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ハオルチア・シンビフォルミス(水蓮華)6 変種の見分け方・東ケープの自生地・名前の来歴

ふくらんだ舟形の葉が密に重なる軟葉系ハオルチアの群生を真上から。葉の上半分に白い筋状の窓が透け、葉先に短い褐色の尖りがある(Wikimedia Commons では Haworthia cymbiformis として掲載)
Commons では Haworthia cymbiformis として掲載 Photo: Agnieszka Kwiecień, Nova / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
SPECIMEN — HAWORTHIA CYMBIFORMIS
シンビフォルミスHaworthia cymbiformis / 京の華・水蓮華
系統軟葉系 自生地南ア東ケープの崖 見分けの鍵舟形にふくらむ葉

シンビフォルミス(Haworthia cymbiformis)は、多肉の売り場で「京の華」「水蓮華」といった和名でも並ぶ、軟葉系ハオルチアの定番です。やわらかくふくらんだ葉が舟のような形をしていて、上半分に半透明の窓が入り、子株でどんどん面を広げていきます。丈夫で、よく殖えて、手に入りやすい——入門種として語られることの多い植物です。

ところが分類データベースを開くと、印象が変わります。この「1 種」の内側には、いま 6 つの変種が受理され、その下に 45 の学名がシノニムとして畳み込まれています(GBIF Backbone 実測)。かつて独立種として発表され、あとから吸収された名前がそれだけあるということです。しかも日本語のページの多くが書く「南アフリカ西ケープ州原産」は、南アフリカの国家機関の記述とも、公開データベースの座標分布とも合いません。この記事は、6 変種の見分け名前がどこから来たのかを、一次資料の実測値と CC ライセンスの実写で組み立てた事典です。

この記事でわかること
  • 受理されている6 変種を、見分け表・実写カード・書誌表の 3 層でたどれる
  • 自生地が東ケープ州の崖であること、その裏づけを座標の実測で確かめられる
  • 「京の華」「水蓮華」「宝草」が学名のどこに対応するか(と、対応しきらない部分)
  • 名前で検索すると別種・別ジャンルが混ざることを、実測した数で確認できる
出典つきで整理した図鑑です — 品種は「候補」と「次に見る所」まで示します

シンビフォルミスとは — 名前が示す「舟形」

浅い育苗トレイの礫土に並んだ5株の明るい緑のロゼット。葉は幅広い舟形で内側に折れ込み、葉先の縁が半透明に抜ける。奥に「ASPHODELACEAE」「…ia cymbiformis」と印字された名札が立つ
幅広い舟形の葉が内側へ折れ込み、葉先の縁だけが半透明に抜ける。奥の名札には「ASPHODELACEAE …ia cymbiformis」と印字されている。Photo: Abu Shawka / CC0, via Wikimedia Commons(帰属は任意)

この植物の名前は、姿そのものです。種小名の cymbiformis は、ラテン語の cymba(小舟)と -formis(〜の形)からできています。上の写真のように、葉の断面が内側へ折れ込んで小舟のような形になる——それが名前の由来です。手で触れるとやわらかく、指で押すと少ししなる程度の厚みがあります。硬葉系のようにガラス質の硬さはありません。

窓の見え方にも特徴があります。球状に丸く透けるのではなく、葉の上半分に筋を引くように入るのがシンビフォルミスの窓です。オブツーサのような「玉が透ける」見え方を期待すると拍子抜けしますが、逆にいえば光の透け方より、葉の形と群れ方で見る植物だということです。ハオルチア全体のなかでの位置づけはハオルチアの品種と系統の全体像で系統ごとに整理しています。

TAXONOMY / MEASURED 2026-07-24
旧 Haworthia は 3 属に分かれた — シンビフォルミスは残った側
3 属分割の根拠は Manning et al. 2014, Systematic Botany 39: 55-74(SANBI PlantZAfrica の属頁が明記)。シンビフォルミスは分割後も Haworthia に残る側

ここが、十二の巻やアテヌアータとの決定的な違いです。2014 年の分子系統研究を受けて、旧ハオルチア属は 3 つの属に分けられました。硬葉系は Haworthiopsis 属へ、大型で硬い一群は Tulista 属へ移りましたが、シンビフォルミスは狭義の Haworthia 属に残りました。つまり「ハオルチア・シンビフォルミス」という呼び方は、現在の分類でもそのまま通用します。属名が書き換わった側の事情は十二の巻とアテヌアータの記事で扱っています。

基本情報 — 学名・自生地・耐寒性

シンビフォルミスの基本データ Quick Spec
学名 Haworthia cymbiformis (Haw.) Duval(1809)
発表 Pl. Succ. Horto Alencon.: 7(1809)
バシオニム Aloe cymbiformis Haw.(1804)
ツルボラン科(Asphodelaceae)
属の扱い Haworthia のまま(Haworthiopsis へは移っていない)
系統 軟葉系(やわらかい葉に窓をもつ群)
受理変種 6(GBIF Backbone・すべて accepted)
シノニム総数 種 + 6 変種の合計で 45
自生地 南アフリカ 東ケープ州(ポートエリザベス 〜 Mbhashe 川、内陸は Cathcart)
生育環境 おもに岩の露出面・崖。土壌 pH 6.1〜7.6
草姿 地被状に群生。株のかたまりで高さ 150mm ほど
開花 現地で春なかば 〜 初夏(変種頁の記述では 10〜11 月)
越冬の目安 属全体の一般指針として最低 3〜5℃ を下回らない要確認
保全評価 Least Concern(SANBI Red List)
流通名 京の華 / 水蓮華 / 宝草

