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軟葉系11 章約26分で読めます

クーペリーの見どころと育て方|オブツーサとの関係・13変種

白い砂利を敷いた黒鉢に育つ軟葉系ハオルチアの単一ロゼットを斜め上から。三角にとがった葉が幾重にも重なり、葉の上半分の窓に細い白い条が走る。葉のふちと竜骨には短い毛(ノギ)が並び、株の中心から褐色の細い花茎が 1 本立ち上がる
Commons では Haworthia cooperi として掲載 Photo: Abu Shawka / CC0, via Wikimedia Commons(帰属は任意)
SPECIMEN — HAWORTHIA COOPERI
クーペリーHaworthia cooperi / クーペリー
魅力葉先の窓の面に走る細い条線 育て方を見る →

指先ほどの葉の先に、細い糸を仕込んだような窓。逆光にかざすと条線が一本ずつ浮かび、ふちに並ぶ短い毛が白く光ります。クーペリー(Haworthia cooperi)は、売り場でおなじみのオブツーサも変種として含む種で、同じ名前で売られていても株ごとに姿がまるで違う。その幅ごと楽しみたい人のための頁です。

クーペリーの見どころ — 窓とノギ

観察
葉先の尖りと、縁に沿う毛を見る
全体の位置 → 同じ写真の拡大
この掲載株は尖った葉と縁の毛が見どころ。丸い窓の変種との違いは、近縁比較へ。
  1. 左の窓縦の線を、尖った葉先まで追う。
  2. 葉の輪郭輪郭に沿って並ぶ細い毛を探す。
窓の線が、尖った葉先へ集まる。
1 尖った葉先と窓窓の線が、尖った葉先へ集まる。
葉の面の線と、外へ出る細い毛を分けて見る。
2 輪郭に沿う毛葉の面の線と、外へ出る細い毛を分けて見る。
この掲載株は尖った葉と縁の毛が見どころ。丸い窓の変種との違いは、近縁比較へ。
H. cooperiとして掲載された一株の観察。種全体の標準形ではありません。 部分拡大は上の同じ写真から。番号は場所を示します。
Photo: Abu Shawka / CC0, via Wikimedia Commons(部分拡大)

このページの尖葉の写真では、窓に細い条線が走り、葉の縁に短い毛が並びます。丸いオブツーサを想像していた人ほど、姿の幅に驚くはず。丸葉や毛の目立たない変種も、同じクーペリーという種に含まれます。

光に透かすと、窓に走る条線が浮かびます。SANBIは変種picturataについて、半透明部が内側の組織へ光を通すと説明しています。これは特定の変種の生態の説明。クーペリーのすべての変種を、同じ崖の日陰に育つ植物として扱うわけではありません。 関連資料:ハオルチアの品種と系統の全体像

SANBIの変種picturataには、乾期に紫色を帯びて休眠する記述があります。ほかの変種や鉢栽培へ、その時期をそのまま当てはめないこと。外葉の変化を見るときも、中心の新葉、土の湿り、気温を一緒に確かめます。

春には株の中心から細い花茎がすっと立ち上がり、白い小花が開きます(扉の写真にも 1 本写っています)。咲いたときの見方はハオルチアの花の記事へ。

この記事でわかること
  • 窓と条線、毛の位置を写真で観察し、変種による姿の違いを楽しむ
  • 育て方は光と鉢の乾きから。特定の変種の自生地を全変種へ当てはめない
  • オブツーサはこの種の 13 変種の 1 つ。名前が合わないラベルの読み方
  • 84 の学名と、東ケープ州の自生地。データは後半にまとめて
見どころ → 育て方 → 見分け → 買い方 → データの順。急ぐ人は前半だけで足ります

写真から好みを見つけたら、ピリフェラを含む代表4変種の比較へ。その先の13変種の全リストでは、残る名前と資料の扱いも確認できます。

育て方 — 光と鉢の乾き、株の状態から

LIGHT 光 明るい間接光から。直前の置き場所を確かめて少しずつ慣らし、新しい葉の間隔と色を見る。
WATER 水 鉢の中の乾きと新しい葉を確認。生育が鈍い時期は控え、受け皿の滞水を避ける。
SOIL 用土 排水穴のある鉢と、水が抜ける用土を選ぶ。今の鉢で乾く速さを確かめ、用土と鉢の大きさを合わせる。
TEMPERATURE 温度 凍結を避ける。窓際や屋外では夜間の冷え方を確認し、株の変化と合わせて水やりを調整する。

