ハオルチア・ピグマエア(延寿城)|ざらつく窓の見分け方・変種と分類の変遷・自生地データ
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ピグマエアHaworthia pygmaea / 延寿城
系統軟葉系・レツーサ群
自生地南ア西ケープ
見分けの鍵ざらつく三角窓
ピグマエア(Haworthia pygmaea)は、南アフリカ・西ケープ州の海岸沿いのごく狭い範囲にだけ自生する、軟葉系のハオルチアです。オブツーサのように窓が透きとおるタイプではありません。窓の面がざらつき、そこに銀白色の点や筋が浮かぶ——透明感ではなく手ざわりと質感で見せる一群に属します。
そしてピグマエアは、名前がよく動いてきた植物でもあります。園芸店やオークションで「アルゲンテオマクロサ」「デケナヒー」「エステルフイゼニー」といった変種名を見かけますが、それらの多くはかつて独立した種として記載され、あとから変種へ降格した名前です。しかも降格させた研究者と、いまだに独立種として扱う研究者が並立しています。この記事では、窓の見どころと、その名前がどこから来たのかを、書誌データと自生地の実測値でたどります。
この記事でわかること
- ピグマエアの見どころ = 窓の透明度ではなく窓面のざらつきと銀白の点
- ラベルの変種名がいつ・誰の見解で付いた名前かを年表でたどれる
- 自生地がどれだけ狭いか、公開データベースの実測値で確かめられる
- 近縁種との見分けは「断定」でなく「次に見る所」で進める
ピグマエアとは — 窓が「ざらつく」レツーサ群
ピグマエアの見どころは、窓の透明度ではなく、窓面の手ざわりにあります。葉は短く肉厚で、先端が三角形に切り詰められたような形になり、その切断面が「窓」として上を向きます。ここまではハオルチアの品種と系統の全体像で整理した軟葉系の基本と同じですが、ピグマエアの窓はすりガラスのように曇り、指で触れると細かな粒を感じるほどざらつきます。
この質感は、英語の記載で scabrous(ざらざらした)や papillate(小さな突起がある)と表現される性質です。透明な窓を持つクーペリー系とは、そもそも見るべき場所が違います。クーペリー系は「どれだけ透けるか」を競いますが、ピグマエアは「どれだけ白い点や筋が乗るか」を見る植物です。上の写真で窓面に走っている銀白色の帯が、まさにその特徴にあたります。
TYPE A
つるりと透ける窓
表面がなめらかで、光を奥まで通す … オブツーサ・クーペリー系に多い見え方。評価軸は「透明度」
TYPE B
ざらつく窓(scabrous)
表面が細かく荒れ、光が散って曇る … レツーサ群に多い見え方。評価軸は「斑や筋の入り方」
TYPE C
粒が立つ窓(papillate)
微小な突起が並び、光が粒ごとに反射する … ピグマエアで語られるのは主にこの見え方
この 3 つは別々の植物の話ではなく、同じ「窓」という器官の表面の違いです。手元の株がどれに近いかを見るだけで、ハオルチアという大きな属のなかで、その株がどのあたりに位置するのかの見当がつきます。ピグマエアの場合、B と C の中間から C 寄りの見え方をすることが多い、というのが公開されている記載の共通点です。
ただしこの質感は光の当て方でかなり印象が変わります。真上から強い光を当てると銀白の点が飛んで見えず、斜めから柔らかい光を当てると急に浮かび上がります。写真だけで「ざらついていないからピグマエアではない」と判断するのは危険です。
基本情報 — 学名・自生地・耐寒性
ピグマエアの基本データ
Quick Spec
学名
Haworthia pygmaea Poelln.(1929)
科
ツルボラン科(Asphodelaceae)
属の扱い
Haworthia のまま(Haworthiopsis へは移っていない)
系統
軟葉系・レツーサ(retuse)群
流通名
延寿城(えんじゅじょう)
自生地
南アフリカ 西ケープ州(Riversdale 〜 Groot Brakrivier)
生育環境
沿岸の renosterveld・fynbos の岩場の露頭
下位分類群
6 変種 + 2 品種(GBIF backbone)
越冬の目安
属全体の一般指針として最低 3〜5℃ を下回らない要確認
保全評価
Data Deficient – Taxonomically Problematic(SANBI・2014)
学名は Haworthia pygmaea Poelln. で、1929 年に von Poellnitz が記載しました(出典 = 国際植物名索引 IPNI。原記載は Repert. Spec. Nov. Regni Veg. 27 巻 132 頁)。種小名の pygmaea は「小さい」の意で、株が大きくならない性質から来ています。国際的な分類データベース GBIF では受理名として登録され(usageKey 2779737)、World Flora Online でもツルボラン科 Haworthia 属に置かれています。