学名の来歴は 2 段階です。1804 年に Adrian Hardy Haworth がアロエ属の一種 Aloe cymbiformis として発表し(Trans. Linn. Soc. London 7: 8)、その 5 年後の 1809 年に Henri Auguste Duval が新設した Haworthia 属へ移しました(Pl. Succ. Horto Alencon.: 7)。学名の末尾にある「(Haw.) Duval」という表記は、まさにこの引っ越しの記録です。書誌情報は国際植物名索引(IPNI)と GBIF Backbone の登録内容にもとづきます。

科の名前も時代によって書かれ方が違います。日本の園芸店では「ユリ科」「アロエ科」と書かれた札をいまも見かけますが、現在の体系ではツルボラン科(Asphodelaceae)に置かれます。どれも間違いというより、その札が作られた時点の体系を保存していると考えるほうが実態に近いといえます。属の扱いも同じで、シンビフォルミスは 3 属分割のあとも Haworthia 属に残っています。

越冬温度については、この種に固有の一次情報を確認できませんでした。SANBI にあるのは「霜や冬季の低温には耐えられない/短期の乾燥と高温には耐える」という定性的な記述だけです。属全体の一般指針として最低でも 3〜5℃ を下回らないを目安に置き、種固有の数値は要確認として扱います。この目安の根拠と冬の管理はハオルチアの越冬(耐寒性)にまとめています。

自生地 — 東ケープの崖に張りつく

赤褐色の岩壁のくぼみに根を張った淡緑色の小群。ふくらんだ舟形の葉が水平に開き、葉面に網目状の濃い筋が入る。周囲は露出した岩と枯れ草だけで土がほとんど無い
岩壁のくぼみに根を張った群。土はほとんど無く、岩の割れ目に溜まった砂だけで生きている。撮影者は南アフリカ・Brandnetelkop の崖として記録している。Photo: Abu Shawka / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

シンビフォルミスは、鉢のなかで育つ前は崖の植物でした。SANBI の PlantZAfrica(Sthembile Zondi・2013 年 8 月)は、分布を「ポートエリザベスから Mbhashe 川まで、内陸は Cathcart まで広く分布し、おもに岩の露出面に生える」と記述しています。上の写真がまさにその姿で、土のない岩壁のくぼみに、割れ目へ根を差し込んで張りついています。鉢植えの姿からは想像しにくい環境です。

HABITAT DATA / MEASURED 2026-07-24
自生地 — 記述と、座標の実測
分布(記述)
ポートエリザベス 〜 Mbhashe 川、内陸は Cathcart までSANBI 2013
生育環境
おもに岩の露出面。土壌 pH 6.1〜7.6SANBI 2013
南アフリカの記録
348 件(うち座標付き 260 件)GBIF 実測
座標付き 260 件の州
東ケープ 242 / 西ケープ 9 / 州名なし 8 / クワズール・ナタール 1GBIF 実測
東ケープ 242 件の範囲
南緯 30.0〜34.0 / 東経 24.9〜28.6 のあいだ
記録の種別
標本 218 / 人による観察 35 / 試料 7大半が押し葉標本
記録年の幅
1929 年 〜 2026
崖の環境(変種の記述)
標高 200〜1500m / 年降水量 250〜1250mm / 南向きの砂岩・泥岩 / 無霜SANBI 2021
出典 = SANBI PlantZAfrica(種頁 Zondi 2013 / var. ramosa・var. setulifera 頁 van Jaarsveld 2021)+ GBIF occurrence search(taxonKey 2779810・2026-07-24 取得)。最下段の標高・降水量・無霜は種全体ではなく 2 変種の記述にもとづく値

ここで、日本語圏に広く出回っている記述をひとつ訂正しておきます。「南アフリカ西ケープ州原産」と書くページが少なくありませんが、SANBI が挙げる地名はいずれもケープ州のものです。GBIF に集まった南アフリカの座標付き記録 260 件を州で数えても、東ケープが 242 件、西ケープは 9 件にとどまります。西ケープの記録がゼロというわけではないので「西ケープには生えない」とまでは言えませんが、「原産地は西ケープ」という書き方は、記述とも分布データとも合っていません

もうひとつ、この数字から見えることがあります。南アフリカの記録 260 件のうち 218 件が押し葉標本で、人が現地で撮って登録した観察は 35 件しかありません。記録年は 1929 年から 2026 年までの 100 年近くに散らばっています。栽培の世界では誰もが知っている植物なのに、野生の姿は研究者の標本を通してしか、ほとんど記録されていない——この非対称は、シンビフォルミスを語るうえで押さえておきたい点です。

南アフリカ・ポートエリザベス近郊の岩場で、小さなロゼットが数百株マット状に密生している様子。緑から黄緑の株の中に、日射で赤みを帯びた株が混じる
岩場に数百株がマット状に密生する。日射の強い場所の株は赤みを帯びる。iNaturalist で複数の同定者により Haworthia cymbiformis とされた観察(research grade)。撮影地は南アフリカ・ポートエリザベス。Photo: chrishorak / CC BY 4.0, via iNaturalist

この 1 枚は、当サイトにとって特別な写真です。市民科学プラットフォーム iNaturalist で Haworthia cymbiformis の観察を数えると、2026 年 7 月 24 日時点で全 483 件。ところがそのうち379 件は栽培株として登録されており、複数の同定者が確認した research grade は43 件まで減ります。さらに、商用利用できるライセンスが付いているものに絞ると、research grade かつ商用可はわずか 2 件。上の写真はその 2 件のうちの 1 枚です。