管理の基本はSANBIのHaworthia属の園芸解説を参考に、手元の株と鉢で確かめます。変種picturataの降雨量・土壌・無霜の記録は、自生地の節で対象を分けて読めます。

ラクに育てる / こだわって育てる — クーペリーの場合
かんたん派 — 置き場所と乾きを確かめる
光
直前の置き場所を確かめ、明るい間接光から新葉の変化を見る
水
鉢の中の乾きと新葉を確認。生育が鈍い時期は控える
冬
凍結を避ける。夜の窓際など、置き場所の冷え方を確かめる
楽しみ方
新しい葉と全体の姿を、普段の置き場所で眺める
こだわり派 — 条線と新葉の変化を記録する
光
器具の照射時間、届く光、葉の近くの熱を記録する。育て方を見る →
水
水やりの日と鉢の重さを残し、乾く速さを比べる
用土・鉢
根の収まりと乾き方を記録し、用土と鉢を組み合わせて選ぶ
楽しみ方
同じ角度の写真を並べ、窓の条線と新葉の変化を比べる。道具の選び方へ →

SANBI が挙げる守るべき 3 つは、霜・過度の日射・過湿。日本の室内に読み替えると、冬に凍らせない、夏の直射に晒さない、鉢を蒸らさない。左の列はこれで足ります。増やすなら株分けが確実で、砂質の用土で湿らせておけば 3 週間で発根するとあります。病害には比較的強く、名前が挙がるのはアブラムシ・ナメクジ・カタツムリ。

用土・鉢・LED・棚は育成環境ガイド、株分けと葉挿しはハオルチアの増やし方、伸びて姿が崩れたら徒長の原因と直し方へ。

見分け — まず、毛がどこにあるかを見る

観察
尖った窓も、丸い窓も、同じ種の内側にある
掲載写真の同じ部位を比較
H. cooperiの掲載株。細長く尖る葉先。短い毛は縁に沿って並ぶ。
H. cooperiの掲載株細長く尖る葉先。短い毛は縁に沿って並ぶ。
var. truncata。丸い窓の中に、下から伸びる濃い脈が見える。
var. truncata丸い窓の中に、下から伸びる濃い脈が見える。詳しく見る →
var. venusta。葉の縁に加え、窓の面にも白い毛が広がる。
var. venusta葉の縁に加え、窓の面にも白い毛が広がる。詳しく見る →
葉先の輪郭を見てから、毛が縁と面のどちらにあるかを比べます。
3枚は掲載された株の観察例。尖葉の一株を親種全体の標準形にはしません。 写真は共通縮尺ではありません。
H. cooperiの掲載株:Photo: Agnieszka Kwiecień, Nova / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
var. truncata:Photo: Tariskal / CC0, via Wikimedia Commons
var. venusta:Photo: Abu Shawka / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
栽培でよく出会う 4 変種 — 「次に見る所」の表
オブツーサ VAR. TRUNCATA
葉
先が丸く截れて、大きな窓になる
名前
基になった名は H. obtusa f. truncata H.Jacobsen
次に見る所
葉先が截れているか、とがっているか。詳細は専用の頁へ
ピリフェラ VAR. PILIFERA
葉
とがった葉先。変種名 pilifera は「毛をもつ」の意
名前
Baker が 1 つの種として立てた名前(H. pilifera)が基
次に見る所
野生記録が 13 変種で最多(126 件)。掲載株の葉先と毛の位置を比べる
ベヌスタ VAR. VENUSTA
葉
面全体が細かい毛におおわれ、白っぽく見える
名前
C.L.Scott が種 H. venusta として発表 → 1999 年に変種へ
次に見る所
ふちだけに毛があるのか、面全体が毛におおわれているのか
グラキリス VAR. GRACILIS
葉
変種名 gracilis は「細い・華奢な」の意
名前
1929 年に von Poellnitz が立てた独立種が丸ごと変種になったもの
次に見る所
古いラベルでは H. gracilis のまま売られていることがある
見る場所
掲載した尖葉の株(H. cooperi)
var. truncata
(日本のオブツーサ)
葉先の形
とがる 丸く截れる
葉のふちの毛(ノギ)
並ぶ ほぼ無い
窓の見え方
細い条が縦に走る 面で大きく透ける
群れ方
密なマットになる 密なマットになる

