ハオルチオプシス・ファスキアータ(十二の巻)|原種の姿・自生地と産地・変種・保全ステータス
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十二の巻Haworthiopsis fasciata(旧 Haworthia fasciata)
系統硬葉系
自生地南アフリカ東ケープ州
見分けの鍵白疣は葉の外側だけ
白い横縞の入った硬い葉を、扇のようでなく螺旋のロゼットに広げる多肉植物。日本では「十二の巻(じゅうにのまき)」の名で親しまれ、園芸店でもっとも見かけるハオルチアのひとつです。ただしこの和名は、いま流通の場でいくつもの植物を指してしまっています。
この記事が扱うのは、その和名の元になった原種 Haworthiopsis fasciata そのものです。南アフリカ東ケープ州のどこに生えているのか、記載された特徴は何なのか、認められている変種はいくつあるのか、そして野生ではどんな状態にあるのか。店頭の株を見分ける話ではなく、植物としての実体を、採集地の記録がついた写真と公的データベースの記述で組み立てます。
この記事でわかること
- 原種 Haworthiopsis fasciata と園芸名「十二の巻」が別の層の名前だということ
- 記載形質は白い疣が葉の外側だけに並び、内面は平滑——葉が繊維質であることも合わせて確認できる
- 自生地が東ケープ州の限られた帯で、野生では準絶滅危惧(NT)とされていること
- 認められている変種は var. fasciata と var. browniana の 2 つで、「variabilis」「patensie」は別の層の呼び名だということ
この頁が扱う「十二の巻」 — 原種と流通名を分ける
「十二の巻」という言葉が乗っている 2 つの層
FIG.01Two layers
LAYER 1 — 学名の層
原種 Haworthiopsis fasciata
1811 年に記載された実在の種。南アフリカ東ケープ州の固有種で、採集地の記録つき個体や保全評価が公的データベースに残る … この記事が扱うのはこちら
LAYER 2 — 流通の層
園芸名としての「十二の巻」
白い横縞の硬葉ハオルチアを広く指す呼び名。近縁のアテヌアータやその選抜・交配が同じ名で並ぶことがある … 見分けの詳細は別記事へ
「十二の巻」という和名は、いま 1 つの植物だけを指していません。白い横縞の入った硬葉のハオルチアはひとまとめにこう呼ばれやすく、店頭では近縁の Haworthiopsis attenuata(アテヌアータ)やその選抜・交配が同じ名札で並ぶことがあります。
そこでこの記事は、範囲を原種側に絞ります。扱うのは学名 Haworthiopsis fasciata として記載され、公的なデータベースに分布・保全・下位分類の記録がある植物です。手元の株がどちらなのかという問いには踏み込みません。
実際に「十二の巻」の名札で展示されている株が、写真の側では別の種として整理されている例があります。下の 1 枚がそれです。
この 1 枚は、和名と学名がずれる現象そのものです。園芸名は「十二の巻」でも、写真を管理している側の同定は attenuata になっています。どちらが正しいかを当サイトが裁定することはできませんが、「十二の巻」というラベルだけでは種を決められないことは、この 1 枚からでも読み取れます。
2 種の違いを実際に見分けたい場合は、十二の巻とそっくりなアテヌアータの違いで葉の内側を軸に整理しています。系統ごとの位置づけはハオルチアの品種と系統の全体像が入口です。
基本情報 — 学名・自生地・耐寒性
Haworthiopsis fasciata 基本データ
QUICK SPEC
学名
Haworthiopsis fasciata (Willd.) G.D.Rowley
旧学名
Haworthia fasciata (Willd.) Haw.