崖の環境をもう少し細かく知りたい場合は、変種単位の記述が使えます。ただし種全体の値ではないので、どの変種の話かを添えて読んでください。(var. ramosa の記述)では、東ケープの Keiskamma 川沿い・Peddie 地区の砂岩と泥岩の崖、標高 200〜500m、南向き、年降水量 250〜400mm、夏は 28〜40℃ で冬に霜は降りない、とされています。(var. setulifera の記述)では、Mbashe 川から East London の Nahoon 川までの海岸河谷の崖、標高 200〜1500m、年降水量 800〜1250mm、夏は 35〜40℃、やはり無霜です。同じ種の変種どうしで年降水量が 3 倍以上違うのは、この種の分布の幅を示しています。

6 つの変種を見分ける

受理されている 6 変種 — 断定でなく「次に見る所」の表
基本変種 VAR. CYMBIFORMIS
舟形にふくらみ、先が短くとがる
ほぼ無茎。子株で横に広がる
次に見る所
下の 5 つに当てはまらなければ、まずここの候補
京の華 VAR. ANGUSTATA
変種名 angustata は「細くなった」の意。国内の販売表記でも細葉として紹介される
無茎。群生する
次に見る所
葉の幅に対する長さ。斑入りなら「京の華錦」の名で流通する
VAR. OBTUSA
先が丸くふくらみ、窓に網目状の脈が出る
無茎。密に群生する
次に見る所
葉先がとがるか丸いか。日本で「オブツーサ」と呼ばれる株とは別(後述)
VAR. RAMOSA
基本変種に近いが小ぶり
木質化した茎が枝分かれする(ramosa = 枝分かれする)
次に見る所
株元を横から見て、茎が伸びて分岐しているか
VAR. SETULIFERA
三角形にとがり、縁と稜にやわらかい刺毛が並ぶ
無茎。25 頭ほどの小さな塊になる
次に見る所
葉縁を斜めから見て、細かい毛状の突起があるか
VAR. INCURVULA
短く、内側へ強く巻き込んで球状に締まる
無茎。小型
次に見る所
葉が開かず内巻きのままか。徒長で開いた株と混同しない

この表は「答え」ではなく「次に何を見るか」の表です。シンビフォルミスの見分けでいちばん効くのは、葉の色でも窓の透明度でもなく、茎が伸びて枝分かれするか葉縁に刺毛があるか葉が内側へ巻き込むかという 3 つの形質です。どれも真上から撮った写真 1 枚では判断できず、株を横から見る必要があります

var. ramosaBRANCHING
黒いポットの中で、木質化した古い茎から枝分かれして立ち上がった複数のロゼット。葉は明るい緑で先が赤く尖り、株ごとに高さが違う(Commons では Haworthia cymbiformis var. ramosa として掲載)
枝分かれする var. ramosa
木質化した茎分岐するKeiskamma 川
var. setuliferaBRISTLES
植物園の礫床に育つ明るい緑のロゼット2株。葉は三角形にとがり、葉先と稜に赤褐色の短い刺状の突起が並ぶ。細い花茎が2本立つ(植物園が var. setulifera として植栽している株)
刺毛をもつ var. setulifera
葉縁に刺毛三角にとがるMbashe〜Nahoon 川
var. incurvulaINCURVED
素焼き鉢の礫土に植わった単一のロゼット。青緑色の短い葉が内側へ強く巻き込み、全体が球状に締まって見える。葉先の縁は半透明(投稿者が var. incurvula として登録した株)
内へ巻く var. incurvula
球状に締まる葉が短い1932 年記載
var. obtusaROUNDED
葉先が丸くふくらんだ軟葉系ハオルチアのロゼットを真上から。窓に網目状の濃い模様が入る(Commons の現行カテゴリは Haworthia cymbiformis var. obtusa)
葉先が丸い var. obtusa
丸くふくらむ網目状の窓1880 年に変種へ

カードにできたのは 4 変種だけです。商用利用できるライセンスの写真が存在するのが、この 4 つに限られるためです。基本変種と「京の華」(var. angustata)については、当サイトの基準を満たす写真がまだ確保できていません。実在する変種の「写真らしい」画像を生成して枠を埋めることはしないので、この 2 つは下の書誌表と本文で扱います。なお 4 枚の写真の変種名は、いずれも撮影者や植物園による登録名であって、当サイトが同定したものではありません。

変種発表(GBIF / IPNI 実測)バシオニム吸収した旧名
var. cymbiformis基本変種(種そのもの)27 件。うち 14 件が planifolia を含む名前(H. planifolia Haw. 1825 とその品種 5・変種 5 ほか)/ H. concava Haw. 1821 / H. cuspidata Haw. 1819 / H. lepida G.G.Sm. 1944 ほか
var. angustata Poelln.Repert. Spec. Nov. Regni Veg. 44: 230(1938)—(新変種として発表)1 件。H. angustata (Poelln.) Breuer 2010(種へ戻す見解)
var. obtusa (Haw.) BakerJ. Linn. Soc., Bot. 18: 209(1880)H. obtusa Haw. 18255 件。H. umbraticola Poelln. 1937(ウンブラティコラ)/ H. hilliana Poelln. 1937 ほか
var. ramosa (G.G.Sm.) M.B.BayerHaworthia Revisited: 60(1999)H. ramosa G.G.Sm. 19442 件
var. setulifera (Poelln.) M.B.BayerHaworthia Revisited: 62(1999)H. planifolia var. setulifera Poelln. 19386 件。H. obesa / H. setulifera(いずれも Breuer 2010・種へ戻す見解)ほか
var. incurvula (Poelln.) M.B.BayerHaworthia Handb.: 124(1976)H. incurvula Poelln. 19321 件
変種名・発表年・出版元・バシオニム・シノニム件数は、いずれも GBIF Backbone(taxonKey 2779810 の children と各変種の synonyms)および国際植物名索引(IPNI)の登録情報を 2026-07-24 に照会した実測値。種レベルのシノニム 3 件を加えると合計 45 件になる。