ここで押さえておきたいのが、属の扱いです。2013〜2014 年の再編で、十二の巻やアテヌアータのような硬葉系は Haworthia 属から Haworthiopsis 属へ、大型で硬い一群は Tulista 属へ移されました。園芸の現場ではいまも旧属名で流通するため混乱しやすいところですが、ピグマエアはレツーサ群として Haworthia 属に残っています。つまり「ハオルチア・ピグマエア」という呼び方は、現在の分類でもそのまま通用します。
越冬温度については、この種に固有の一次情報を確認できませんでした。園芸系の二次情報では氷点下から 10℃ 台まで数値が食い違っており、そのまま引くと誤情報になります。当サイトでは、ハオルチア属全体の一般指針として最低でも 3〜5℃ を下回らない環境で越冬させ、できれば 5℃ 以上を保つという目安を示すにとどめ、種固有の数値は要確認として扱います。確かなのは、自生地が南緯 34 度付近の海岸性の温暖乾燥地であり、凍結する環境ではないという点だけです。属全体の目安の根拠はハオルチアの越冬(耐寒性)にまとめています。
自生地 — 地面に埋もれ、窓だけを地表に出す
この写真が、ピグマエアの窓がなぜあの形をしているのかの答えです。自生地では株の大部分が地中に埋まり、地表に出ているのは切り詰められた葉先——つまり窓だけ。乾燥と強い日射から体を守りながら、窓から採り込んだ光で地中の葉が光合成する、という仕組みです。玉扇やリトープスと同じ戦略で、窓は「見せるための器官」ではなく「生き延びるための器官」です。
栽培株を上から見たときの平たい姿は、この自生の姿の名残です。逆にいえば、鉢の中で株が持ち上がって横から葉が見えるようになっていたら、それは自生地とはかけ離れた状態だということでもあります。
HABITAT DATA / MEASURED 2026-07-24
自生地レンジ — 公開データベースの実測値
分布域(記述)
Riversdale 〜 Groot BrakrivierSANBI
生育環境
沿岸性 renosterveld と fynbos の岩場の露頭SANBI
緯度レンジ
-34.50 〜 -34.00GBIF 座標付き 32 件
経度レンジ
21.375 〜 22.174GBIF 座標付き 32 件
総オカレンス
69 件(うち南アフリカ 56 件)記録そのものが少ない
標本ラベルの地名
Riversdale District / Gouritz 川河口 / Stillbaai / Albertinia / Draaihoek / Vleesbaai
本記事の観察
iNaturalist の 3 観察はいずれも Eden(Garden Route)地区・research grade
出典 = GBIF occurrence search(taxonKey 2779737)/ SANBI Red List / iNaturalist。2026-07-24 取得
数字で見ると、ピグマエアの分布はきわめて狭いことがわかります。座標が付いた記録 32 件はすべて西ケープ州に収まり、緯度でおよそ 0.5 度、経度でおよそ 0.8 度の帯のなかに入ります。地名を並べても、Gouritz 川の河口周辺から Stillbaai、Albertinia、Vleesbaai といった海岸沿いの町が続くだけです。「南アフリカ原産」という一言では見えない、海沿いの限られた区域の植物だという実像がここにあります。
自生地の株が赤褐色に色づいているのは、日射が強いからです。栽培下で「きれいな緑」を保っている株のほうが、自生の姿からは遠いということになります。もっとも、日焼けを起こしてまで色を出す必要はありません。
なお、上の 3 枚は撮影者も観察も別々です。同じ地域で、複数の観察者が同じ姿を記録しているという点が、この生態が個体差でなく種の性質であることの裏づけになります。
名前の変遷 — 1929 年から 2016 年まで
ピグマエアをめぐる名前の 3 期 — 記載 → 移動 → 統合と分割
FIG.04Timeline
第 1 期 記載
pygmaea・dekenahii・argenteomaculosa がそれぞれ別の名前として世に出る
1929 Poelln. が H. pygmaea を記載(Repert. Spec. Nov. Regni Veg. 27: 132)/ 1944 G.G.Sm. が H. dekenahii と その変種 argenteomaculosa を記載(J.S.African Bot. 10: 140)
第 2 期 移動
同じ植物が retusa → magnifica → pygmaea と、3 つの種の下を渡り歩く