左列は扉のKirstenbosch株と、見どころ・自生地の各節のクーペリー写真(Commons の掲載名は Haworthia cooperi)の所見、右列はオブツーサの頁の記述。写真の同定は撮影者と掲載カテゴリによる写真で見る

この表は答えではなく、次に何を見るかの表です。4 つは 13 変種のうち日本の売り場で名前を見かけるもので、残る 9 変種も同じ種の内側にあります。

この種で本当に効く見分けの軸は「毛がどこにあるか」。葉のふちにだけ短い毛(ノギ)が並ぶなら多くの変種に共通する姿、面全体が細かい毛でおおわれていればベヌスタの候補。葉先が丸く截れて縁がなめらかならオブツーサ(var. truncata)の候補に入ります。株を真上からでなく斜め横から見ると、この違いがよく見えます。

クーペリーか、シンビフォルミスか、レツーサか。種をまたぐ絞り込みは、上面・横顔・毛の位置を順に確かめる観察図をクーペリー系の見分け方(オブツーサ・シンビフォルミス・レツーサを 3 つの軸で分ける)に用意しています。見分け方の記事をまとめて探すなら見分け方ガイドの入口へ。

名前が絞りきれない株は珍しくありません。クーペリーとシンビフォルミスは自生地で分布が重なり、接するところでは姿が融合します。中間のような株は栽培で生まれた雑種とは限らず、自生地にも実際にいる。図鑑の写真とぴったり一致しなくても、それがこの属の普通です。

入手時の注意 — ラベルの学名が古いことがある

売り場で見かける表記現行の受理名(GBIF)読み方
Haworthia gracilisH. cooperi var. gracilis2002 年に変種へ。1929 年に立てられた独立種が丸ごと吸収された名残
Haworthia venustaH. cooperi var. venusta1999 年に変種へ。「ベヌスタ」はこの名前のカタカナ表記
Haworthia piliferaH. cooperi var. piliferaBaker が立てた古い種名。1999 年に変種へ
Haworthia tenera / H. isabellae / H. dielsiana / H. gordonianaそれぞれ H. cooperi の変種von Poellnitz が立てた種名。いずれも現行では変種扱い
Haworthia obtusa(オブツーサとして)H. cooperi var. truncata注意: 学名 H. obtusa Haw. の受理名は H. cymbiformis var. obtusa で、別系統を指す
林 / Breuer 由来の種名(H. arabesqua ほか)いずれかの変種のシノニム細分の立場では独立種。間違いではなく、採用する整理が違う
受理状況は GBIF Backbone(2026-08-10 照会)。売り場のラベルは、そのラベルが作られた時点の分類体系を保存していると考えるほうが実態に近い。

クーペリーを買うとき、まず戸惑うのは名前が一致しないこと。「グラキリス」「ベヌスタ」「ピリフェラ」「テネラ」は、今のところすべて同じ 1 つの種の内側の名前です。ラベルに独立種として書かれていても誤表示ではなく、そのラベルが作られた時点の体系を保存しているだけ。上の表を手元に置くと、同じ植物を別名で二重に買う事故を避けられます。

ひとつだけ、方向が逆になる注意。学名の Haworthia obtusa Haw. は GBIF ではシノニムで、受理名は H. cymbiformis var. obtusa、つまりシンビフォルミス側の名前です。日本で「オブツーサ」と呼ばれる株は H. cooperi var. truncata でクーペリー側。同じ音が学名の世界では別の場所を指す、この経路はオブツーサの頁で図解しています。