この表でいちばん目を引くのは、右端の列です。基本変種だけで 27 の旧名を吸収しており、そのうち 14 は planifolia(平らな葉の)という小名を含む名前です。H. planifolia Haw.(1825)を核として、1938 年前後に von Poellnitz や Triebner が 5 つの品種と 4 つの変種を次々に立てた結果で、いま「シンビフォルミスの基本変種」と呼ばれているものは、かつて十数個の名前に分かれていたということになります。

「京の華」は、この表では var. angustata の行にあたります。日本の販売表記では学名が angustana と綴られていることがありますが、IPNI と GBIF の受理綴りは angustata です。斑入り品は「京の華錦」の名で流通し、変種名側の需要としてはこちらのほうが厚くなっています。

名前の来歴 — 45 の学名が 1 種に畳み込まれた

シンビフォルミスをめぐる名前の 3 期 — 記載 → 増殖 → 統合 FIG.05Timeline
第 1 期 記載 アロエ属から出発し、20 年のあいだに近い名前が次々と立つ 1804 Haworth が Aloe cymbiformis を記載(Trans. Linn. Soc. London 7: 8)/ 1809 Duval が Haworthia 属へ移す(Pl. Succ. Horto Alencon.: 7)/ 1819 H. cuspidata(Suppl. Pl. Succ.: 51)/ 1821 H. concava(Saxifrag. Enum. 2: 98)/ 1825 H. planifolia と H. obtusa(両者とも Philos. Mag. J. 67: 282)
第 2 期 増殖 変種・品種が量産され、1 つの群に十数個の名前がぶら下がる 1880 Baker が var. obtusa と var. planifolia を立てる(J. Linn. Soc., Bot. 18: 209)/ 1932 H. incurvula・H. gracilidelineata(Poelln.)/ 1937 H. umbraticola・H. hilliana(Poelln.)/ 1938 var. angustata と planifolia の 5 品種・4 変種(Poelln. / Triebner)/ 1944 H. ramosa・H. lepida(G.G.Sm.)
第 3 期 統合 まとめる側と分ける側が、同じ植物に別々の階級を与え続ける 1976 Haworthia Handbook が incurvula・umbraticola を cymbiformis の変種へ(Bayer)/ 1999 Haworthia Revisited が ramosa・setulifera を変種へ(Bayer)/ 2000 林が近縁の H. transiens を独立種として組み合わせ発表(Haworthia Study 3: 13)/ 2010 Breuer が angustata・setulifera・obesa を種へ戻す(Gen. Haworthia 1)/ 2016 Breuer が H. umbraticola var. obesa の組み合わせを発表(Alsterworthia Int. 16(2))
年・出版元はすべて GBIF Backbone と国際植物名索引(IPNI)の登録情報にもとづく(2026-07-24 実測) 書誌年表

植物が変わったわけではありません。変わったのは「どこまでを 1 種と見るか」の判断です。200 年のあいだに、この群には少なくとも 45 の学名が与えられました。第 1 期に近い名前がいくつも立ち、第 2 期に変種と品種が量産され、第 3 期にそれらが 1 種 6 変種へまとめ直された——というのが大きな流れです。いま流通ラベルに書かれている名前は、その札が作られた時点の見解を保存しているだけで、間違いというより地層のようなものだと考えるほうが実態に合っています。

とくに注意したいのが、第 3 期にまとめる方向と分ける方向が同時に動いていることです。Bayer が 1976 年と 1999 年に変種へまとめた名前のうち、angustatasetuliferaobesa は 2010 年に Breuer によって独立種へ戻されています。GBIF Backbone はまとめる側の整理を採用していますが、分ける側の文献ではいまも種として扱われる——つまり同じ植物に、現在も複数の呼び方が生きているということです。

ハオルチアは何種あるのか — 主要 4 見解の併記
統合派 BAYER
種数
約 60 種
立場
変異の幅とみてまとめて数える
シンビでは
incurvula・ramosa・setulifera を変種へ統合
中間 BREUER
種数
約 366 種
立場
やや細かく分ける
シンビでは
angustata・setulifera・obesa を種へ戻す(2010)
細分派 HAYASHI
種数
約 546 種
立場
さらに細かく分ける(林)
シンビでは
近縁の transiens を独立種として組み合わせ発表(2000)
公的機関 SANBI
種数
38 種 / 131 分類群
立場
南アフリカ国家生物多様性研究所の現行見解(2020)
シンビでは
種頁と 2 変種頁を個別に公開している

どれが正しいという話ではありません。ハオルチアがそれだけ変異に富み、境界を引きにくい植物だという表れです。本記事はそれぞれの見解が「いつ・誰の文献で」示されたかを並べています。シンビフォルミスは、この 4 者の違いが 1 種のなかで見える、わかりやすい例です。

1805年の手彩色銅版画。幅広い舟形の葉が重なるロゼットの中心から花茎が伸び、白い筒状花を数個つけている。右上に「N°802」の番号が入る
Curtis’s Botanical Magazine 第802図(1805年1月1日刊)。Sydenham Edwards 画・F. Sansom 彫。舟形の葉と花茎が、記載から間もない時期にどう描かれたかがわかる。この図に印刷されている学名は当時のもので、シンビフォルミスという同定は余白の手書き注記「Haworthia cymbiformis fide Baker, J. Linn Soc XVIII 200」による後年のもの。Bentham-Moxon Trust / Curtis’s Botanical Magazine(Biodiversity Heritage Library)/ パブリックドメイン, via Wikimedia Commons