1976 argenteomaculosa が H. retusa の品種へ / 1982 dekenahii が H. retusa の変種へ / 1997 dekenahii は H. magnifica の変種へ、argenteomaculosa は H. pygmaea の変種へ(Aloe 34(1–2): 6)
第 3 期 統合と分割
統合する側と分割する側が、同じ植物に別々の名前を与え続ける
2002 林が H. esterhuizenii を独立種として記載(Haworthia Study 7: 14)/ 2004 Breuer が H. vincentii を記載 / 2012 Bayer が dekenahii・acuminata・fusca・vincentii を pygmaea の変種へ統合(Haworthia Update 7(4): 36)/ 2016 Breuer が esterhuizenii を pygmaea の変種へ(Alsterworthia Int. 16(2): 6)
年と出版元はすべて国際植物名索引(IPNI)の登録情報にもとづく
書誌年表
ピグマエアの変種名を理解する近道は、「その名前がいつの見解か」を知ることです。上の年表のとおり、いま var. argenteomaculosa と呼ばれている植物は、1944 年には H. dekenahii の変種として、1976 年には H. retusa の品種として世に出ていました。植物が変わったのではなく、それをどの種に含めるかという判断が変わっただけです。
この動きが厄介なのは、園芸の流通ラベルが更新されないまま残るためです。1980 年代に「レツーサ・デケナヒー」として輸入された株の子孫が、いまも同じ名札で売られていることは珍しくありません。名札が間違っているというより、名札が付いた時点の分類を保存していると考えるほうが実態に近いといえます。
もうひとつ、この年表が示しているのは、「まとめる派」と「分ける派」がいまも並立していることです。2012 年に Bayer が 4 つの名前をピグマエアの変種へ統合した一方で、2002 年に林が独立種として記載した H. esterhuizenii は、2016 年に Breuer によって変種へ降格されたものの、別のデータベースでは基本変種の異名として扱われています。同じ植物に、いま 3 通りの呼び方が生きているということです。
ハオルチアは何種あるのか — 主要 3 見解の併記
統合派 BAYER
種数
約 60 種
立場
変異の幅とみてまとめて数える
ピグマエアでは
4 つの独立種名を変種へ統合(2012)
中間 BREUER
種数
約 366 種
立場
やや細かく分ける
ピグマエアでは
vincentii を記載(2004)、esterhuizenii を変種へ(2016)
細分派 HAYASHI
種数
約 546 種
立場
さらに細かく分ける(林)
ピグマエアでは
esterhuizenii を独立種として記載(2002)
ピグマエアは、この 3 つの立場の違いが実物で見える教科書のような種です。どれが正しいという話ではなく、ハオルチアがそれだけ変異に富み、境界を引きにくい植物だという表れです。ここでは、それぞれの見解が「いつ・どの文献で」示されたかを並べて見ていきます。
変種と型 — 7 つの名前
var. pygmaeaBASE

基本変種 var. pygmaea
変種指定なし群生する日射で赤紫
var. argenteomaculosaSILVER SPOT

銀点タイプ var. argenteomaculosa
銀白の点が密網目状1944 年記載
写真で示せる変種は、この 2 つだけです。左は Wikimedia Commons に変種を指定せず Haworthia pygmaea として掲載されている群生株、右は var. argenteomaculosa として掲載されている単ロゼットです。名前の由来である銀白色の点(argenteo = 銀の、maculosa = 斑点のある)が、右の株では窓面いっぱいに網目状に広がっているのがわかります。残りの変種については、商用利用できるライセンスの写真が存在しません。当サイトは実在する銘や変種の「写真らしい」画像を生成して埋めることはしないため、以下は書誌の表として示します。
| 名前 | 元の記載(basionym) | ピグマエアの変種になった経緯 |
|---|---|---|
| var. pygmaea | H. pygmaea Poelln. 1929 | 基本変種。種そのもの |
| var. argenteomaculosa | H. dekenahii var. argenteomaculosa G.G.Sm. 1944 | retusa の品種(1976)を経て、1997 年に Bayer が pygmaea の変種へ |