基礎異名
Apicra fasciata Willd. (1811)
科
ツルボラン科 Asphodelaceae
系統
硬葉系(Haworthiopsis 属)
英名
zebra haworthia
自生地
南アフリカ 東ケープ州の固有種
分布域
ハムトース川流域 → ポートエリザベス
生育環境
酸性の砂岩由来土壌・草質フィンボスの石礫地
株の大きさ
高さ 12cm ほど / 約 10〜15cm出典で差
花
夏・40cm ほどの細い花茎に白い筒状花
耐寒性
RHS H2(1〜5℃)/ USDA 10a-11b要確認
保全
準絶滅危惧 NT(SANBI・個体群は減少)
下位分類
var. fasciata / var. browniana の 2 変種
学名と自生地は出典で確定できますが、越冬温度だけは出典どうしが食い違います。この節は、確かめられることと確かめられないことを分けて置くための表です。
学名。現在の受容名は Haworthiopsis fasciata (Willd.) G.D.Rowley で、2013 年の Alsterworthia International 特別号 10 号 4 頁が初出です。もとになった名前(基礎異名)は 1811 年の Apicra fasciata Willd.。園芸の場で今も広く使われる Haworthia fasciata は、この種の旧学名にあたります。どちらの表記も同じ植物を指します。
自生地。南アフリカ共和国の固有種で、州でいえば東ケープ州にだけ分布します。南アフリカ国立生物多様性研究所(SANBI)のレッドリストは、分布域を「ハムトース川流域からポートエリザベス(現ジェコベーハ)まで」と記述しています。生育環境は「酸性の砂岩由来土壌にできた、草質のフィンボスの石礫地」。日本の室内で見る姿からは想像しにくい、痩せた岩まじりの斜面が本来の住まいです。
耐寒性は、ここが正直に書きにくい項目です。英国王立園芸協会(RHS)は耐寒性区分 H2、つまり「低温には耐えるが凍結には耐えない(1〜5℃)」としています。いっぽう米ノースカロライナ州立大学の植物データベースは USDA ハーディネスゾーン 10a〜11b としており、10a の下限はおよそ -1℃ です。両者は一致していません。
実用上は「最低でも 3〜5℃ を下回らない場所へ取り込む」を目安にし、種固有の正確な値は「要確認」のまま扱います(この目安の根拠はハオルチアの越冬(耐寒性)にまとめています)。凍結に耐えないという点だけは、2 つの出典で一致しています。
原種としての姿 — 記載形質を写真で見る
この種の記載形質は、「白い疣が葉の外側だけに横に並ぶ」ことと「葉が繊維質であること」の 2 点に集約されます。上の写真は、そのうち後者を示した珍しい 1 枚です。
硬い葉を折ると、断面から白い繊維が糸を引くように伸びています。日本語の紹介ではほとんど触れられない特徴ですが、英語版 Wikipedia は「外からは見えないが、もっとも根本的な区別点」として葉が繊維質であることを挙げ、同じ性質を持つ仲間として glauca・coarctata・reinwardtii・longiana を並べています。ただし、これは株を傷つけないと確認できません。買う前の見分けには使えない形質です。
この 4 種のうち、当サイトが単体の品種頁を立てているのは reinwardtii です。疣の並びが横の帯ではなく縦の列になる点は外から見て確かめられるので、縦に列で並ぶ疣 — レインワルディ(鷹の爪・九輪塔)と並べて見ると、この種の「白い疣が横に並ぶ」という特徴の輪郭がはっきりします。
もう一方の白い疣は、外から確認できます。RHS は葉について「外側の面に、白い疣状の突起がはっきりした帯をなす」と記述し、ノースカロライナ州立大学のデータベースも「葉の外面に白い横縞。内面は平滑」としています。白い粒が葉の内側(上面)にも一面に散っているなら、この種ではない可能性が上がる——それがこの記載から導ける、いちばん実用的な読み方です。
花は、姿からは想像しにくいほど地味です。RHS の記載では、夏に 40cm ほどまで伸びる細い花茎の先へ、白い筒状の花をまばらにつけます。ノースカロライナ州立大学のデータベースも、夏・白・筒状・1 インチ未満・総状花序と、ほぼ同じ内容を記録しています。
上の写真で分かるとおり、花の先は 2 つに割れて開きます(二唇形)。これは Haworthiopsis 属に共通する花のかたちで、RHS の属の説明にも書かれています。葉ではなく花を見ると、硬葉系も軟葉系も同じ仲間なのだとよく分かります。なお果実は 3 室の蒴果で、種子には翼状の稜があると記録されています。
自生地と産地 — 東ケープのどこに生えるか
分布の帯 — 内陸の川筋から海沿いの都市まで
FIG.02Range
西の端
ハムトース川流域(Gamtoos River Valley)