この図版は、名前の来歴を目で確かめられる資料です。刊行は 1805 年 1 月 1 日。Haworth が Aloe cymbiformis を発表した翌年、Duval が Haworthia 属を立てる 4 年前にあたります。当時の園芸誌がこの植物をどう見ていたかがそのまま残っています。興味深いのは同定の付き方で、シンビフォルミスという名前は印刷されたものではなく、後年に Baker の見解にもとづいて余白へ書き込まれた注記から来ています。名前は図そのものより後から付いてくる、という一例です。

1809年の手彩色銅版画。中央に舟形の葉が重なる淡緑のロゼットと弓なりに伸びた花茎、上段と下段に白斑のある細長い葉と根の図が描かれる。下部に「Fig. 1. Aloë cymbifolia. 2. Aloë pulchra.」の刻字がある
N. J. von Jacquin『Fragmenta botanica』第112図(1809年)。刻字は「Fig. 1. Aloë cymbifolia. 2. Aloë pulchra.」で、1 枚の図に 2 つの分類群が描かれている——舟形のロゼットが Fig.1、白斑のある細長い葉が Fig.2 で、Commons もこの図版を Gasteria pulchra の図版カテゴリに併載している。Aloe cymbifolia Schrad. は現在シンビフォルミスのシノニムとして扱われる名前。パブリックドメイン, via Wikimedia Commons

もう 1 枚の古典図版は、名前の混線そのものを示しています。Duval が属を立てたのと同じ 1809 年に刊行されたこの図には、2 つの分類群が並べて描かれています。図版全体をシンビフォルミスの図として見せることはできませんので、当サイトでは刻字を引用したうえで、中央の舟形のロゼットが該当部分であることを明記して掲載しています。ここに書かれた Aloe cymbifolia Schrad.(1807 年発表)は、現在の分類データベースではシンビフォルミスのシノニムの 1 つとして扱われています。

植物園の砂礫床に広がったマット状の群生。濃緑の葉は舟形で先がとがり、細い花茎が数本立って白い小花をつけている。中央に植物園の登録ラベルが立つ
群生と開花が同時に写った 1 枚。中央の登録ラベルには「Haworthia cymbiformis (Haw.) Duval / S-Afrika, O-Kapland」と印字されている——命名者の引き継ぎ表記と、産地としての東ケープ(O-Kapland)が 1 枚に収まっている。ラベルは施設の表示であって同定の一次証拠ではない。Photo: Daderot / CC0, via Wikimedia Commons(帰属は任意)
混同注意 — 2 つの「オブツーサ」

上の表にある var. obtusa は、学名 Haworthia obtusa Haw.(1825)を 1880 年に Baker がシンビフォルミスの変種へ置いた名前です。一方、日本で「オブツーサ」として売られている株の学名は Haworthia cooperi var. truncata で、別の種に属します。この学名の割れ方はクーペリー系の見分け方で図解つきに整理しており、銘ごとの違いはオブツーサの種類と違いで扱っています。本記事では再演しません。

窓と群れ方 — 透明感より「増え方」で見る

素焼き鉢で育つ黄緑色の群生のマクロ。葉の上面に半透明の窓があり、その内側に網目状の脈が透けて見える。強い日射で葉先と葉縁が赤褐色に色づいている
葉の上面の半透明な窓に、網目状の脈が透けて見える。葉先と葉縁は日射で赤褐色に色づいている。投稿者が Haworthia cymbiformis として記録した栽培株(第三者の同定は付いていない casual 観察)。Photo: Gianni Del Bufalo bygdb / CC BY 4.0, via iNaturalist

シンビフォルミスの窓は、透明度で競う種類ではありません。上の写真のように、葉の上面が半透明になり、そこに網目状の脈がうっすら浮かびます。オブツーサやクーペリー系のような「玉が透ける」見え方とは違い、光を通しつつ、内部の構造が見えるという質感です。強い光に当たると葉先と葉縁が赤褐色に色づくのも特徴で、これは自生地の写真でも同じ変化が見られます。

温室の床一面にカーペット状に密生した軟葉系ハオルチア。小さなロゼットが隙間なく重なり、外周の葉は褐色に枯れている
温室の床一面に広がったカーペット状の群生。小さなロゼットが隙間なく重なり、子株で増える性質がよく分かる。Photo: Agnieszka Kwiecień, Nova / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

この種のほんとうの見どころは、こちらです。シンビフォルミスは子株をよく出し、放っておくと鉢いっぱいに広がって面を作ります。SANBI も「地被状の多肉で、株のかたまりは高さ 150mm ほどになる」と記述しており、殖やし方として根茎の株分けと葉挿しを挙げています。群生した株を崩して植え直せば、そのまま株数が増える——初めてハオルチアを殖やす対象として選ばれるのは、この性質があるからです。

群生した軟葉系ハオルチアを上から見たクローズアップ。やわらかくふくらんだ舟形の葉と、半透明に抜ける葉先に水滴が乗っている
群生した株を上から。やわらかくふくらんだ舟形の葉と、半透明に抜ける葉先。Photo: Didier Descouens / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

群生する性質には、見分けのうえでも意味があります。株が横へ広がるとき、茎が伸びずに子株だけが増えるのか、それとも茎そのものが伸びて枝分かれするのか——ここが var. ramosa かどうかの分かれ目でした。鉢を上から見ているだけでは同じ「群生」に見えますが、横から見ると別物です。株を買ったあとで確かめたい場合は、植え替えのときに株元を観察するのがいちばん確実な機会になります。