| var. dekenahii | H. dekenahii G.G.Sm. 1944 | retusa の変種(1982)→ magnifica の変種(1997)→ 2012 年に Bayer が pygmaea の変種へ |
| var. vincentii | H. vincentii Breuer 2004 | 独立種として記載され、2012 年に Bayer が pygmaea の変種へ |
| var. esterhuizenii | H. esterhuizenii M.Hayashi 2002 | 林が独立種として記載 → 2016 年に Breuer が pygmaea の変種へ。基本変種の異名とする見解もある |
| var. acuminata | Bayer | 2012 年に Bayer が pygmaea の変種として整理。南アフリカの Sensitive 種指定を受けている(後述) |
| var. fusca | Breuer | 2012 年に Bayer が pygmaea の変種として整理 |
この表を通して見えるのは、「変種」という言葉の重みが名前ごとに違うということです。基本変種を除く 6 つのうち 4 つは、もともと独立した種として記載された名前でした。統合派の整理によって変種の位置に置かれていますが、細分派の文献ではいまも種として扱われます。手元の株のラベルに書かれた名前が、どちらの立場の文献に由来するのかまでは、ラベルからは読み取れません。
園芸銘との対応でも同じことが起きています。日本ハオルシア協会(国際園芸学会 ISHS が指定する Haworthia 栽培品種の国際登録機関 = ICRA)の申請登録品種一覧には、「エスタ(ホイゼニ)」の交配による個体品種として 鱗光(りんこう / Rinkou) が挙げられています(出典 = 同協会サイトの申請登録品種一覧)。この「エスタ」にあたる H. esterhuizenii が、上の表のとおり 2016 年にピグマエアの変種へ降格された名前です。園芸銘の親名は、学名の側が動いても書き換わりません。和名・学名・流通名の対応は名前の対照表で引けます。
近縁種との見分け — 「次に見る所」で進める
レツーサ群の近縁 — 断定でなく「次に見る所」の表
ピグマエア H. pygmaea
窓の面
銀白の点・筋が乗ることが多い
肌
ざらつく(粒感がある)
次に見る所
斜めからの光で点が浮かぶか / 産地情報が付いているか
マグニフィカ H. magnifica
窓の面
白い粒が密に乗る
肌
ざらつく
次に見る所
玉扇の「マグニフィカ型」とは別の植物なので、まず何を指しているかを確かめる
この表は「答え」ではなく「次に何を見るか」の表です。そう書く理由は、南アフリカの国家生物多様性研究所(SANBI)自身が、ピグマエアの全国的な保全評価を Data Deficient – Taxonomically Problematic(データ不足・分類学的に問題あり) としているからです(2014 年 3 月評価)。その理由として、H. retusa・H. mutica・H. emelyae の諸型と判別が難しく、集団レベルでの分子的な再検討が必要だと明記されています。
つまり、現地で標本を扱う国家機関ですら「線が引けていない」と表明しているのがこのグループです。手元の株について確度を上げたいなら、見た目だけでなく採集番号や産地情報が付いているかを確認するのがいちばん効きます。
混同注意
「マグニフィカ」という呼び名は、2 つのまったく別の場所で使われます。ひとつは上の表にある独立種 Haworthia magnifica、もうひとつは玉扇(Haworthia truncata)の型として流通する「マグニフィカ型」です。後者は玉扇の下位分類群としては記載されていない呼び名で、両者はそもそも別の植物です。玉扇側の名前の層については玉扇の記事で整理しています。
花 — 白い二唇形の小花
花は地味ですが、その株がハオルチア属であることを確かめられる数少ない手がかりです。細い花茎を長く伸ばし、その先に白い小花をまばらに付けます。花被片には淡い褐色の筋が入り、先が上下に分かれて開く二唇形になる——この形はハオルチア属に共通する特徴で、窓の形がどれだけ違っても花はよく似ています。
逆にいえば、花では種までは絞り込めません。得られるのは「これはハオルチアである」という一段上の確認までです。花茎を切るかどうかを含め、花の扱いはハオルチアの花にまとめています。
育て方の要点 — 光・水・冬
LIGHT
明るい日陰が基本
直射は避け、レース越しの窓辺くらいの明るさで。自生地では体を地中に隠しているため、上からの強光をそのまま受ける想定ではない
WATER
乾いてからたっぷり
水はけを最優先にした用土で、乾湿のメリハリをつける。真夏・真冬は回数を減らす。窓が曇るのは元の性質で、水不足のサインではない
WINTER
凍結させない
