ったからではなく、評価する単位が定まらなくなったからです。なお SANBI は現在も本変種の分布(Range)を非公開にしています。
自生地はどこですか?
南アフリカの東ケープ州、とだけ書きます。それより細かい産地は書けません。理由は方針ではなく実測です — SANBI のレッドリストは本変種の分布欄を「Information redacted, contact SANBI(情報は非公開)」とし、GBIF に登録されている唯一の標本記録も産地の欄が「locality information redacted」になっています。記録を持つ機関が自ら伏せているものを、ここで写すことはしません。書ける地理の粒度は、州と、1/4 度方眼の番号(3326 = 約 100 km 四方の枠)までです。なお 13 変種のうち 5 つが同じように Range を非公開にしていますので、ベヌスタだけが特別というわけではありません。
仔株で殖やせますか?
殖やしにくいほうだと記されています。Bayer 1999 は本変種を「仔を吹くとしても、ごくまばら(It offsets sparsely if at all)」と書いています。親種のクーペリーが「しばしば増殖性(often proliferous)」= 仔株を出しやすいと記載されているのとは、逆向きの記述です。一方で同じ Bayer が図版の説明に「容易に結実するようだ(It seems to set seed easily)」とも書いているので、種子はできるようです。ただし発芽率や実生の育ち方についての一次情報は確認できていません。株分け・葉挿しといった一般的な手順はハオルチアの増やし方にまとめてあります。
何℃まで耐えられますか?
最低でも 3〜5℃ を下回らせないのが実用の線です(ハオルチア属全体の一般的な指針)。本変種に固有の耐寒限界を示す信頼できる一次情報は確認できていません。軟葉系の頁は SANBI の PlantZAfrica にある種ごとの解説を土台にしていますが、クーペリーにもベヌスタにも、その頁が存在しません(2026-08-14 に確認。同サイトの H. cymbiformis の頁は開きます)。さらに Bayer 1999 は変種の項に栽培の記述を置いていません。自生地は東ケープ州の乾いた草地ですが、それは南アフリカの話であって、日本の屋外で越冬できるという意味ではありません。
この記事の図は写真ではないのですか?
3 点(FIG.01 / FIG.02 / FIG.03)は模式図です。線で描いた図で、写真に見えるようには作っていません。実在する品種の姿を AI で「写真らしく」生成することはしません。図を使った理由は単純で、この植物について商用に使える実写が世界で 2 枚しかないからです(Wikimedia Commons のカテゴリの全量。iNaturalist の野生写真は CC BY-NC で使えません)。描いた形質は一次記載と実写 2 枚で裏の取れる範囲に限り、毛の長さ・本数・ロゼット径といった数値は描いていません(一次記載にそれらの数値が存在しないためです)。詳しくは09 章に書きました。
道具はここに集約
ハオルチアの育成環境ガイド(LED・用土・鉢・棚)
親にあたる種
ハオルチア・クーペリー(Haworthia cooperi)|13 変種の全体像と自生地・名前の来歴
姿から絞り込む
クーペリー系の見分け方|オブツーサ・シンビフォルミス・レツーサを 3 つの軸で分ける
隣のページの変種
オブツーサとは|学名・自生地・クーペリー 13 変種のなかでの位置
出典
  • GBIF Backbone Taxonomy — Haworthia cooperi var. venusta (C.L.Scott) M.B.Bayer(usageKey 2780135・status ACCEPTED・rank VARIETY・publishedIn Haworthia Revisited: 56, 1999・親 2780103)と、基になった名前 Haworthia venusta C.L.Scott(usageKey 2780136・Bradleya 14: 87, 1996)、シノニム 2 件。2026-08-14 照会: GBIF 種ページ(var. venusta) / 同(H. venusta C.L.Scott)
  • GBIF Backbone — 親種 Haworthia cooperi Baker(usageKey 2780103)の受理変種 13 と、各変種の基準異名・その階級・発表年・組合せの発表年(本記事 05 章の表)。API が返す子ノード 14 件のうち 1 件は菌類の配列由来の識別子で、変種として数えていない。2026-08-14 照会: GBIF 種ページ(H. cooperi)
  • GBIF Occurrence — var. venusta の出現記録 3 件の全内容(1946-06-09 の標本 1 点 = 提供元 NBG・採集者 Britten, G.V.・採集番号 781・カタログ番号 NBG0274832-0・locality information redacted / 2013-09-13 と 2019-10-26 の iNaturalist リサーチグレード観察 2 件)。比較に用いた 13 変種ぶんの件数(ピリフェラ 126 ほか)と種全体 549 件も同 API で実測。2026-08-14 照会(taxonKey 2780135)
  • IPNI(国際植物名索引)— Haworthia venusta C.L.Scott(Bradleya 14: 87, 1996 / tax. nov. / 原記載の産地表記 “Cape Province.”): IPNI 991990-1 / Haworthia cooperi var. venusta(Haworthia Revisited 56, 1999 / comb. nov.): IPNI 1014742-1 / Haworthia salina var. venusta (C.L.Scott) Breuer(Alsterworthia Int. 16(2): 6, 2016): IPNI 77157105-1。著者の生没年(Scott 1913–2001 / Bayer 1935–2023)も同索引の著者レコードによる