SANBI が記す分布域の起点 … 周辺の農地拡大(牧草地化のための耕起)が脅威に挙げられている
東の端
ポートエリザベス(現ジェコベーハ)
同じく分布域の終点 … 都市の急速な拡大が脅威に挙げられている
記録のある採集地の例 … Kabeljouws River / Paradise Beach / Loerie / Gamtoos / ユーテンハーヘ北西
概念図
分布は、東ケープ州の一本の帯に収まっています。SANBI が記す範囲は「ハムトース川流域からポートエリザベスまで」。生育地は 20 か所超で記録されていますが、分布域そのものの広さ(EOO)は 3,400km² と限られます。
主要な植生型として SANBI が挙げているのは、Humansdorp Shale Renosterveld、Algoa Sandstone Fynbos、Kouga Grassy Sandstone Fynbos、Tsitsikamma Sandstone Fynbos、Sundays Valley Thicket、Sundays Mesic Thicket、Motherwell Karroid Thicket、Bethelsdorp Bontveld の 8 つ。フィンボスと呼ばれる硬葉低木の植生と、シケット(密生した低木林)の両方にまたがって生えていることが読み取れます。
次の 3 枚は、いずれも MBB(Haworthia 研究で知られる M.B.Bayer)の採集番号がついた株です。番号は採集された産地の記録であり、産地不明の栽培株より情報の確かさが一段上がります。
MBB6797鉢の栽培株

Paradise Beach fasciata として記録
密な柱状の群れ白い疣が濃い褐色を帯びる
MBB6806鉢の栽培株

Loerie fasciata として記録
単独のロゼット白い疣は小さめ黄緑〜赤
MBB6809鉢の栽培株

Gamtoos fasciata として記録
赤褐色に染まる白い疣が明瞭群れて育つ
3 枚を並べると、同じ種として記録された株でも姿がかなり違うことが分かります。色は黄緑から赤褐色まで振れ、疣の粒立ちも、群れ方も揃いません。産地が違えばこれだけ幅がある、と読むのが素直でしょう。
ひとつ断っておくと、この 3 枚はいずれも暗い背景で撮られた鉢の栽培株です。MBB 番号は「その産地から採集された系統である」という記録であって、写真そのものが自生地の光景ではありません。この記事で自生の様子を写しているのは、冒頭の扉に置いた Kabeljouws River の 1 枚だけです。
そして、これらはすべて写真を投稿した側の同定に基づいています。当サイトが確認できるのは「そう記録されている」という事実までで、標本にあたって検証したわけではありません。
保全ステータス — 入門種なのに、野生では準絶滅危惧
評価
準絶滅危惧 Near Threatened B1ab(ii,iii,iv,v)
評価機関
SANBI(南アフリカ国立生物多様性研究所)レッドリスト
評価日
2005-01-24 / 評価者 J.E. Victor & G. Marx
版
2024.1最新版で確認
分布域の広さ
EOO 3,400 km²
生育地の数
20 か所超で記録
個体群の傾向
減少Decreasing
脅威 1
ポートエリザベス周辺の急速な都市拡大
脅威 2
ハムスドルプ周辺の農地拡大(牧草地化のための耕起)
過去の評価
1996 年は Rare / 2009 年以降 NT
安価に手に入る入門種でありながら、野生では準絶滅危惧に置かれています。SANBI のレッドリストは本種を Near Threatened と評価し、個体群の傾向は「減少」としています。
評価の理由として書かれているのは 2 つです。ひとつは、20 か所超で記録があるとはいえ分布域が 3,400km² に限られること。もうひとつは、生育地の消失が現在進行形であること——牧草地にするための耕起と、ポートエリザベス周辺の急速な都市拡大が名指しされています。
この落差は、覚えておく価値があります。園芸店に並ぶ株は栽培下で殖やされたものであり、購入が直接この評価に影響するわけではありません。それでも、「どこにでもある丈夫な多肉」という店頭の印象と、原産地での実像が同じでないことは、図鑑としてきちんと書いておくべき事実だと考えています。
変種と型 — 認められているもの・流通の呼称
下位分類の 2 つの層 — 認められた変種と、それ以外の呼び名
var. fasciata 基準変種
扱い
POWO が認める変種
観察数
iNaturalist で 56 件
位置づけ
種の基準となる型
var. browniana 2016 年に整理
扱い
POWO が認める変種
観察数
iNaturalist で 7 件
産地
ユーテンハーヘ北西
variabilis / patensie 別の層
扱い
現行の変種ではない
variabilis
古い型名で、いまは異名
patensie
