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瑠璃殿(ハオルチオプシス・リミフォリア)横畝の正体・変種と型・自生地と保全ステータス

砂漠温室の火山礫の間に瑠璃殿(Haworthiopsis limifolia)として植えられた単株。濃緑の三角形の葉に横向きの畝が密に並び、中心から枯れた花茎が伸びる
温室の火山礫の間で瑠璃殿として植えられた株。Photo: spacebirdy / CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
SPECIMEN — HAWORTHIOPSIS LIMIFOLIA
瑠璃殿Haworthiopsis limifolia(旧 Haworthia limifolia)
系統硬葉系 自生地南アフリカ北東部・エスワティニ 見分けの鍵疣が連なる横畝

硬い三角形の葉を風車のように広げ、その葉面を横向きの畝(うね)が何本も走る多肉植物。指でなぞるとやすりのようにざらつくので、英語圏では fairy washboard(妖精の洗濯板)とも呼ばれます。日本での標準的な呼び名は「瑠璃殿(るりでん)」で、園芸店やオークションでは「リミフォリア」のカタカナ表記のほうをよく見かけます。

この記事は、その手触りの正体を構造から説明するところから始めます。あのざらつきは白い粒が散っているのではなく、粒(疣)が横方向につながって稜になったもの——十二の巻やアテヌアータの「点が並ぶ」白い模様とは、成り立ちが違います。そのうえで、南アフリカ北東部からエスワティニにかけての自生地、南アフリカのレッドリストが本種を危急種としている理由、受理されている 5 つの変種と流通で使われる型名までを、出典を示しながら整理します。

系統ごとの位置づけから確認したい方は、ハオルチアの品種と系統の全体像が入口です。

この記事でわかること
  • 葉面のざらつきの正体が疣が横方向に連なって稜になったもので、点のまま並ぶ白疣とは成り立ちが違うこと
  • 自生地が南アフリカ北東部からエスワティニの標高 300〜800m の草地で、小石や草株に紛れて生えていること
  • 安く買える普及種でありながら、野生では危急(VU) — 薬用取引と野採で過去 60 年に 30% 超が失われたと推定されていること
  • 受理されている変種は 5 つで、「瑠璃殿錦」や f. striata は別の層の呼び名だということ
出典つきで整理した図鑑です — 品種は「候補」と「次に見る所」まで示します

名前が 3 つある — 瑠璃殿・琉璃殿・リミフォリア

同じ植物に乗っている 3 つの呼び名 FIG.01Three names
日本の流通・図鑑
瑠璃殿(るりでん)
日本語の多肉図鑑データベースの見出しがこの表記。オークションの落札タイトルも「瑠璃殿錦」「瑠璃殿白斑」で、別名として「ルリデン」「リミフォリア」が併記される … 当サイトはこれを主表記にします
中文圏
琉璃殿
「瑠」ではなく「琉」の字を使う表記。Wikimedia Commons には台湾の撮影者が「琉璃殿 Haworthia limifolia」というファイル名で投稿した写真が実在する … 下の 1 枚がそれです
学名・カタカナ流通名
limifolia / リミフォリア
SNS とオークションではカタカナの「リミフォリア」が主流。学名の種小名 limifolia は「やすり(limes)のような葉(folia)」の意味で、硬くざらついた葉に由来する(SANBI)

どの表記が正しいかを裁定することはせず、実際に使われている表記を並べて示します

この植物には、日本語圏だけでも 2 通りの漢字表記があります。ひとつは「瑠璃殿」、もうひとつは「琉璃殿」。どちらもインターネット上で実際に使われていて、当サイトが調べたかぎり、一方が誤りだと断定できる根拠は見つかりませんでした。

ただし日本語圏で優勢なのは「瑠璃殿」のほうです。日本語の多肉植物図鑑データベースは見出しを「瑠璃殿 Haworthia limifolia」とし、別名に「リミフォリア」「ルリデン」「瑠璃殿白斑」を並べています。オークションの落札履歴を見ても、この植物に付いていた商品名は「瑠璃殿錦(白斑)」「ハオルチア、瑠璃殿白斑」でした。そこで当サイトは「瑠璃殿」を主表記とし、「琉璃殿」は中文圏で使われる表記として併記します。

「琉璃殿」表記が実在することは、写真そのもので確かめられます。

幅広い三角形の葉が平たいロゼットを作る株の接写。白い粒状の疣が横方向に並び、葉先寄りでは隣どうしがつながって短い線になっている
台湾で撮影された株。Wikimedia Commons 上のファイル名が「琉璃殿 Haworthia limifolia – panoramio.jpg」で、中文圏の表記が実際に使われている一例です。白い粒(疣)が横方向に並び、葉先寄りでは隣どうしがつながって短い線になっているのが見えます。Photo: lienyuan lee / CC BY 3.0, via Wikimedia Commons

英語圏と現地にも、それぞれの名前があります。英国王立園芸協会(RHS)は英名を fairy washboard(妖精の洗濯板)、南アフリカ国立生物多様性研究所(SANBI)は file-leaf haworthiopsis(やすり葉のハオルチオプシス)としています。どちらも、あの横畝の手触りをそのまま名前にしたものです。

そして自生地の南アフリカ・クワズール-ナタール州では、ズールー語で isihlalakahleumathithibala(または omathithibala)と呼ばれます。この名前は園芸の話ではなく、後の節で触れる伝統医療と護符の文脈に直結しています。