  • World Flora Online(分類版 2026-06)— Haworthia cooperi var. venusta は受理(WFO ID wfo-0000650042)、Haworthia venusta C.L.Scott(wfo-0000653836)を含むシノニム 2 件。2026-08-14 に照合 API で実測。WFO のサーバーは証明書の中間鎖を送っていないためリンク検査を通せませんので、リンクではなく WFO ID を記します(worldfloraonline.org で ID を検索してください)
  • SANBI 南アフリカ植物レッドリスト — 本変種の頁(2215-308)の国内評価 Not Evaluated と理由「種内分類群は評価しない: Haworthia cooperi を見よ」、Distribution → Range = Information redacted, contact SANBI、およびシノニム 1 件。2026-08-14 照会: SANBI レッドリスト(var. venusta)
  • SANBI 南アフリカ植物レッドリスト — 親種 Haworthia cooperi の頁(2215-4008)の全国評価 Data Deficient – Taxonomically Problematic(評価日 2014-03-19、評価者 L. von Staden・R.R. Klopper・J.C. Manning)、評価理由(H. cymbiformisH. decipiens と区別しにくい)、南アフリカ固有、分布州(東ケープ)、個体群動向 Unknown、属についての注記、および評価履歴 16 行(2009 年の版で var. venusta = CR、他 14 分類群 = Least Concern)。2026-08-14 照会: SANBI レッドリスト(H. cooperi)
  • SANBI レッドリストのカテゴリ表用語集 — Critically Endangered / Extent of occurrence / Area of occupancy / Continuing decline / Location / Mature individuals / Severely fragmented の定義(本記事 08 章の表)。2026-08-14 照会。IUCN の基準本文(記号 B1ab(iii,v)+2ab(iii,v) の逐語の意味)は HTTP 403 で照会できなかったため、記号の解説はしていません
  • SANBI 南アフリカ植物レッドリスト — 13 変種の頁を全数照会し、Range を非公開にしているのが 5 つ(doldii / isabellae / leightonii / truncata / venusta)であることを確認(2026-08-14)
  • SANBI PlantZAfrica — 本変種にも親種にも解説頁が存在しないこと(haworthia-cooperi / haworthia-cooperi-var-venusta / haworthia-venusta が HTTP 404 / 同サイトの H. cymbiformis と var. picturata の頁は 200)を 2026-08-14 に実測: SANBI PlantZAfrica(比較に用いた頁)
  • iNaturalist — Haworthia cooperi var. venusta(taxon 599562)の観察 4 件、うちリサーチグレード 2 / 野生 2 / 栽培 2。野生 2 件は南アフリカ東ケープ州、栽培 2 件はウクライナとオーストラリア。野生 2 件の写真はいずれも CC BY-NC で、本記事には使用できません。2026-08-14 実測: iNaturalist taxon 599562
  • Wikimedia Commons — Category:Haworthia cooperi var. venusta(ファイル 2 枚。これが本記事の実写の全在庫)。Category:Haworthia venusta はカテゴリとして存在しない。各画像のライセンス版と作者は API で個別に実測(2 枚とも CC BY-SA 4.0)
  • Bayer, M.B. 1999. Haworthia Revisited — 8. Haworthia cooperi(著者自身が全文を公開しているテキスト。査読誌ではありません)。本記事が引いたのは、種の記載(ロゼット径 120 mm まで・しばしば増殖性・無茎・葉 20〜40 枚・葉縁の刺 2 mm 未満・青緑で露出時に紫を帯びる・花序 20 cm まで・花 20〜30 個で花被は白)、var. venusta の項(「この非常に美しい変種は、意外にも粗い白毛におおわれ、他の変種に見られるわずかに毛がある傾向を誇張している」「仔を吹くとしてもごくまばら」「小型のままにとどまる」・語源注記「venusta: charming、そしてグレース・ブリテン嬢に因む」・タイプ引用 Britten 781・産地欄・図版説明「短く光沢のある毛」「1 か所でしか知られていない」「容易に結実するようだ」)。2026-08-14 照会: Haworthia Revisited 8. Haworthia cooperi