花 — 属を確かめる手がかり

褐色の花茎につく白い筒状の花のマクロ。花被片は6枚で上下2唇に反り返り、それぞれの中央に淡紅色の筋が縦に走る。奥にはまだ開いていない細長い蕾が並ぶ
白い筒状花のマクロ。花被片は上下 2 唇に反り返り、中央に淡紅色の筋が走る。投稿者が Haworthia cymbiformis として記録した栽培株の花(第三者の同定は付いていない casual 観察)。Photo: Gianni Del Bufalo bygdb / CC BY 4.0, via iNaturalist

花は地味ですが、その株がハオルチア属であることを確かめられる数少ない手がかりです。SANBI は「白色で、細長い筒状」と記述しており、開花期は現地で春なかばから初夏(10〜11 月)。上の写真のとおり、花被片が上下 2 唇に反り返り、それぞれの中央に淡い色の筋が縦に走ります。この形は属に共通する特徴で、葉の形がどれだけ違っても花はよく似ています。

素焼き鉢の黄緑色の群生から、株の高さの数倍に伸びた細い花茎が数本立ち上がり、白い花をまばらにつけている。ベランダの手すり際に置かれた鉢
花茎は株の高さの数倍まで伸び、白い花をまばらにつける。株の大きさに対する花茎の長さがわかる 1 枚。投稿者が Haworthia cymbiformis として記録した栽培株(第三者の同定は付いていない casual 観察)。Photo: Gianni Del Bufalo bygdb / CC BY 4.0, via iNaturalist

逆にいえば、花から種を絞り込むことはできません。花で分かるのは「これはハオルチア属である」という一段上の確認までです。花茎は株の数倍の高さまで伸びるので、株の体力を温存したいなら早めに切るのが一般的な対応になります。切るか残すかの判断はハオルチアの花にまとめています。

近縁種との違い — 要約と、混ざりやすい 1 種

まず 3 つに分ける — 詳しい手順は専用記事へ
シンビフォルミス H. CYMBIFORMIS
やわらかく舟形にふくらみ、上向きに立つ
上半分に筋状。透明度は控えめ
次に見る所
葉の断面が舟形にへこんでいるか
クーペリー H. COOPERI
先が丸く詰まる。ノギ(毛)が出る型もある
球状によく透ける型が多い
次に見る所
葉先の毛の有無と窓の透明度。クーペリーの頁
レツーサ(寿) H. RETUSA
三角形に外へ反り返る
反り返った上面が窓になる
次に見る所
葉が上を向くか外へ倒れるか。レツーサの頁

近縁種の見分けは、この 3 つに分けるところから始まります。葉が舟形にふくらんで上を向くならシンビフォルミス、葉先が丸く詰まって窓がよく透けるならクーペリー系、葉が三角形に外へ反り返るならレツーサ系——おおまかにはこの 3 択です。クーペリー系の 13 変種まで含めた詳しい判定手順はクーペリー系の見分け方に図解つきでまとめてありますので、そちらを見てください。本記事では繰り返しません。

そのうえで、この記事でしか書けない話をひとつ。シンビフォルミスには Haworthia transiens という近縁種があり、名前で写真を検索すると、この種が混ざります。この名前は 2000 年に林が独立種として組み合わせを発表したもので(Haworthia Study 3: 13)、iNaturalist での観察は 29 件。見た目が近いうえに扱いも文献によって揺れるため、「シンビフォルミス」として撮られた写真が、後から transiens に同定し直されることが起こります

当サイトで実際に起きた混入

この記事の準備で画像台帳を点検したところ、「シンビフォルミス」として収集していた iNaturalist の写真 6 枚のうち 5 枚が、現在は Haworthia transiens と同定されていました(2026-07-24 実測)。名前で検索して集めた時点で、別種が混ざっていたということです。該当の 5 枚は本記事では使わず、Wikimedia Commons 側の写真と、同定が生きている 1 枚に差し替えています。

育て方の要点 — 光・水・冬

LIGHT
明るい日陰が基本
直射は避け、レース越しの窓辺くらいの明るさで。自生地は南向きの崖の面や岩陰で、真上から強光を浴び続ける環境ではない
WATER
乾いてからたっぷり
水はけを最優先にした用土で、乾湿のメリハリをつける。岩の割れ目に溜まった砂で育つ植物なので、常に湿った土は向かない
WINTER
凍結させない
自生地は無霜。属全体の一般指針は最低 3〜5℃ を下回らないことで、種固有の耐寒限界は一次情報が確認できず要確認

光・水・用土の考え方は育て方は「窓」で決まる、葉がゆるんで間延びしたときの切り分けは徒長の原因と直し方にまとめています。この種だけの特別な手順はありません。

この種で 1 つだけ覚えておきたいのは、「崖の株だった」という出自です。自生地では岩壁のくぼみに張りつき、土らしい土のない場所で、割れ目に溜まった砂と、そこを流れ落ちる水だけで生きています。鉢のなかで常に湿った状態が続く用土は、この生き方とかけ離れています。逆に、乾きすぎを恐れて頻繁に水をやるより、しっかり乾かしてからたっぷり与えるほうが、この植物の元の環境には近いということです。

用土・鉢・LED・棚といった道具立てはハオルチアの育成環境ガイドに集約しています。

入手時の注意 — 和名で探すと別ジャンルが混じる

名前で検索したときの「当たりの薄さ」 FIG.10Name Noise
シンビフォルミス(カタカナ学名)約 5
京の華(着物小物・陶器が混じる)約 16
宝草(山野草・ランが混じる)約 62

和名で探すと、植物ですらないものが混ざります。上のグラフは、ヤフオク!の落札履歴を検索できる Aucfree で 3 つの語を引いたときの、直近 30 日の検索一致件数です(2026 年 7 月 24 日取得)。取得時点の結果を見ると、「宝草」には山野草やラン(デンドロビウム・エビネ)が、「京の華」には着物小物や陶器が並んでいました件数がいちばん少ない「シンビフォルミス」が、目的の株にはいちばん近い——これが、カタカナ学名で探すことをおすすめする理由です。件数は表記揺れや別品種の混入を含む参考値であり、当サイトは価格の代表値・平均値を掲載しません。