基本情報 — 学名・自生地・耐寒性

Haworthiopsis limifolia 基本データ
QUICK SPEC
学名
Haworthiopsis limifolia (Marloth) G.D.Rowley
旧学名(基礎異名)
Haworthia limifolia Marloth (1910)
初出
Alsterworthia Int., Special Issue 10: 4 (2013)
ツルボラン科 Asphodelaceae
系統
硬葉系(Haworthiopsis 属)
和名
瑠璃殿(別名 ルリデン / リミフォリア)
英名
fairy washboard / file-leaf haworthiopsis
ズールー語名
isihlalakahle / umathithibala
自生地
南アフリカ(クワズール-ナタール北部・ムプマランガ)/ エスワティニ
標高
300〜800 m
年降水量
およそ 800〜1,400 mm
長さ 30〜100mm / 幅 20〜40mm / 厚さ最大 6mm
ロゼット
無茎・葉 12〜30 枚・風車のような姿
株の大きさ
高さ・幅とも 0.1〜0.5m(RHS)
葉面
隆起した疣が横方向に連なった稜
筒状・二唇形・白〜ピンク / 花茎は最大 200mm
開花期
主に冬(SANBI)/ 夏(RHS)出典で差
耐寒性
RHS H2(1〜5℃)ほか、出典で割れる要確認
保全
危急 VU(南アフリカのレッドリスト)
下位分類
受理された変種は 5 つ

学名と自生地は出典で確定できますが、越冬温度だけは出典どうしが割れます。この節は、確かめられることと確かめられないことを分けて置くための表です。

学名。現在の受容名は Haworthiopsis limifolia (Marloth) G.D.Rowley で、2013 年の Alsterworthia International 特別号 10 号 4 頁が初出です。もとになった名前(基礎異名)は Marloth による Haworthia limifolia。園芸の場で今も広く使われる Haworthia limifolia は、この種の旧学名にあたります。どちらの表記も同じ植物を指します。属名 Haworthiopsis は「Haworthia のような見かけ(-opsis)」の意で、種小名 limifolia は「やすりのような葉」を意味します(SANBI)。

自生地。南部アフリカの東側に限られます。SANBI が挙げるのは、南アフリカ クワズール-ナタール州北部の Vryheid・Louwsberg・Mtubatuba・Pongola、ムプマランガ州の Hectorspruit・Barberton、そしてエスワティニの Lebombo 山地。標高は 300〜800m、年降水量はおよそ 800〜1,400mm で、夏は高温多湿・冬は寒いという気候です。乾燥地の植物という印象からは少しずれる数字かもしれません。

耐寒性は、ここが正直に書きにくい項目です。3 つの出典を並べると、次のように割れます。

  • RHS(英国王立園芸協会) — 耐寒性区分 H2。「低温には耐えるが、凍結には耐えない(1〜5℃)」
  • SANBI(南アフリカ国立生物多様性研究所) — 数値なし。「霜のない乾燥した地域なら育つ」という趣旨の記述にとどまる
  • 日本語の多肉図鑑データベース — 耐寒温度 -5℃。ただし同サイトは免責で「『正しさ』よりも『楽しさ』が基本方針」と自ら明示しており、公的機関のデータと同列には扱えません

実用上は「最低でも 3〜5℃ を下回らない場所へ取り込む」を目安にし、種固有の正確な値は「要確認」のまま扱います(この目安の根拠はハオルチアの越冬(耐寒性)にまとめています)。凍結に耐えないという点は、RHS と SANBI で方向が一致しています。

横畝の正体 — 疣が連なって稜になる

畝(隆条)ができるまで — 点が線になり、線が稜になる FIG.02How the ridge forms
STEP 1
疣が点として立つ
葉の表面に硬い突起(疣)が盛り上がる。この段階では白い粒が散っているように見え、十二の巻やアテヌアータの白点と区別しにくい
STEP 2
隣どうしが癒合して短い線になる
横に並んだ疣が接し、2〜3 個ずつつながって短い線分になる。同じ株でも、葉ごと・場所ごとにこの段階で止まっているところがある
STEP 3
葉を横切る 1 本の稜になる
線分がつながって葉幅を横断する畝になる。ここまで来ると粒には見えず、葉と同色の高まりが何本も走る「洗濯板」の姿になる

SANBI の記載「隆起した疣が横方向に連なった稜(transverse ridges of raised tubercles)」を、当サイトが 3 段階の模式に開いたものです。実際の株では 3 つの段階が同じ葉の上に混在します

瑠璃殿のざらつきは、「白い粒が散っている」のではなく「粒が横につながって稜になった」ものです。SANBI は葉面を「隆起した疣が横方向に連なった稜」と記述しています。粒(疣)が主役なのは同じでも、それが列をなして癒合し、1 本の畝になるところがこの種の特徴です。

この違いは、実物の写真で確かめられます。同じ株のなかに「点のままの疣」と「つながって畝になった疣」が同時に写っている 1 枚があります。

瑠璃殿として植物園で栽培される株の葉面。手前の葉では丸い疣が点として並び、上の葉ではその疣がつながって横向きの畝になっている
植物園で瑠璃殿として栽培される株。手前の葉では疣が点として並び、その上の葉では疣がつながって横向きの畝になっています。名札には Haworthiopsis limifolia (Marloth) G.D.Rowley と読めます。Photo: Ji-Elle / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

1 枚のなかに、FIG.02 の STEP 1 と STEP 3 が同居しています。点のまま残っている疣と、癒合して稜になった疣。これが同じ株で起きるということは、「粒か、線か」は種を分ける絶対的な境目ではないことも同時に意味します。

見え方の幅は、もう少し広く取っておいたほうが安全です。疣の頂部が白く目立ち、粒が横列に並んで一部だけ短い線になっている個体もあります。

瑠璃殿として栽培される株を近くから見たところ。葉の表面で白い疣が横一列に並び、ところどころ隣どうしがつながって短い線になっている
疣の頂部が白く目立つ個体。粒が横一列に並び、ところどころで隣どうしがつながっています。同じ種として記録されていても、稜が葉と同色で連続する株(冒頭のプレート)とは見え方がかなり違います。Photo: Abu Shawka / CC0, via Wikimedia Commons(帰属は任意)

ここまでを整理すると、葉面の見え方は 2 群に分かれます。ひとつは稜が葉と同色のまま連続する群、もうひとつは疣の頂部が白く粒立って見える群。当サイトが集めた写真の範囲では、どちらも「瑠璃殿として記録された株」です。栽培条件による差なのか、変種や型の差なのかは、写真からは決められません。