POWO・SANBI に見当たらない
いま認められている下位分類は、var. fasciata と var. browniana の 2 つだけです。Kew の POWO(Plants of the World Online)が受容しているのはこの 2 変種で、それ以外の名前は別の層に属します。
var. browniana は、もともと Haworthia browniana Poelln. として記載され、Bayer が fasciata の品種(forma)として扱った経緯を持ちます。現在の組み合わせ Haworthiopsis fasciata var. browniana (Poelln.) Gildenh. & Klopper は 2016 年の Phytotaxa 265 巻で成立しました。産地はユーテンハーヘ(Uitenhage)の北西と記録されています。
var. brownianaNW Uitenhage

産地記録つきの株(1)
細かい白い疣横に並ぶ内側は滑らか
var. brownianaNW Uitenhage

産地記録つきの株(2)
葉先が赤い同じ産地の別カット栽培下の株
iNaturalist の観察数で見ると、種全体が 380 件、var. fasciata が 56 件、var. browniana が 7 件です(2026-07-24 時点)。変種として記録される観察はごく少なく、ほとんどは種のレベルで止まっていることが分かります。
「variabilis」と「patensie」は、変種ではありません。前者(f. variabilis Poelln.)は SANBI が挙げる 17 の異名のひとつで、かつて付けられた型名が現在は使われていないという位置づけです。後者「patensie」は英語版 Wikipedia が f. patensie として挙げているものの、POWO にも SANBI にも見当たりません。栽培や流通のなかで使われている呼称と考えるのが妥当です。
異名の多さ自体が、この種の歴史を語っています。SANBI が掲げる異名は Aloe fasciata、Apicra fasciata、Haworthia subfasciata をはじめ 17 名。200 年のあいだ、いくつもの属といくつもの型名のあいだを行き来してきた植物だということです。
名前の来歴 — Apicra から Haworthiopsis へ
NAME HISTORY / 1811 → 2016
名前が移ってきた道すじ
1811 — 記載WILLDENOW
Apicra fasciata Willd.Mag. Neuesten Entdeck. … Berlin 5: 272
19 世紀 — 属の移動HAWORTH
Haworthia fasciata (Willd.) Haw.園芸で今も広く使われる旧学名
2013 — 3 属への分割ROWLEY
Haworthiopsis fasciata (Willd.) G.D.RowleyHaworthia / Haworthiopsis / Tulista の 3 属へ
2016 — 属内の整理GILDENHUYS & KLOPPER
Haworthiopsis 属 18 種の分類を整備var. browniana が Haworthiopsis へ移る
種数の見解
林 546 / Breuer 366 / Bayer 60見解が分かれる
園芸銘の登録
日本ハオルシア協会(ICRA・2014 年指定)
対象属
Haworthia(Haworthiopsis・Tulista を含む)ほか
登録官
Dr Hayashi Masahiko
出典 = IPNI / GBIF / POWO / Phytotaxa 265(1) / ISHS ICRA リスト #100
この種の名前は、200 年かけて 3 つの属を渡ってきました。出発点は 1811 年、ヴィルデノウが Apicra fasciata として記載したところです。その後ホーワースが Haworthia 属へ移し、園芸の世界ではこの Haworthia fasciata がいまも広く通用しています。
大きく動いたのは 2013 年です。G.D. Rowley が分子系統の成果をふまえ、広い意味での Haworthia を Haworthia(軟葉系)・Haworthiopsis(硬葉系)・Tulista の 3 属に分けました。本種はこのとき Haworthiopsis fasciata になりました。ラベルの表記が店ごとに違うのは、この分割がまだ現場に浸透しきっていないからで、旧名が間違いというわけではありません。
続く 2016 年、Gildenhuys と Klopper が Haworthiopsis 属(18 種)の属内分類を整えました。旧 Haworthia から引き継いだ 6 つの節に加えて 1 節を新設し、7 つの新しい組み合わせを発表しています。var. browniana が現在の名前になったのも、この仕事の一部です。