流通名対応するとされる学名当サイトの扱い
シンビフォルミスHaworthia cymbiformisカタカナ学名。もっとも確実
京の華H. cymbiformis var. angustata複数の販売元の表記が一致。日本の表記では angustana と綴られることがあるが、IPNI / GBIF の受理綴りは angustata
京の華錦同 f. variegata(流通表記)斑入り品。f. variegata は GBIF Backbone に登録が無い流通上の呼び名
水蓮華H. cymbiformis販売表記で併記されることが多い別名
宝草 / 宝草錦H. cuspidata とする表記が多い見解が割れる。(a) シンビフォルミス × レツーサ の交配起源 (b) 独立種 (c) シンビフォルミスの一型。GBIF Backbone は H. cuspidata Haw. 1819 を基本変種のシノニムとする
学名側の対応は GBIF Backbone / IPNI の実測(2026-07-24)。流通名側は複数の国内販売ページと園芸データベースの表記を突き合わせたもので、公的な登録名ではない。

ここで扱った 5 つの名前は、いずれも「流通表記」であって園芸品種の登録名ではありません。ハオルチア栽培品種の国際登録機関(ICRA)は国際園芸学会(ISHS)から日本ハオルシア協会が指定を受けており、園芸銘の正式な名前は同協会の登録名を正とします。「京の華」「水蓮華」「宝草」はそこに登録された銘ではなく、日本の流通のなかで定着した呼び名だと理解しておくと、表記が店ごとに違う理由が説明できます。和名・学名・流通名の対応は名前の対照表で確かめることができます。

買う前に確かめたい 3 つ FIG.11Checklist
CHECK 1
株元を横から見る
変種の見分けは真上からでは付かない … 茎が伸びて枝分かれしているか、葉縁に刺毛があるか、葉が内へ巻いているかを横から確かめる
CHECK 2
名前は「札が作られた時点の見解」
同じ株に別の名前が付いて流通することがある … ラベルの学名が現在の受理名と違っていても、誤りとは限らない
CHECK 3
群生株はそのまま増える
子株が付いた株を選べば、植え替えのときに株分けできる … 単頭の株より結果的に得になることが多い

当サイトは価格の代表値・平均値を掲載しません。集計条件で印象が大きく変わる数値であり、現時点では誠実に示せないと判断しているためです

最後に、上に挙げた件数の扱いについて明記しておきます。示した数字は Aucfree で 2026 年 7 月 24 日に取得した、直近 30 日の検索一致の総件数です。表記揺れ・別品種・別ジャンルの混入を含む参考値であり、外れ値の補正も行っていません。取得時点の値であって、価格や入手可能性を保証するものではありません。また、落札履歴は提供元の都合で参照できなくなることがあります。実際に買うときは、その時点の出品をご自身で確かめてください。

まとめ

Summary
1 種のなかに 200 年分の名前が畳まれている
シンビフォルミスは、舟形の葉と控えめな窓をもつ軟葉系ハオルチアです。丈夫で殖えやすい入門種として知られる一方、その内側には 6 つの変種と 45 の学名が畳み込まれ、自生地は東ケープ州の崖に限られます。名前の来歴をたどると、手元の株のラベルが何を意味しているのかが見えてきます。
見分けは横から茎の分岐・葉縁の刺毛・内巻き — 真上からでは判断できない
属は Haworthia のまま硬葉系が Haworthiopsis へ移った後も残留
自生地は東ケープ座標付き記録 260 件のうち 242 件が東ケープ州
名前は地層1 種 6 変種の下に 45 の旧学名が畳み込まれている
  • シンビフォルミス Haworthia cymbiformis (Haw.) Duval は、葉が舟形にふくらむ軟葉系ハオルチアです(種小名は「舟の形の」の意)
  • 硬葉系が Haworthiopsis 属へ、大型硬質群が Tulista 属へ移った後も、本種は Haworthia 属に残っています
  • 受理されている変種は 6 つ。見分けの決め手は茎が枝分かれするか・葉縁に刺毛があるか・葉が内へ巻くかで、いずれも株を横から見る必要があります
  • 自生地は南アフリカケープ州の岩・崖。GBIF の座標付き記録 260 件のうち 242 件が東ケープ州で、「西ケープ原産」という記述は分布データと合いません
  • 種と 6 変種を合わせたシノニムは 45 件。基本変種だけで 27 件を吸収しており、そのうち 12 件は H. planifolia 系の名前です
  • iNaturalist の観察 483 件のうち 379 件は栽培株で、research grade は 43 件。名前で集めると近縁の H. transiens が混ざります
  • 「京の華」「水蓮華」「宝草」は流通表記であり、園芸銘の正は日本ハオルシア協会(ISHS 指定 ICRA)の登録名です
  • ほかの品種と見くらべたいときは人気品種ランキングで他の品種を見るから、検索データで注目度の高い順にたどれます