それでも、近縁の硬葉系と分ける手がかりにはなります。十二の巻(Haworthiopsis fasciata)やアテヌアータの白い模様は、疣が点のまま横に並んで帯を作るもので、癒合して葉幅を横断する稜にはなりません。手元の株の葉面をなぞって、指に引っかかるのが「粒の列」なのか「1 本の畝」なのかを確かめるのが、いちばん素直な見方です。2 種の見分けそのものは十二の巻とそっくりなアテヌアータの違いで扱っています。もっと紛らわしいのは、面に格子状の線を見せる竜鱗(テッセラータ)です。竜鱗の線は盛り上がらないため、斜めから光を当てても影ができません。指でなぞって隆起を感じるかどうかが、いちばん確実な切り分けになります。

ただし、これ 1 つで種を決めることはできません。畝の連続性は候補を絞る手がかりのひとつであり、次に見るべきは葉の形(幅広い三角形か、細長いか)、ロゼットの平たさ、そして産地や採集地の記録があるかどうかです。

同じ硬葉系でも、白疣が点のまま並ぶアテヌアータ(松の雪)白疣が縦の列に並ぶレインワルディ(九輪塔)、三角の葉が三列に積み上がるビスコーサと並べると、畝の性格の違いがはっきりします。

自生地 — 草と小石に紛れて生きている

分布 — 南アフリカ北東部からエスワティニへ FIG.03Range
南アフリカ クワズール-ナタール州 北部 Vryheid / Louwsberg / Mtubatuba / Pongola … iNaturalist の野生観察もこの一帯(Zululand・Umkhanyakude)に集中している
南アフリカ ムプマランガ州 Hectorspruit / Barberton … 分布の内陸側
エスワティニ Lebombo 山地 国境沿いの山地帯。SANBI によれば var. ubomboensis はエスワティニの 1 地点でのみ記録されており、南アフリカのレッドリスト対象群には含まれない(var. ubomboensis についての記述)
標高 300〜800m / 年降水量 およそ 800〜1,400mm / 丘や尾根の頂部の草地 / 斜面は北西向きを好む 概念図

瑠璃殿の野生の姿は、「乾いた岩山に堂々と生える多肉」ではありません。SANBI の記述によれば、丘や尾根の頂部にひらけた草地で、小石や草株のあいだに紛れる(camouflaged)ように生えています。斜面では北西向きの面、あるいは Ubombo 山地の頂部を好むとされます。

山の上部では、散らばった石や岩が株を守り、別の岩が部分的に覆いかぶさって日陰を作っていることも多いといいます。標高の高い場所では霧帯の縁に生え、その余分な湿気のせいで低地の個体とわずかに姿が違うとも記されています。「同じ種でも産地で見え方が振れる」ことの、出典側からの裏づけです。

ZULULAND野生・研究者評価あり
南アフリカ ズールーランドの岩礫地で、イネ科の草の間に点在する複数の株。外側の古い葉は白く枯れて縮れている
岩礫地に点在する群
草の間に散らばる外葉は枯れて縮れる単独ではなく点在
ZULULAND野生・研究者評価あり
南アフリカ ズールーランドの薄い頁岩が割れた地面で、イネ科の草株の根もとに収まった 1 株。葉に横向きの畝が並ぶ
草株の根もとに収まる
割れた頁岩の薄い土草が日陰を作る畝が明瞭
ZULULAND野生・研究者評価あり
赤い土と枯れ草の間に生える株を真上から見たところ。葉に横向きの細かい畝が並び、ロゼットの中心が締まっている
赤土の上の締まったロゼット
中心が締まる葉は短く厚い枯れ草に埋もれる

3 枚に共通しているのは、株が「単独で目立っていない」ことです。いずれもクワズール-ナタール州ズールーランドで撮影され、市民科学プラットフォーム iNaturalist で複数の同定者による評価が付いた観察(research grade)として記録されています。栽培株ではありません。

鉢で育った株を見慣れていると意外ですが、野生では外側の古い葉が白く枯れて縮れているのが普通です。地面は割れた頁岩の薄い土で、周りのイネ科の草が日陰を作っています。SANBI が書く「小石と草株のあいだ」がそのまま写っている、と言っていい光景でしょう。

もっと引いて撮ると、どこにいるのか探すのに時間がかかります。

南アフリカの草地を引いて撮った写真。画面中央に小さな株が 1 つ埋もれており、周囲の草や低木に紛れてほとんど目立たない
同じくズールーランドの草地。画面のなかに株はありますが、周囲の草と低木に紛れてほとんど目立ちません。SANBI が記す「小石と草株のあいだに紛れる」という記述を、そのまま写した 1 枚です。Photo: Tony Rebelo / CC BY-SA 4.0, via iNaturalist

この 1 枚は、当サイトが同定を断定しない理由そのものです。野生では株が周囲に溶け込んでいて、写真からは葉面の畝も、ロゼットの形も読み取れません。「どこで撮られたか」という情報が付いて初めて、候補を絞る作業が始まります。逆に言えば、産地の記録がない栽培株の写真 1 枚では、種の下の階層まで決めることはできません。

保全 — 安く買える普及種が、野生では危急種

評価
危急 Vulnerable (VU)
評価機関
南アフリカのレッドリスト(SANBI)
推定される減少
過去 60 年でおよそ 30%成株の持ち去りによる
脅威 1
薬用植物取引のための採取(最も好まれる mathithibala 種)
脅威 2
多肉コレクターによる野生の成株の採取
脅威 3
都市・工業開発による生育地の破壊
脅威 4
過放牧 / 外来侵入植物との競合
保護区内の扱い
保護された場所であっても長期的な存続は保証されていないSANBI の明記
伝統利用
葉・根・株全体を伝統医療に。台所の戸口や玄関の柱に吊して魔除けにする

数百円で買える普及種が、原産地では危急種に置かれています。南アフリカのレッドリストは本種を Vulnerable(VU)と評価しました。理由として書かれているのは、薬用植物としての需要です。