「紫」「水晶」のような園芸銘は、学名との対応をたどれないものが多く、学名と同列には扱えません。園芸銘の正式名は日本ハオルシア協会(ISHS が指定する ICRA)の登録名。名前の突き合わせはハオルチアの名前の対照表で。

基本情報 — 学名・自生地・耐寒性

クーペリーの基本データ Quick Spec
窓葉先の半透明部。丸みや条線、毛の位置を写真で観察する
葉先と毛丸い先・尖る先、毛の出る位置には変種による違いがある
色の観察例変種picturataには乾期の紫色の記載がある。ほかの変種の色や休眠時期は一律に扱わない
光明るい間接光から。直前の光環境を確かめ、急な強光を避ける
雨の季節資料なし(var. picturata の自生地は通年・春夏に多い・SANBI・2026-10-17 確認) → 雨の季節の表
水鉢の乾きと新葉の動きを確認し、生育が鈍い時期は控える。受け皿の滞水を避ける
冬凍結を避ける。夜の窓際など、置き場所の冷え方を確かめる
TAXONOMY / MEASURED 2026-08-10
3 属に分かれた旧ハオルチア属の、どこにいるか
3 属分割の根拠は Manning et al. 2014, Systematic Botany 39: 55-74(SANBI PlantZAfrica の属頁が明記)。クーペリーは分割後も Haworthia に残る側
学名データ
  • 学名 Haworthia cooperi Baker
  • 原記載 Refugium Botanicum(Saunders 編)図版 233
  • 発表年 GBIF は 1870、SANBI は 1871 と記す
  • 命名者 John Gilbert Baker(1834–1920)
  • 名前の由来 Thomas Cooper(1815–1913)への献名。1859 年に南アフリカへ渡った英国の植物学者
  • 科 ツルボラン科(Asphodelaceae)
  • 属の扱い Haworthia のまま(Haworthiopsis へは移っていない)
  • 受理変種 13(GBIF Backbone・SANBI ともに 13)
  • シノニム総数 種 + 13 変種の合計で 84
  • 英名 Bristle Haworthia(GBIF の一般名。bristle = 剛毛)
  • 生育環境 岩の棚・裂け目・崖。ただし多くの変種は崖に限られない
  • 草姿 小型。株元から仔を吹いて丸い塊になる
  • 開花 現地で春〜初夏(10〜11 月)・白い花変種頁の記述
  • 保全評価 IUCN では未評価(NOT EVALUATED / NE)
  • 流通名 クーペリー。変種はオブツーサ / ピリフェラ / ベヌスタ など