  • Bayer, M.B.『Haworthia Update』Volume 2, Chapter 8 — 「通常この刺毛は葉縁と竜骨に生える。葉の面に刺毛が出るのは H. cooperi では 1 集団だけ = var. venusta である」同じことが H. gracilis var. isabellae の 1 集団にも起きていることまばらな葉面の刺毛が H. decipiensH. nortieri ではかなり普通で H. arachnoidea にも少しあること本記事の 03 章・04 章と自作図解 FIG.01 / FIG.02 の唯一の根拠。2026-08-14 照会: Chapter 8 – Ecotypes in Haworthia
  • Bayer, M.B.『Haworthia Update』Volume 1, Chapter 4 — 本変種を「きわめて局所的な、毛のある変異体」と記すこと。2026-08-14 照会: Volume 1 Chapter 4 — Haworthia cooperi and H. bolusii var. blackbeardiana
  • Bayer, M.B. 1997.「Haworthia cymbiformis var. reddii (Scott) Bayer – a test of an hypothesis.」— 個々の集団を別種として扱えば体系が破綻するという議論と、その証拠として H. batteniaeH. pringleiH. joeyaeH. venustaH. mcmurtryi の記載を挙げる一節(本記事 05 章)。2026-08-14 照会: a test of an hypothesis(1997)
  • Bayer, M.B. 2013.『Nomenclator』— 本変種のタイプ引用(方眼番号なし)。1999 年の本文とタイプ引用の方眼番号が割れていることの突き合わせに用いた。2026-08-14 照会: Nomenclator
  • ISHS(国際園芸学会)ICRA 一覧 — Haworthia の国際栽培品種登録機関が HAWORTHIA SOCIETY OF JAPAN(日本ハオルシア協会・2014 年指定)であること、登録担当が Dr Hayashi Masahiko であること、対象が Haworthia(HaworthiopsisTulista を含む)・AstrolobaChortolirion とその交配種を 1 つの品種名グループとして扱うこと。2026-08-14 照会: ISHS ICRA 一覧 #100
  • 本記事が参照した分類整理の一次文献: Scott, C.L. 1996. Bradleya 14 / Bayer, M.B. 1999. Haworthia Revisited. Umdaus Press / Breuer, I. 2016. Alsterworthia International 16(2) / Bayer, M.B. & Manning, J.C. 2012. Haworthia Update 7(4) / Raimondo, D. et al. 2009. Red List of South African Plants. Strelitzia 25(いずれも GBIF / IPNI / SANBI / WFO の書誌欄に記載。原典は直接参照しておらず、記述はデータベースの登録内容と、著者自身が公開しているテキストにもとづきます)
  • 本記事の模式図 3 点(FIG.01 / FIG.02 / FIG.03)は2026-08-15 に作成した自作図です。描いた形質の根拠は上記の Bayer の各テキストと、本記事に掲載した実写 2 枚の目視所見に限られます。寸法・比率・毛の本数は計測値ではありません(09 章)
  • 写真は CC ライセンス画像(PD / CC0 / CC BY / CC BY-SA)のみを使用しています。各画像の作者・ライセンス・出典は 画像クレジット・出典一覧 に掲載しています
Field Noteデータ集約図鑑

運営者は栽培による一次観察を持たないため、同定は断定せず、候補と「次に見る所」までを示しますBayer 1999 は変種の項に形態の数値を置いていないため、本記事の数値はすべて種 H. cooperi の記載値です花期・耐寒温度・灌水頻度・用土配合は一次情報を確認できず、本記事では書いていませんSANBI と標本提供元が産地を伏せているため、州(東ケープ州)より細かい地名も書いていません。形態と語源は Bruce Bayer の記述にもとづきますが、『Haworthia Revisited』と『Haworthia Update』は著者自身が公開しているテキストで査読誌ではありません(Scott の原記載は未参照)。出現記録の件数は調査・観察の努力量に左右されるため、野生での個体数や分布の広さそのものではありません。また写真の同定は Wikimedia Commons の投稿者・分類カテゴリに由来するもので、当サイトが検分した結果ではありません。

画像クレジット

本記事の写真は Wikimedia Commons の CC ライセンス画像です(PD / CC0 / CC BY / CC BY-SA のみ採用・ND / NC は不採用)。2 枚とも CC BY-SA 4.0 で、継承条件が付きます2 枚とも Commons の分類カテゴリは Haworthia cooperi var. venusta で、このカテゴリに入っているファイルは 2 枚だけです(2026-08-14 実測)。本文中の模式図 3 点は写真ではなく、線画です
扉の写真: Photo: S Molteno / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
03 章の写真: Photo: Abu Shawka / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
サイト全体の画像出典は画像クレジットにまとめています。

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