SANBI によれば、瑠璃殿は薬用植物市場で mathithibala として最も好まれる種で、代替になる種が存在し、治療師や業者による栽培も行われているにもかかわらず、野生株の需要が続いています。その結果、南アフリカとエスワティニで大量の成株が野生から持ち去られ、過去 60 年でおよそ 30% を超える減少が推定されているとのことです。

用途は、日本の園芸文脈からは想像しにくいものです。葉・根・株全体が、不妊・傷・血の浄化・咳・発疹・日焼け・熱傷・胃腸の不調に用いられてきました。植物抽出物に抗菌・抗真菌・抗炎症・抗酸化・創傷治癒などの活性が認められたとする研究があることも、SANBI は紹介しています(本記事は効能を推奨するものではありません)。

さらにクワズール-ナタールでは、古い容器や鉢に植えて台所の戸口の軒から吊すか、玄関の柱に置き、悪霊・雷・嵐から家を守る護符とする習慣があります。ズールー語名 umathithibala はこの文脈の名前です。

この落差は、覚えておく価値があります。園芸店で売られている株は栽培下で殖やされたものであり、購入が直接この評価に影響するわけではありません。それでも、「どこにでもある丈夫な多肉」という店頭の印象と、原産地での実像が同じでないことは、図鑑としてきちんと書いておくべき事実だと考えています。

なお、分布については出典によって記述が違います。植物園の名札には、SANBI が挙げていない国名が書かれていることがあります。

植物園の砂利床に瑠璃殿として植えられた濃緑の群生と、学名と産地を記した黒い名札
米国アトランタの植物園に瑠璃殿として植えられた群生。名札には産地として「Mozambique, South Africa: Northern Province to Kwazulu-Natal」と書かれています。SANBI はモザンビークを分布に挙げておらず、分布の北端は当サイトでは確定できません(要確認)。ここでは「植物園の名札にはこう書かれている」という事実として掲載しています。Photo: Daderot / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

変種と型 — 受理された 5 変種と、流通の呼び名

名前が乗っている 3 つの層 — 混ぜずに分ける
受理された変種 学術の層
5 つ
内訳
var. limifolia / arcana / gigantea / glaucophylla / ubomboensis
確認先
GBIF・SANBI(いずれも 5 で一致)
流通の型名 園芸の層
扱い
分類学上の階級ではない
f. striata / f. spiralis / variegata(瑠璃殿錦)/ 白斑 / ニグラ
登録先
園芸品種名は日本ハオルシア協会(ICRA)
受理されていない名 過去の層
var. striata (1983) / diploidea (1940) / stolonifera (1943) / koelmaniorum (1997)
状況
IPNI に発表記録は残るが GBIF は受理していない
当サイトの扱い
どちらが正しいとは断定しない

受理されている変種は 5 つで、流通で見かける型名はそれとは別の層にあります。GBIF の分類データベースが本種の下位分類として返すのは、var. limifolia(基準変種)・var. arcana・var. gigantea・var. glaucophylla・var. ubomboensis の 5 つ。SANBI も「5 つの変種が認められている」と記しており、両者は一致しています。

いっぽう「f. striata」「f. spiralis」「瑠璃殿錦(variegata)」「白斑」「ニグラ」といった呼び名は、分類学上の階級ではありません。これらは栽培と流通のなかで使われている型名です。園芸品種名の正式な登録先は日本ハオルシア協会(ICRA)で、硬葉系の Haworthiopsis もその対象範囲に含まれます。

まず、変種の名前で記録されている株を 3 つ並べます。

var. gigantea野生・研究者評価あり
南アフリカ クワズール-ナタール州の草地で、岩に寄り添って育つ株。明るい緑の三角形の葉に波打つ横向きの畝が並ぶ
var. gigantea として同定
自生地の岩際畝が波打つ複数の同定者が評価
var. ubomboensis栽培株・ラベル準拠
素焼き鉢に植えられた淡い黄緑の株を真上から見たところ。葉の表面は滑らかで畝がほとんど無く、名札に limifolia ubomboensis と読める文字がある
var. ubomboensis のラベル
葉面が滑らか淡い黄緑第三者の同定なし
var. arcana栽培株・ラベル準拠
鉢に植えられた濃緑の株を真上から見たところ。葉の表面はおおむね滑らかで、疣は葉の縁寄りにまばらに並ぶ
var. arcana のラベル
濃緑疣は縁寄り第三者の同定なし

3 枚は、記録の質が同じではありません。いちばん左の var. gigantea は南アフリカ クワズール-ナタール州の自生地で撮影され、iNaturalist で複数の同定者の評価を経た観察として記録されています。

いっぽう中央と右の 2 枚は、いずれもウクライナ キーウの栽培下で撮影された鉢株で、投稿者以外の同定が付いていません。名札に書かれた名前をそのまま掲載しているにすぎず、当サイトが確認できるのは「そのラベルで栽培されている」という事実までです。この 2 枚を根拠に、var. ubomboensis や var. arcana の定義的な特徴を語ることはできません。

それを承知したうえで写真を見ると、どちらも葉面が滑らかで、畝がほとんど立っていません。冒頭のプレートのような密な畝とは、ずいぶん印象が違います。「同じ種の下でこれだけ振れうる」という参考として見ていただくのが適切です。

次に、流通の型名で栽培されている株を 3 つ並べます。いずれも撮影者の手書き名札に基づく掲載です。

f. striata栽培株・手書き名札
素焼き鉢で栽培される株。葉面に白い条と粒が密に並び、手書きの名札に f. striata と読める文字がある
f. striata のラベル
白い条が密粒立ちが強い分類の階級ではない
f. spiralis栽培株・手書き名札
素焼き鉢で栽培される株を真上から見たところ。葉が強くねじれて渦を巻き、葉面には横向きの畝が並ぶ。手書きの名札に f. spiralis と読める文字がある
f. spiralis のラベル
葉が強くねじれる渦を巻く配列分類の階級ではない
variegata栽培株・手書き名札
斑入りの株が素焼き鉢に植えられ、長い花茎に淡いピンクの筒状花をつけている。手書きの名札に limifolia variegata と読める文字がある
variegata =「瑠璃殿錦」
クリーム色の斑花茎に淡桃の花流通の高値帯