発表年だけが資料で割れています。GBIF が 1870、SANBI が 1871。分冊刊行の叢書ゆえ図版ごとの発行日が前後するため、両方を併記しています。

越冬温度は、この種に固有の数値が資料にありません。属全体の指針 3〜5℃ を下限に置き、冬の管理はハオルチアの越冬(耐寒性)へ。

13 の変種 — 受理された全リストと、名前の重さ

変種発表(GBIF 実測)基になった名前(バシオニム)シノニム野生記録
var. cooperi基本変種(種そのもの)—438
var. dielsiana (Poelln.) M.B.BayerHaworthia Revisited: 51(1999)H. dielsiana Poelln.434
var. doldii M.B.BayerHaworthiad 16: 65(2002)—(新変種として発表)24
var. gordoniana (Poelln.) M.B.BayerHaworthia Revisited: 52(1999)H. gordoniana Poelln.1167
var. gracilis (Poelln.) M.B.BayerHaworthiad 16: 64(2002)H. gracilis Poelln.438
var. isabellae (Poelln.) M.B.BayerHaworthiad 16: 65(2002)H. isabellae Poelln.1595
var. leightonii (G.G.Sm.) M.B.BayerHaworthia Handb.: 128(1976)H. leightonii G.G.Sm.317
var. picturata (M.B.Bayer) M.B.BayerHaworthiad 16: 65(2002)H. gracilis var. picturata M.B.Bayer319
var. pilifera (Baker) M.B.BayerHaworthia Revisited: 54(1999)H. pilifera Baker14126
var. tenera (Poelln.) M.B.BayerHaworthiad 16: 65(2002)H. tenera Poelln.1221
var. truncata (H.Jacobsen) M.B.Bayer
= 日本の「オブツーサ」
Haworthia Revisited: 55(1999)H. obtusa f. truncata H.Jacobsen24
var. venusta (C.L.Scott) M.B.Bayer
= ベヌスタ
Haworthia Revisited: 56(1999)H. venusta C.L.Scott23
var. viridis (M.B.Bayer) M.B.BayerHaworthiad 16: 65(2002)H. gracilis var. viridis M.B.Bayer79
合計——83475
変種名・発表・バシオニム・シノニム件数・野生記録件数は、いずれも GBIF Backbone(taxonKey 2780103 の children と各変種の synonyms)および GBIF Occurrence を 2026-08-10 に照会した実測値。「野生記録」は GBIF に集まった出現記録の件数(標本・観察・生体を含む)。種レベルのシノニム 1 件を加えるとシノニムは合計 84 件、種全体の出現記録は 548 件(うち 73 件は変種まで同定されていない)。

表の右 2 列を見てください。13 の変種は名前としては横並びですが、抱えている名前の数も、野生で記録されてきた回数もまるで違います。同じ「変種」のなかに、これだけの濃淡があります。

観察件数の内訳を読む
変種ごとの野生記録の多さ(GBIF 出現記録・2026-08-10 実測) FIG.01Records
var. pilifera126
var. isabellae95
var. gordoniana67
var. cooperi(基本変種)38
var. gracilis38
var. dielsiana34
var. tenera21
var. picturata19
var. leightonii17
var. viridis9
var. doldii4
var. truncata(オブツーサ)4
var. venusta(ベヌスタ)3

園芸の人気と野外で記録された量は、まったく別の話です。出現記録の 7 割以上は研究者が採集した植物標本で、栽培で殖やされて広まった株ほど記録に残りにくい。

合計行にはもうひとつ数字が隠れています。13 変種の記録を足すと 475 件、種全体では 548 件。差の 73 件(13%)は変種まで同定されていない記録です。研究者の標本ですら変種を確定できないものがこれだけある。ラベルに変種名の無い株は手抜きではなく、それだけ変種まで落とすのが難しい植物だということです。

発表年を見ると、13 変種は三度の波で組み上がっています。1976 年に 1 つ、1999 年に 5 つ、2002 年に 6 つ。いずれも Bruce Bayer の組み替えです。

名前の来歴 — 84 の学名と、丸ごと吸収された 1 つの種

名札の古い名前をたどるときに使う資料です。

学名・シノニムの詳しい記録を読む
クーペリーをめぐる名前の 4 期 — 記載 → 分割 → 整理 → 再分割 FIG.02Timeline
第 1 期 記載 Baker が Refugium Botanicum に図版で発表 Kuntze が Catevala 属へ移す試みも(現在はシノニム)
第 2 期 分割 von Poellnitz らが近い植物を次々と種として立てる H. gracilis / H. isabellae / H. tenera / H. gordoniana / H. dielsiana
第 3 期 整理 Bayer が cooperi の変種としてまとめ直す 1999 Haworthia Revisited → 2002 Haworthiad → 2012 Bayer & Manning
第 4 期 再分割 林・Breuer が細分の立場から多数の名前を発表 GBIF の現行整理ではその多くがシノニム扱い
記載 増える まとめる 概念図

クーペリーの名前の歴史は、増える力とまとめる力のせめぎ合いです。1870 年前後に Baker が記載したあと、20 世紀前半に Karl von Poellnitz らが、よく似た植物を H. gracilis(1929)、H. isabellae、H. tenera、H. gordoniana、H. dielsiana と次々に別の種として発表。それを Bruce Bayer が 1976・1999・2002 年の三度に分けて H. cooperi の変種としてまとめ直し、2012 年の Bayer & Manning(Alsterworthia International 12: 7–16)で対応が確定しました。