FAQ

シンビフォルミスの原産地は西ケープ州ではないのですか?
南アフリカ国家生物多様性研究所(SANBI)は、分布をポートエリザベスから Mbhashe 川まで、内陸は Cathcart までと記述しており、いずれも東ケープ州の地名です。GBIF に集まった南アフリカの座標付き記録 260 件を数えても、東ケープが 242 件、西ケープは 9 件でした。西ケープの記録が皆無というわけではありませんが、「原産地は西ケープ」という書き方は記述とも分布データとも合いません。
「京の華」とシンビフォルミスは別の植物ですか?
複数の国内販売ページと園芸データベースでは、京の華に Haworthia cymbiformis var. angustata という学名が当てられています。これはシンビフォルミスの変種のひとつなので、別種ではなく同じ種の内側の名前という関係になります。日本の表記では学名が angustana と綴られることがありますが、IPNI と GBIF の受理綴りは angustata です。
「宝草」の学名はどれが正しいのですか?
国内でいちばん多く当てられているのは Haworthia cuspidata です。ただしその正体は定まっておらず、シンビフォルミスとレツーサの交配起源とする説、独立種とする説、シンビフォルミスの一型とする説が並立しています。国際的な照合先である GBIF Backbone は、H. cuspidata Haw.(1819)をシンビフォルミス基本変種のシノニムとして扱っています。見解が割れたままの名前だと思っておくのが実際的です。
シンビフォルミスの var. obtusa は、日本で売られている「オブツーサ」と同じですか?
別の植物です。学名 Haworthia obtusa Haw.(1825)は 1880 年に Baker がシンビフォルミスの変種へ置いたため、現在 var. obtusa はシンビフォルミス側の名前になっています。一方、日本で「オブツーサ」として流通する株の学名は Haworthia cooperi var. truncata で、こちらはクーペリーの変種です。詳しい経緯はクーペリー系の見分け方の記事で図解しています。
何℃まで耐えられますか?
最低でも 3〜5℃ を下回らせないのが実用の線です(ハオルチア属全体の一般的な指針)。変種の自生地は無霜と記述されており、SANBI も「霜や冬季の低温には耐えられない」と記していますが、これは定性的な記述で数値はありません。本種に固有の耐寒限界を示す信頼できる一次情報は確認できていないため、この数値は属の指針として使い、要確認としています。
写真を送れば変種を判定してもらえますか?
撮る向きを変えると、ご自分で絞り込めます。この種の変種を分ける形質は ①茎が伸びて枝分かれするか ②葉縁に刺毛があるか ③葉が内側へ巻き込むか の 3 つで、どれも真上から撮った 1 枚には写りません。株を横から撮り直して、この 3 点を見てください。写真 1 枚がどれほど当てにならないかは、当サイト自身のデータが示しています——「シンビフォルミス」として集めていた写真 6 枚のうち 5 枚が、後から近縁の Haworthia transiens と同定されていました。
道具はここに集約
ハオルチアの育成環境ガイド(LED・用土・鉢・棚)
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出典
  • GBIF Backbone Taxonomy — 受理名・書誌・受理変種 6・シノニム 45 件・分布・オカレンス件数(taxonKey 2779810。2026-07-24 照会): gbif.org
  • IPNI(国際植物名索引)— Haworthia cymbiformis (Haw.) Duval の一次書誌とバシオニム: ipni.org
  • SANBI PlantZAfrica Haworthia cymbiformis(Sthembile Zondi, 2013-08)— 分布・生育環境・草姿・開花期・Red List LC・霜に耐えない旨: pza.sanbi.org
  • SANBI PlantZAfrica H. cymbiformis var. ramosa(Ernst van Jaarsveld, 2021-08)— Keiskamma 川・標高 200〜500m・年降水量 250〜400mm・夏 28〜40℃・無霜: pza.sanbi.org
  • SANBI PlantZAfrica H. cymbiformis var. setulifera(Ernst van Jaarsveld, 2021-06)— Mbashe 川〜Nahoon 川・標高 200〜1500m・年降水量 800〜1250mm・刺毛と窓の記載: pza.sanbi.org
  • SANBI PlantZAfrica Haworthia 属(Ronell R. Klopper & Sean D. Gildenhuys, 2020-09)— 38 種 131 分類群・3 属分割(Manning et al. 2014, Systematic Botany 39: 55-74)・属の分布: pza.sanbi.org
  • iNaturalist — 観察 483 件 / 栽培 379 件 / research grade 43 件 / 商用可ライセンス 27 件、および本記事で使用した 2 観察: obs 62327016(research grade)/ obs 161262112(casual・栽培株)
  • Wikimedia Commons — Category:Haworthia cymbiformis(ファイル 45 件 + サブカテゴリ 4。各画像のライセンス版と作者は API で実測)
  • Aucfree — 落札件数のみを参照(2026-07-24 取得・直近 30 日): aucfree.com
  • 画像は CC ライセンス画像(PD / CC0 / CC BY / CC BY-SA)のみを使用しています。各画像の作者・ライセンス・出典は 画像クレジット・出典一覧 に掲載しています
Field Noteデータ集約図鑑

運営者は栽培による一次観察を持たないため、同定は断定せず、学名・耐寒温度・価格などの数値は出典または「要確認」として扱います。自生地の標高・降水量・気温は種全体ではなく var. ramosa / var. setulifera の記述にもとづく値であることを本文中に明記しました。

画像クレジット

本記事の写真・図版はすべて商用利用可能な CC ライセンス画像です(PD / CC0 / CC BY / CC BY-SA のみ採用・ND / NC は不採用)。カード内の写真は figure のキャプションを持たないため、扉の写真とあわせて帰属を以下にまとめています。継承ライセンス(CC BY-SA)の画像が 7 点、パブリックドメインの古典図版が 2 点含まれます。
扉の写真: Photo: Agnieszka Kwiecień, Nova / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
var. ramosa のカード: Photo: S Molteno / CC0, via Wikimedia Commons
var. setulifera のカード: Photo: Stan Shebs / CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
var. incurvula のカード: Photo: Albert SN / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
var. obtusa のカード: Photo: Marija Gajić / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
本文中の写真の帰属は各 figure のキャプションに記載しています。サイト全体の画像出典は画像クレジットにまとめています。

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