右端の斑入り株が、日本で「瑠璃殿錦」と呼ばれているものです。葉にクリーム色の斑が入り、園芸ネット等の小売でも常設商品になっています。日本のオークションでは「瑠璃殿錦」「瑠璃殿白斑」の名で出品され、後の節で見るように価格帯の上側を占めます。

f. striata は白い条が密に入る型、f. spiralis は葉が強くねじれて渦を巻く型です。「f.」は品種(forma)を意味する記号ですが、この 2 つは GBIF に受理された名前ではありません。栽培者のあいだで通じる呼び名として扱うのが正確です。

ややこしいのは、「発表されたことはあるが、いまは受理されていない」名前が混じっていることです。たとえば Haworthia limifolia var. striata は Pilbeam が 1983 年に発表した名前として国際植物名索引(IPNI)に記録が残っています。同じように var. diploidea(1940)・var. stolonifera(1943)・var. koelmaniorum(1997)といった名前も過去に発表されました。これらは「存在しない名前」ではなく、「発表されたが現行の分類では受理されていない名前」です。

英語版の資料には var. keithii・var. striata を含めて 8 変種とするものもありますが、GBIF が受理しているのは 5 つだけです。当サイトはどちらが正しいと裁定せず、「流通では使われているが、現行の受理分類には無い名前がある」という状態のまま示します。

名前の来歴 — 1910 年から Haworthiopsis まで

NAME HISTORY / 1910 → 2013
名前が移ってきた道すじ
1910 — 記載MARLOTH
Haworthia limifolia MarlothTrans. Roy. Soc. South Africa 1: 409 — この名前が基礎異名(basionym)になる
1962 / 2001 / 2003 — 変種の発表BAYER / SMITH & CROUCH
var. gigantea (1962) / var. arcana (2001) / var. glaucophylla (2003)いずれも現在も受理されている
2013 — 3 属への分割ROWLEY
Haworthiopsis limifolia (Marloth) G.D.RowleyAlsterworthia Int., Special Issue 10: 4 — 硬葉系が Haworthiopsis へ
現在GBIF / SANBI
受理される変種は 5 つvar. limifolia / arcana / gigantea / glaucophylla / ubomboensis
属名の意味
Haworthiopsis =「Haworthia のような見かけ(-opsis)」
種小名の意味
limifolia =「やすり(limes)のような葉(folia)」畝の手触りに由来
種数の見解
546 / Breuer 366 / Bayer 60見解が分かれる
園芸銘の登録
日本ハオルシア協会(ICRA・2014 年指定 / 登録官 Dr Hayashi Masahiko)
対象属
Haworthia(Haworthiopsis・Tulista を含む)・Astroloba・Chortolirion とその交配

この植物は、記載されたときは Haworthia でした。1910 年、Marloth が南アフリカ王立協会紀要(Trans. Roy. Soc. South Africa 1: 409)で Haworthia limifolia として記載し、その名前が現在の学名の基礎異名(basionym)になっています。2013 年、Rowley が硬葉系のグループを Haworthiopsis 属として分けたことで、現在の Haworthiopsis limifolia (Marloth) G.D.Rowley になりました。1 世紀のあいだに属が動いた植物です。

この再分類は瑠璃殿だけの話ではなく、硬葉系ハオルチア全体に及ぶものです。十二の巻・アテヌアータ・鷹の爪なども同じタイミングで属が移りました。分割の経緯そのものは十二の巻とアテヌアータの記事で扱っているので、ここでは瑠璃殿に関わる範囲だけを押さえます。要点は 2 つ——旧名 Haworthia limifolia も現行名 Haworthiopsis limifolia も同じ植物を指すこと、そして園芸の場では旧名の表記が今も広く流通していることです。

ハオルチアの「種の数」については、専門家の見解が大きく分かれます。林による 546 種、Breuer による 366 種、Bayer による 60 種。同じ植物群を見ていて、10 倍近い開きがあります。当サイトは特定の説を採らず、必要な場面ではこの 3 見解を併記します。

園芸品種名(銘)の正式な登録先は、日本ハオルシア協会です。国際園芸学会(ISHS)の国際栽培品種登録機関(ICRA)一覧によれば、同協会は 2014 年に指定され、対象は Haworthia(HaworthiopsisTulista を含む)・AstrolobaChortolirion とその交配で、これらを 1 つの名称群として扱うとされています。「瑠璃殿錦」「雪冠殿」といった銘の出どころを確かめたいときは、この協会の記録に辿れるかどうかが基準になります。和名・学名・流通名の対応は名前の対照表から引けます。

名札の情報が役に立つ場面もあります。植物園の展示では、学名と産地が並記されていることがあります。

瑠璃殿として植物園に植えられた株の全体。三角形の葉が平たいロゼットを作り、葉の表面に横向きの畝が走る。手前に学名を記した名札がある
フランスの植物園で瑠璃殿として植えられた株。三角形の葉が平たいロゼットを作り、名札には学名と、産地として「S. Mozambique à N.E. Afrique du Sud」(モザンビーク南部から南アフリカ北東部)と読める記載があります。これも植物園の名札であり、SANBI の記述とは範囲が異なります。Photo: Ji-Elle / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

育て方の要点 — 光の推奨が、出典で正反対に近い

LIGHT
明るい日陰から慣らす
SANBI は「半日陰。大型多肉の下や岩の間。直射で葉焼けし、白や黄に変色する」。いっぽう RHS は栽培位置を「full sun」とする … 出典が真逆に近いので、当サイトは安全側を採る
WATER & SOIL
過湿に弱い・砂質で排水よく
SANBI は「乾燥に強く過湿に弱い。過湿や滞水で立枯れ(damping off)が起きる」。用土は排水良好・砂質で有機質を多めに … 現地の推奨は川砂と堆肥を 1:1
WINTER
凍らせない
RHS は H2(1〜5℃)、SANBI は「霜のない地域なら育つ」 … 目安は 3〜5℃ を下回らない室内へ。種固有の値は要確認