最大の出来事は Haworthia gracilis の吸収です。SANBI はこう書いています。「H. gracilis は現在 H. cooperi の変種として再分類され、H. gracilis のすべての変種も H. cooperi の変種として再分類された」。1 つの種がまるごと、変種 1 つ分の位置へ移されました。

この 1 種のなかで
受理される
名前
シノニムに
なった名前
うち 林 /
Breuer の名前
種 H. cooperi
1 1 —
13 の変種
13 83 42
合計
14 84 42

GBIF Backbone(2026-08-10 実測)。受理されている名前 14 に対して、シノニムは 84。そのシノニム84件の半数にあたる 42 件は、著者に 林(M.Hayashi)または Breuer を含む名前実測

「ハオルチアは何種あるのか」で見解が割れる現場が、この 1 種の中にあります。林雅彦氏は 546 種、Ingo Breuer 氏は 366 種、Bruce Bayer 氏は 60 種。クーペリーのシノニム 83 件のうち 42 件は、林氏または Breuer 氏が著者に入る名前で、細分の立場では独立種、GBIF の現行整理では変種のシノニムです。

どちらが正しいという話ではありません。細分派は産地ごとの差を名前として残そうとし、統合派は地理的な連続性を重く見て 1 つにまとめる。この頁は国際的な照合先である GBIF Backbone の受理状況で名前を並べているので、ラベルに H. venusta や H. gracilis とあっても間違いではなく、採用している整理が違うだけです。

自生地 — 変種picturataの崖と、ほかの変種の生育地

小さなロゼットが隙間なく密に集まった軟葉系ハオルチアのマットを真上から。葉先は細くとがり、葉のふちに短い毛(ノギ)が並ぶ。窓には縦方向の濃い条が入り、ところどころ薄紙のように枯れた葉先が混じる
クーペリーとして掲載された、子株が集まる群生株。Photo: Agnieszka Kwiecień, Nova / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

自生地は南アフリカの東ケープ州。座標付きの記録 326 件のうち 291 件がここに集まり、西ケープにも少数の記録があるので「東ケープが中心」が実態に合う言い方です。標高や気温の数値は var. picturata の生育地のもので、種全体の値ではありません。

南アフリカの座標付き記録 326 件の州別内訳 FIG.03分布
東ケープ州291 件
西ケープ州18 件
北ケープ州1 件
州名の記録なし16 件
HABITAT — var. picturata の生育地(SANBI)
変種picturata — グロートリヴィール水系の崖
地域
東ケープ州、Cape Fold Mountains のグロートリヴィール水系(Kouga 川・Baviaanskloof 川・Grootrivier)
標高
400〜1,000 m
岩質
南向きの石英質砂岩(Peninsula Formation)の崖。棚と裂け目が多く、根を差し込める
気温
夏は 35〜40℃ まで上がる。日平均の最高 約 27℃ / 最低 約 12℃。冬も霜は降りない
年降水量
300〜400 mm。春夏に山があり、雷雨または低気圧性の冬雨として降る
植生
Albany Thicket Biome の Gamtoos Thicket。同じ崖に Gasteria rawlinsonii や Crassula 各種が同居する
出典 = SANBI PlantZAfrica「Haworthia cooperi var. picturata」(Ernst van Jaarsveld & Alice Notten, 2022-02)。種全体ではなくこの変種の生育地の値

この表は変種picturataの自生地の記録です。南半球の南向きの崖、年300〜400mmの雨、無霜という条件から、その変種の生態を読み取れます。種全体の鉢栽培の数値や、日本の固定した断水時期には置き換えません。

SANBIは変種picturataについて、子株で群落を広げ、外れた頭が別の場所で根付く生態を紹介しています。ここに掲載した写真では、クーペリーとして記録された株の群生の形を観察できます。

近くには姿の似た別種もいます。クーペリーとシンビフォルミスは同じ東ケープ州に分布し、接するところでは姿が融合していく。一方レツーサ(寿)は西ケープ州リバースデール周辺の離れた場所にあり、自然に混ざる関係にはありません。この地理が、同定の難しさの根っこです。