属全体の一般指針は最低 3〜5℃ を下回らないこと。種固有の耐寒限界は一次情報が確認できず要確認
育て方はハオルチアの基本から外れません。光・水・用土はハオルチアの育て方、用土・鉢・LED・棚の選び方は育成環境ガイド、間延びの切り分けは徒長の原因と直し方にまとめています。
この種で 1 つだけ覚えておきたいのは、窓が曇っていても異常ではないということです。透明な窓を持つ品種に慣れていると、ピグマエアの曇った窓面を「水が足りない」「汚れている」と誤解しがちですが、これは元からの質感です。拭き取ろうとして表面を傷めるほうが損失になります。
入手時の注意 — 名前と、野生採取のこと
買う前に確かめたい 3 つ
FIG.09Checklist
CHECK 1
名前より株を見る
変種名は付いた時点の分類を保存しているだけで、現在の見解と一致するとは限らない … 窓面の点の入り方と株の締まりを自分の目で確かめる
CHECK 2
実生株・国内栽培株を選ぶ
南アフリカの国家機関が、この種の一部について園芸目的の野生採取を significant(重大)と評価している … 出所を説明できる販売者から買う
CHECK 3
流通量は多くない
国内の EC・オークションで一定量が動いてはいるが、オブツーサや十二の巻のような潤沢さはない … 焦って状態の悪い株を選ばない
当サイトは価格の代表値を掲載しません。集計条件で印象が大きく変わる数値であり、現時点では誠実に示せないと判断しているためです
入手のときにいちばん効くのは、名前の正しさより株そのものを見ることです。ここまで見てきたとおり、ピグマエアの変種名は 90 年のあいだに何度も付け替えられてきました。ラベルは「その株がいつ、どの見解のもとで名付けられたか」の記録であって、現在の分類の答えではありません。窓面に点や筋がしっかり入っているか、葉が徒長せず締まっているか——見て確かめられることのほうが確実です。
もうひとつ、出所についても触れておきます。南アフリカ国家生物多様性研究所(SANBI)の Sensitive Species リストは、ピグマエアの変種のひとつ var. acuminata を 2010 年に Sensitive(取り扱いに注意を要する種)に指定しています。理由として、園芸目的の野生採取が significant な規模で行われていること、成長が遅く採取後の個体群の回復が見込みにくいこと、そして 2018〜2021 年にハオルチア属をめぐる押収と刑事訴追の事例があったことが記載されています。実生で殖やされた株や、国内で栽培された株を選ぶことには、感情論ではない裏づけがあります。
流通の規模については、「ハオルチア ピグマエア」で検索した結果として、楽天市場で 101 件、ヤフオク!で約 27 件の出品を確認しました(2026-07-24 時点)。これらは検索一致の総件数であり、表記揺れや別品種の混入を含む参考値です。当サイトは価格の代表値・平均値を掲載しません。示した件数は取得時点の値であり、価格や入手可能性を保証するものではなく、外れ値の補正も行っていません。実際に買うときは、その時点の出品をご自身で確かめてください。
まとめ
Summary
手ざわりで見る、狭い海岸のハオルチア
ピグマエアは、透明な窓ではなくざらつく窓と銀白の点で見せる軟葉系のハオルチアです。西ケープの海岸沿いの狭い帯にだけ自生し、分類は 90 年のあいだ動き続けてきました。名前の由来をたどると、いま手元にある株のラベルが何を意味しているのかが見えてきます。
窓は手ざわりで見る透明度ではなく、ざらつきと銀白の点の入り方
属は Haworthia のまま硬葉系が Haworthiopsis へ移った後も残留
ラベルは分類の化石変種名は付いた時点の見解を保存しているだけ
断定は誰にもできない南アフリカの国家機関も判別困難と評価している
- ピグマエア Haworthia pygmaea は、窓面がざらつき銀白の点や筋が乗る、レツーサ群の軟葉系ハオルチアです
- 硬葉系が Haworthiopsis 属へ、大型硬質群が Tulista 属へ移った後も、本種は Haworthia 属に残っています
- 自生地は南アフリカ西ケープ州の Riversdale 〜 Groot Brakrivier。座標付きの記録は緯度でおよそ 0.5 度、経度でおよそ 0.8 度の帯に収まります
- 変種名の多くは、かつて独立種として記載され、あとから変種へ降格した名前です。統合派と細分派の見解はいまも並立しています
- SANBI の全国評価は Data Deficient – Taxonomically Problematic。近縁種との判別は国家機関ですら難しいと表明されています
- 買うときは名前より株を見て、実生株・国内栽培株を選ぶ。野生採取をめぐる公的な指摘があります
- 人気品種ランキングで他の品種を見る
FAQ
窓が曇っていて透明感がありません。育て方が悪いのでしょうか?