この種で注意がいるのは、光の推奨が出典で真逆に近いことです。SANBI は「半日陰で最もよく育つ」とし、「直射日光は葉焼けを起こし、葉が白や黄色に変わることがある」と明記します。いっぽう RHS は栽培位置を full sun(日なた)。自生地でも株は草や岩の陰に守られていたので、明るい日陰から始めて、様子を見ながら光を強くしていくのが実用の線です。株がゆるんできたときの見分け方は徒長の記事で扱っています。

水と用土は、出典どうしが素直に噛み合います。SANBI は「乾燥には強いが、過湿に弱い」とし、水のやりすぎや滞水で立枯れ(damping off)が起きうると書いています。現地の実務では川砂と堆肥を 1:1。一般的な考え方はハオルチアの育て方にまとめました。なお RHS によれば、成熟までにかかる期間は 2〜5 年です。

光の量は、株の色に出ます。

瑠璃殿として鉢植えにされた株を斜め上から見たところ。葉の外側が赤茶色に染まり、横向きの畝と葉縁の細かい鋸歯が目立つ
インドで瑠璃殿として鉢植えにされた株。葉の外側が赤茶色に染まっています。横向きの畝と、葉縁の細かい鋸歯もよく見えます。SANBI は直射で葉が白や黄に変色すると記しており、色づきは光が強いことの合図として読めます(色の変化そのものが病気を意味するわけではありません)。Photo: Yercaud-elango / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

増やし方と花 — 子株・葉挿し・種子

OFFSETS庭植えの親株
庭の地面に植えられた株。親株の周りに小さな子株がいくつも出ており、中心から長い花茎が伸びている
親株の周りに出た子株
基部から自然に出る花茎も同時に伸びる扱える大きさで外す
CLUMP大鉢の群生
瑠璃殿として栽培され、大きな鉢いっぱいに子株が増えて密生した株。どの株も葉に横向きの畝が並ぶ
鉢いっぱいの群生
最大 20 ロゼット横に増える株分けの適期は春〜夏
FLOWER STEM室内の鉢
室内の鉢で瑠璃殿として育てられている株を真上から見たところ。細長い三角形の葉が渦を巻くように並び、中心から花茎が伸び始めている
中心から出はじめた花茎
ロゼットの中心から室内でも上がる葉は渦を巻く配列

瑠璃殿は、子株でよく増えます。SANBI によれば、基部から自然に吸枝を出して最大 20 ロゼットの塊になります。増やし方は 3 通り——株分け(子株)・葉挿し・種子です。

株分けがいちばん確実です。母株の周りに出た子株が扱える大きさになったら、春から夏のあいだに外します。ポイントは外してすぐ植えないことで、1〜2 日乾かしてから、川砂とバークを混ぜた排水のよい用土に植えると SANBI は書いています。

葉挿しもできます。葉を株からそっとねじって外し、数日乾かして切り口にカルス(治癒組織)を作ってから、湿った砂に挿します。硬葉系は軟葉系より葉が厚く硬いぶん、乾かす手順を省かないほうが安全です。

種子には強い制約があります。SANBI が引く実務では、春に播いて薄く覆土し、ミストベッドで底面を 25℃ に保てば 5〜10 日で発芽し、1 か月ほどで葉が出てきます。ただしこの種の種子は乾燥に弱く(recalcitrant)、3 週間で発芽力が大きく落ちるため、蒴果が麦わら色になって裂け始めたらすぐ播く必要があります。手で蒴果を割って種子を出し、工程を早めることもできるとのことです。

花は、細い針金のような花茎に咲きます。SANBI の記載では、ロゼットの中心から最大 200mm の花茎が立ち、白からピンクの筒状で先が 2 つに割れる二唇形の小さな花をまばらに付けます。開花期については「一年中咲きうるが主に冬」(SANBI)と「夏」(RHS)で記述が食い違うため、両方を併記します。

細長い花茎に、淡いクリーム色に褐色の筋が入った二唇形の小さな花がまばらにつく。株本体は写っていない
花序のみを写した 1 枚。淡いクリーム色に褐色の筋が入り、先が 2 つに割れる二唇形の花が、細い花茎にまばらに付いています。この写真には株本体が写っておらず、画像そのものから種を確かめることはできません。Wikimedia Commons 上で本種として登録されているファイルとして掲載しています。Photo: Abu Shawka / CC0, via Wikimedia Commons(帰属は任意)

自生地では、この花を長い口吻をもつハエ類やハチ類が訪れます。株そのものはヤマアラシ・リクガメ・ハイラックス(イワダヌキ)・バッタやコオロギに食べられることがあり、多肉質であるおかげで長い乾燥にも火にも耐えます。岩の多い場所を好むため周囲の植生が少なく、それが火を避けることにも役立っている、と SANBI は説明しています。

入手のときに見る所と、流通の実際

手がかり
店頭で見える
記載と照合
単独で決め手
畝が連続しているか
葉が幅広い三角形か
ロゼットが平たいか
産地・採集の記録
名札の学名表記

読み方 … ◎ = よく効く / ○ = 効くが単独では不足 / △ = 参考程度。当サイトの整理であり、絶対的な基準ではありません

買うときに効くのは、名札ではなく葉面です。とくに、畝が連続しているかどうか。粒が点のまま並んでいるだけなら、十二の巻やアテヌアータなど別の候補が浮上します。葉の形(幅広い三角形か)、ロゼットの平たさが加われば、さらに絞れます。ただしここまで見てもなお、変種の区別まで踏み込むことはできません。この記事の写真で見たとおり、変種名で流通している株の多くは第三者の同定を経ていないからです。