まとめ

Summary
1 つの名前のなかに、13 の変種と 84 の学名が入っている
クーペリーは、窓のある軟葉系ハオルチア。掲載した尖葉の株では葉先と縁の毛、窓の細い条が見えますが、丸葉や毛の目立たない変種も含まれます。日本で人気のオブツーサはこの種の 13 変種の 1 つで、種の内側には 84 の学名が畳み込まれています。育て方は変種や直前の環境を確かめ、光と鉢の乾き、霜を避ける置き場所から。自生地は東ケープ州。
オブツーサは 13 分の 1オブツーサはクーペリーに含まれる変種として扱われる
人気 ≠ 野生記録truncata 4 件に対し pilifera 126 件
gracilis は丸ごと変種へ1 つの種が変種 1 つ分の位置に移された
自生地は東ケープ座標付き記録 326 件のうち 291 件
  • クーペリー Haworthia cooperi Baker は東ケープ州を中心に分布する軟葉系。英名 Bristle Haworthia(剛毛のハオルチア)に対応する、縁の毛が見える掲載株もある
  • 硬葉系の多くが Haworthiopsis へ、大型硬質群が Tulista へ移った後も、本種は Haworthia 属に残る
  • 受理変種は 13。オブツーサは var. truncata で、クーペリーとは親子の関係
  • シノニムは 84 件、うち 42 件は 林(M.Hayashi)/ Breuer の名前。種数の見解が割れる現場が、この 1 種の内側にある
  • 旧 Haworthia gracilis は Bayer & Manning(2012)で種ごと本種の変種へ
  • 自生地は東ケープ州(座標付き記録 326 件のうち 291 件)。標高・気温・降水量は var. picturata の生育地の値
  • 越冬は属の指針 3〜5℃ を切らせない。霜に当てないことが最優先
  • ほかの品種と見くらべるなら人気品種ランキングで他の品種を見るへ