ピグマエアの窓は元からざらついて曇るタイプです。透明な窓を持つオブツーサやクーペリー系とは評価軸が違い、この種では銀白色の点や筋の入り方を見ます。拭き取ろうとすると表面を傷めるおそれがあります。
「アルゲンテオマクロサ」と書かれた株を買いました。ピグマエアとは別物ですか?
現在広く使われている整理では Haworthia pygmaea var. argenteomaculosa、つまりピグマエアの変種のひとつとして扱われます。1944 年には別種の変種として記載され、1976 年には H. retusa の品種とされた時期もありました。ラベルの名前はその株が名付けられた時点の見解を示しています。
写真を送れば品種を判定してもらえますか?
写真 1 枚で決まらないのは、この種の側の事情です。南アフリカ国家生物多様性研究所(SANBI)自身が、本種を近縁種と判別しにくい分類群として評価しています。確度を上げたいなら、見た目だけでなく採集番号や産地情報が付いているかを確認するのがいちばん効きます。
何℃まで耐えられますか?
最低でも 3〜5℃ を下回らせず、できれば 5℃ 以上 — これが実用の線です(ハオルチア属全体の一般的な指針)。自生地は南緯 34 度付近の海岸沿いで、凍結する環境ではありません。本種に固有の耐寒限界を示す信頼できる一次情報は確認できていないため、この数値は属の指針として使い、要確認としています。
和名の「延寿城」はどこまで正式な呼び名ですか?
日本語の百科事典的な資料と園芸データベースに、別名として記載があります。ただし協会や専門店の表記での裏づけは見つかりませんでした。探すときは「ハオルチア ピグマエア」というカタカナ学名のほうが検索では一般的なので、そちらを使うと見つかりやすくなります。
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出典
- IPNI(国際植物名索引)— H. pygmaea Poelln. 1929 / H. dekenahii G.G.Sm. 1944 / H. esterhuizenii M.Hayashi 2002 / H. vincentii Breuer 2004 ほかの記載情報と出版元: ipni.org
- GBIF — backbone の受理状況(usageKey 2779737)、下位分類群、座標付きオカレンスのレンジ: gbif.org
- World Flora Online — 分類配置(wfo-0000652735): worldfloraonline.org
- SANBI Red List of South African Plants — 全国評価 Data Deficient – Taxonomically Problematic(2014-03-24)、生育環境と分布域: redlist.sanbi.org
- SANBI National Sensitive Species List — var. acuminata の Sensitive 指定(2010)と野生採取の評価: nssl.sanbi.org.za
- 日本ハオルシア協会(ISHS 指定 ICRA)— 申請登録品種一覧「鱗光 / エスタ(ホイゼニ)交配」: haworthia.net
- iNaturalist — 本記事で使用した 3 観察(いずれも research grade・南アフリカ西ケープ Eden 地区): obs 10852101 / obs 231547629 / obs 331208660
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画像クレジット
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扉の写真: Photo: KENPEI / CC BY 3.0, via Wikimedia Commons
基本変種のカード: Photo: Stickpen / パブリックドメイン, via Wikimedia Commons
銀点タイプのカード: Photo: Eria Wei / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
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