流通量について。オークション落札価格検索サイト Aucfree(オークフリー)で調べたところ、直近 30 日で該当したのは「リミフォリア」で 8 件、「瑠璃殿」で 6 件でした(2026-07-24 時点)。落札価格の幅は、リミフォリアが 412 円から 4,500 円、瑠璃殿が 420 円から 9,361 円です。

ただし、この件数はそのまま読めません。これらは検索一致の総件数であり、表記揺れや別品種・別ジャンルの混入を含む参考値です。実際、「瑠璃殿」の 6 件のうち 2 件は「瑠璃の宝石」というまったく別のジャンルのフィギュアのまとめ売りでした。キーワードそのものが汚れている、という具体例です。

個別の落札例を挙げると、無印の株が 500 円、斑入り(錦)の 7cm 株が 4,500 円、同じく斑入りの 8.5cm 株が 412 円、「瑠璃殿錦(白斑)」が 4,000 円といった具合でした。斑入りだから必ず高い、という単純な関係にはなっていません。

当サイトは平均価格を掲載していません。件数も価格も時期で変動し、落札履歴そのものが将来失われる可能性もあります。ここに書いた数字は購入価格を保証するものではありません(元データ: Aucfree「リミフォリア」の落札履歴)。

小売では、より安定して手に入ります。園芸専門の通販では「瑠璃殿錦(リミフォリア斑入)」や無印のリミフォリアが常設商品として並んでおり、日本語の多肉図鑑データベースは価格帯の目安を 640 円としています。探して見つからない植物ではありません。

株を迎えたあとの環境づくり——LED・用土・鉢・棚の選び方は育成環境ガイドに集約しています。

まとめ

Summary
瑠璃殿は、4 つの手がかりで捉えられる
葉面のざらつきは、疣が横方向に連なって稜になったもの。十二の巻やアテヌアータの「点のまま並ぶ白疣」とは成り立ちが違います。自生地は南アフリカ クワズール-ナタール州北部からムプマランガ、エスワティニの Lebombo 山地で、標高 300〜800m の草地に小石や草株と紛れて生えています。南アフリカのレッドリストは本種を危急(VU)とし、薬用取引と野採で過去 60 年に 30% 超が失われたと推定しています。受理されている変種は 5 つで、瑠璃殿錦や f. striata は別の層の呼び名です。
疣が連なって畝になる点のまま並ぶ白疣とは構造が違う — 指でなぞって確かめる
北 KZN 〜 エスワティニ標高 300〜800m の草地。小石と草株に紛れて生える
野生では危急(VU)薬用取引と野採で過去 60 年に 30% 超の減少と推定
受理された変種は 5 つ瑠璃殿錦・f. striata・ニグラは流通の呼び名で別の層
  • 受容名は Haworthiopsis limifolia (Marloth) G.D.Rowley(2013 年・Rowley)。基礎異名は 1910 年の Haworthia limifolia Marloth で、旧名も園芸では広く使われています
  • 和名は「瑠璃殿」を主表記とし、「琉璃殿」は中文圏の表記として併記します。カタカナの「リミフォリア」は SNS とオークションで主流です
  • 越冬温度に種固有の一次情報はありません。RHS の H2(1〜5℃)と、日本語図鑑データベースの -5℃ が割れており、実用上は 3〜5℃ を下回らない場所を目安に(要確認)
  • 光の推奨も SANBI(半日陰)と RHS(full sun)で割れます。当サイトは「明るい日陰から慣らす」を安全側の推奨とします
  • 増やし方は株分け・葉挿し・種子の 3 通り。種子は乾燥に弱く、蒴果が裂け始めたらすぐ播く必要があります
  • 園芸銘の正式な登録先は日本ハオルシア協会(ICRA)で、Haworthiopsis も対象範囲に含まれます