FAQ

クーペリーとオブツーサは違う植物ですか?
別々の植物ではなく、親子です。日本で「オブツーサ」として流通する株は Haworthia cooperi var. truncata、クーペリーという 1 つの種の 13 変種のうちの 1 つにあたります。
クーペリーの変種はいくつありますか?
GBIF Backbone で受理されているのは 13 です(2026-08-10 照会)。SANBI も Bayer & Manning(2012)にもとづき 13 を挙げます。細分の立場をとる研究者は一部を独立種として扱うため、資料によって数字が変わります。
買った株のラベルに「Haworthia gracilis」と書いてあります。間違いですか?
間違いというより古い体系の名前です。Haworthia gracilis は 1929 年に立てられた独立種でしたが、Bayer & Manning(2012)で H. cooperi var. gracilis へ移されました。H. venusta・H. pilifera・H. tenera も同じです。
クーペリーの原産地はどこですか?
南アフリカの東ケープ州が中心です。GBIF の座標付き記録 326 件のうち東ケープ州が 291 件(89%)、西ケープ州 18 件、北ケープ州 1 件(2026-08-10 照会)。
何℃まで耐えられますか?
3〜5℃ を下回らせないのが実用の線です(ハオルチア属全体の指針)。SANBI が記すのは「自生地に霜は降りない」「霜・過度の日射・過湿から守る」で、種固有の数値はありません。
なぜ人気のオブツーサやベヌスタは野生記録が少ないのですか?
GBIF の出現記録は 7 割以上が植物標本(548 件中 390 件)で、栽培で殖やされて広まった株ほど記録に残りにくいからです。var. truncata 4 件、var. venusta 3 件に対し var. pilifera 126 件という差は、野生の多い少ないをそのまま表した数字ではありません。
写真を送れば変種を判定してもらえますか?
撮る向きを変えると、ご自分で絞り込めます。①葉のふちだけに毛があるか、面全体が毛におおわれているか ②葉先が截れているか、とがっているか ③株元から仔を吹いて群れているか。いずれも斜め横から撮ると見えます。
クーペリーは絶滅危惧種ですか?
IUCN のカテゴリは NOT EVALUATED(未評価)です。絶滅危惧でも安全でもなく、まだ評価されていないという意味。SANBI の「脅威にさらされていない」は var. picturata についての記述です。
道具はここに集約ハオルチアの育成環境と道具|置き場所から選ぶLED・土・鉢・棚 手元の株を絞り込むならクーペリー系の見分け方|オブツーサ・シンビフォルミス・レツーサを 3 つの軸で分ける 13 変種のうちの 1 つを深くオブツーサの育て方と見分け方|丸い窓と学名の関係を知る 関連記事ハオルチアの種類と選び方|窓・葉の形から比べる図鑑
出典
  • GBIF Backbone Taxonomy — Haworthia cooperi Baker(taxonKey 2780103・status ACCEPTED)。受理変種 13、種レベルのシノニム Catevala cooperi (Baker) Kuntze、各変種の書誌・バシオニム・シノニム 83 件、一般名 Bristle Haworthia、IUCN カテゴリ NOT_EVALUATED。2026-08-10 照会: gbif.org
  • GBIF Occurrence — 出現記録 548 件、南アフリカ 481 件、座標付き 326 件の州別内訳(東ケープ 291 / 西ケープ 18 / 北ケープ 1)、記録種別(標本 390 ほか)、変種別件数。2026-08-10 照会: gbif.org
  • IPNI(国際植物名索引)— Haworthia cooperi Baker の原記載書誌(Refug. Bot. [Saunders] t. 233)、命名者 John Gilbert Baker(1834–1920)、原記載の産地表記「Afr. austr.」、叢書の刊行年 1869–82: ipni.org
  • SANBI PlantZAfrica Haworthia cooperi var. picturata(Ernst van Jaarsveld & Alice Notten, 2022-02)— Thomas Cooper への献名、命名を 1871 年とする記述、受理変種 13(Bayer & Manning 2012)、H. gracilis の吸収、自生地(グロートリヴィール水系・標高 400〜1,000m・南向き石英質砂岩の崖・夏 35〜40℃・日平均 27/12℃・無霜・年降水量 300〜400mm)、形態・生態・栽培・繁殖: pza.sanbi.org
  • SANBI PlantZAfrica Haworthia 属 — 属の 3 分割(Manning et al. 2014, Systematic Botany 39: 55-74)、属名は Adrian Hardy Haworth への献名: pza.sanbi.org
  • iNaturalist — Haworthia cooperi(taxon 333713)の観察 477 件、うち栽培 302 件 / 野生 175 件 / research grade 140 件(2026-08-10 実測): inaturalist.org
  • Wikimedia Commons — Category:Haworthia cooperi(ファイル 30 件 + 変種のサブカテゴリ 7。各画像のライセンス版と作者は API で実測)
  • 本記事が引用した分類整理の一次文献: Bayer, M.B. & Manning, J.C. 2012. A rationalization of names in Haworthia. Alsterworthia International 12: 7–16 / Bayer, M.B. 1999. Haworthia Revisited. Umdaus Press(いずれも SANBI の参考文献欄に記載。当サイトは原典を直接参照していないため、記述は SANBI と GBIF の登録内容にもとづきます)
  • 画像は CC ライセンス画像(PD / CC0 / CC BY / CC BY-SA)のみを使用しています。各画像の作者・ライセンス・出典は 画像クレジット・出典一覧 に掲載しています
Field Note出典と確認日

学名・変種・シノニム・出現記録は GBIF Backbone / Occurrence を 2026-08-10 に照会した値。標高・気温・降水量は SANBI の var. picturata 頁の記述で、種全体の値ではありません(種としての PlantZAfrica 頁は存在しません)。写真の同定は Wikimedia Commons の投稿者と分類カテゴリによります。

画像クレジット

本記事の写真はすべて Wikimedia Commons の CC ライセンス画像(PD / CC0 / CC BY / CC BY-SA のみ採用・ND / NC は不採用)。写真ごとのライセンスは、各図の帰属に記載しています。
扉の写真: Photo: Abu Shawka / CC0, via Wikimedia Commons(帰属は任意)
本文中の観察・比較・自生地の写真の帰属は各 figure のキャプションに記載しています。サイト全体の画像出典は画像クレジットにまとめています。

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