硬葉系のほかの品種と注目度を比べたいときは、ハオルチア人気品種ランキングが早い入口です。

FAQ

「瑠璃殿」と「琉璃殿」はどちらが正しいですか?
日本で探すなら「瑠璃殿」を使ってください。日本語の図鑑データベースやオークションの出品名ではこちらが優勢で、当サイトも主表記としています。「琉璃殿」は中文圏で使われる表記です(Wikimedia Commons に台湾の撮影者による「琉璃殿 Haworthia limifolia」というファイル名の写真が実在します)。どちらも実際に使われている表記なので、一方が誤りだと断定できる根拠は当サイトも持っていません。
Haworthia limifolia と Haworthiopsis limifolia はどちらが正しいですか?
同じ植物を指します。2013 年の再分類で硬葉系は Haworthiopsis 属へ移り、現在の受容名は Haworthiopsis limifolia (Marloth) G.D.Rowley です。Haworthia limifolia Marloth はその基礎異名(もとになった名前)で、園芸の場では今も広く使われています。
葉のざらざらは何ですか? 十二の巻の白い縞と同じものですか?
成り立ちが違います。SANBI は瑠璃殿の葉面を「隆起した疣が横方向に連なった稜」と記述しています。つまり粒(疣)が横につながって 1 本の畝になったもので、十二の巻やアテヌアータのように白い疣が点のまま並ぶ模様とは別です。ただし同じ株のなかに「点のままの疣」と「連なった畝」が同居することもあるため、この 1 点だけで種を決めることはできません。
何度まで寒さに耐えますか?
最低でも 3〜5℃ を下回らない室内へ取り込む — これが実用の線です。出典は大きく割れていて、RHS は耐寒性 H2(1〜5℃)、SANBI は数値を示さず「霜のない地域なら育つ」という趣旨、日本語の多肉図鑑データベースは -5℃ としています。この幅のなかでいちばん安全側を取ったのが 3〜5℃ で、種固有の一次情報は無いため、正確な値は要確認としています。
変種はいくつありますか? 「瑠璃殿錦」は変種ですか?
GBIF が受理している変種は var. limifolia / arcana / gigantea / glaucophylla / ubomboensis の 5 つで、SANBI も 5 つとしています。「瑠璃殿錦(variegata)」「f. striata」「f. spiralis」「ニグラ」は分類学上の階級ではなく、栽培と流通で使われている型名です。園芸品種名の正式な登録先は日本ハオルシア協会(ICRA)です。
安く売られていますが、希少な植物ですか?
栽培下では広く殖やされ入手しやすい一方、野生では南アフリカのレッドリストで危急(VU)とされています。薬用植物取引でもっとも好まれる種であることに加え、多肉コレクターによる成株の採取・都市や工業の開発・過放牧・外来植物の侵入が脅威に挙げられ、過去 60 年でおよそ 30% を超える減少が推定されています。
手元の株が瑠璃殿かどうか知りたいのですが。
次の 3 点を順に見てください。①葉面の高まりが「粒の列」ではなく「葉幅を横断する畝」になっているか ②葉が幅広い三角形か ③ロゼットが平たいか。3 つとも当てはまれば瑠璃殿の候補です。変種まで絞りたい場合は、産地や採集の記録が付いているかどうかが決定的に効きます。
道具はここに集約
ハオルチアの育成環境ガイド(LED・用土・鉢・棚)
系統ごとの全体像
ハオルチアの種類総覧(系統×「窓」で選ぶ完全図鑑)
白い疣が点で並ぶ仲間
十二の巻とは — そっくりなアテヌアータとの違い
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ハオルチアの育て方は「窓」で決まる
出典
  • SANBI PlantZAfrica — Haworthiopsis limifolia(Lungisani Zondi 執筆。形態・自生地と標高/降水量・保全ステータス VU と減少推定・生態・伝統利用と護符・栽培と増やし方・名前の語源)
  • GBIF Backbone — Haworthiopsis limifolia(受理状態・基礎異名・初出 Alsterworthia Int., Special Issue 10: 4 (2013)・受理される 5 変種を API で実測)
  • IPNI(国際植物名索引)— Haworthia limifolia(基礎異名の初出 Trans. Roy. Soc. South Africa 1: 409 (1910)、および過去に発表された変種名 var. diploidea (1940) / stolonifera (1943) / koelmaniorum (1997) / striata (1983) の書誌)
  • RHS Plant Finder — Haworthiopsis limifolia (fairy washboard)(耐寒性 H2 = 1〜5℃・株の大きさ・栽培位置 full sun・用土・花と開花期・成熟までの期間 2〜5 年)
  • ISHS International Cultivar Registration Authority list — #100 Haworthia Society of Japan(登録官・2014 年指定・対象属に Haworthiopsis と Tulista を明記)
  • iNaturalist — Haworthiopsis limifolia(観察数 969。変種別は var. limifolia 34 / ubomboensis 7 / gigantea 3 / arcana 2 / glaucophylla 0。本文で使った観察の同定状況・品質グレード・栽培かどうかを API で個別に実測。2026-07-24 時点)
  • Wikimedia Commons — Category:Haworthiopsis limifolia(32 ファイル。使用した各ファイルのライセンス版・作者・カテゴリを API で実測。2026-07-24 時点)
  • 日本語の多肉植物図鑑データベース PUKUBOOK — 瑠璃殿 Haworthia limifolia(和名「瑠璃殿」と別名・耐寒温度 -5℃・価格の目安 640 円)。同サイトは免責で「『正しさ』よりも『楽しさ』が基本方針」と自ら明示しており、当サイトは公的データベースと同列には扱っていません
  • Aucfree(オークフリー)— 「リミフォリア」の落札価格一覧 / 「瑠璃殿」の落札価格一覧(直近 30 日の件数・価格レンジ・個別落札例。2026-07-24 時点。表記揺れ・別ジャンル混入を含む参考値)
  • Klopper & Gildenhuys (2018) — SANBI が食害動物の記述で引く文献
  • 種数の見解(林 546 / Breuer 366 / Bayer 60)は当サイトの分類方針にもとづく併記です
  • 写真は Wikimedia Commons と iNaturalist の PD / CC0 / CC BY / CC BY-SA 画像のみを使用し、ライセンスと現行の同定を各 API で確認しています(確認日 2026-07-24)。ND・NC ライセンスの画像は使用していません
Field Noteデータ集約図鑑

運営者は栽培による一次観察を持たないため、種の同定は断定せず、写真はいずれも「〜として記録された株」「〜のラベルで栽培されている株」として扱います。SANBI の株径の数値は他の記述と整合が取れないため引用していません。伝統医療に関する記述は文化と保全の文脈での紹介であり、効能を推奨するものではありません。

画像クレジット

本記事の写真はすべて Wikimedia Commons と iNaturalist の CC ライセンス画像です(PD / CC0 / CC BY / CC BY-SA のみ採用・ND / NC は不採用)。本文中の写真は個別の帰属を写真の下に常時表示しています。冒頭のプレートとカード内の写真については、ライセンス条文へのリンクを含む帰属を以下にまとめます。
冒頭のプレート(温室の単株): Photo: spacebirdy / CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
自生地 1(岩礫地の群): Photo: Sunčana Bradley / CC BY 4.0, via iNaturalist
自生地 2(草株の根もと): Photo: Sunčana Bradley / CC BY 4.0, via iNaturalist
自生地 3(赤土の俯瞰): Photo: Suvarna Parbhoo Mohan / CC BY-SA 4.0, via iNaturalist
var. gigantea として同定された自生株: Photo: Dave Richardson / CC BY 4.0, via iNaturalist
var. ubomboensis のラベルの栽培株: Photo: Oleksandr Shynder / CC BY 4.0, via iNaturalist
var. arcana のラベルの栽培株: Photo: Oleksandr Shynder / CC BY 4.0, via iNaturalist
f. striata のラベルの栽培株: Photo: Albert SN / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
f. spiralis のラベルの栽培株: Photo: Albert SN / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
variegata(瑠璃殿錦): Photo: Albert SN / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
子株の出た庭植えの株: Photo: Abu Shawka / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
大鉢の群生: Photo: Vengolis / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
花茎の出はじめた室内の鉢株: Photo: Michael Goodyear / CC0, via Wikimedia Commons(帰属は任意)

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