ハオルチアが何種あるのかは、いまも決着していません。細分する立場と統合する立場で数字がまるで違い、代表的な見解だけでも林が 546 種、Breuer が 366 種、Bayer が 60 種と開きます。本種はこのいずれの立場でも独立した種として扱われますが、「ハオルチアは○種」と単一の数字で語れないことは、頭に置いておくと混乱が減ります。
園芸品種名(銘)の正式な登録先は、日本にあります。国際園芸学会(ISHS)の国際栽培品種登録機関(ICRA)一覧 #100 に登録されているのは日本ハオルシア協会で、2014 年の指定です。対象は原文で「Haworthia Duval(Haworthiopsis G.D. Rowley と Tulista Raf. を含む)」ほかとされており、硬葉系の園芸銘もこの協会の登録が正ということになります。登録官は Dr Hayashi Masahiko。先ほどの「林 546 種」の林と同じ人物です。
名札は当てにならない — 3 つの実例
名札に fasciata と書いてあっても、その株が記載どおりの特徴を示しているとは限りません。上の 1 枚は、名札の文字と実物の見え方が噛み合わない例として、いちばん読み取りやすいものです。
記載では「白い疣は葉の外側だけ、内面は平滑」。しかしこの写真の株は、内側にも白い粒が一面に散っています。では何なのかを、当サイトは書きません。
L 25181ライデン植物園

名札は Haworthia fasciata
白い点が散る程度横帯は見えない断定はしない
L 990033ライデン植物園

名札は Haworthia fasciata
短く厚い舟形の葉疣が見当たらない断定はしない
2 枚とも、同じ日にオランダのライデン植物園で撮られたものです。どちらの名札にも Haworthia fasciata とありますが、写真から確認できる姿は互いに違い、いずれもこの種の記載形質を示していません。
植物園には受入番号(L 25181 / L 990033)まで記録されています。それでもなお、名札と実物が一致しない例が起こる。これは誰かの不注意というより、200 年ぶんの名前の入れ替わりと、栽培下での取り違えが積み重なった結果だと考えるほうが実態に近いはずです。
ここから引き出せる姿勢はひとつです。名札は出発点であって結論ではない。当サイトが写真に「〜として記録された株」という言い方を使い続けているのも、同じ理由からです。
育て方の要点 — 硬葉系の基本と、割れる光の推奨
LIGHT
明るい日陰から慣らす
出典によって推奨が割れる … RHS は「強い日射から保護しつつ明るく」、米ノースカロライナ州立大は「直射 2〜6 時間の半日陰」
WATER
生育期は控えめ・冬はほぼ乾かす
RHS の栽培条件 … サボテン用土・低湿度と通風・生育期は控えめに水と薄い低窒素肥料・冬はほぼ乾かす
WINTER
凍らせない
2 つの出典が一致するのは「凍結に耐えない」の一点 … 目安は 3〜5℃ を下回らない室内へ(種固有の値は要確認)
育て方は硬葉系ハオルチアの基本どおりです。水はけのよい用土、風の通る明るい場所、生育期は控えめの水、冬はほぼ断水。この 4 点を守れば、多肉植物のなかでは扱いやすい部類に入ります。
この種で 1 つだけ注意がいるのは、光の推奨が出典で割れることです。RHS は「明るい場所で、ただし強い日射からは保護する」、ノースカロライナ州立大学のデータベースは「半日陰(直射は 1 日 2〜6 時間)」。屋外栽培が前提の英国と鉢の室内管理を含む米国東部の差と読めるので、明るい日陰から始めて、様子を見ながら光を強くしていくのが実用の線です。株がゆるんできたときの見分け方は徒長の記事で扱っています。
水やり・用土・鉢の考え方はハオルチアの育て方に、LED や用土の選び方は育成環境ガイドにまとめました。なお成熟までの期間は 2〜5 年と RHS が記録しており、殖え方はゆっくりです。
入手のときに見る所 — 名札より、葉
手がかり
店頭で見える
記載と照合
単独で決め手
葉の内側の質感
◎
◎
○
外側の白疣の並び
◎
◎
△
産地・採集番号
△
◎
○
葉の繊維
—
◎
○
名札の学名表記
◎
△
△
読み方 … ◎ = よく効く / ○ = 効くが単独では不足 / △ = 参考程度 / — = 購入前には使えない。当サイトの整理であり、絶対的な基準ではありません
買うときに効くのは、名札ではなく葉です。とくに葉の内側(上面)。記載では「内面は平滑」で、粒が一面に散っているならアテヌアータを含む別の候補が浮上します。白い横縞そのものが見えず、面に細い線が交差していたり、葉が三列に重なって立ち上がっていたりする場合は、竜鱗やビスコーサという別の硬葉系です。ただし個体差も栽培条件による見え方の差もあるので、1 つの手がかりで確定させないのが安全です。2 種の見分けを詳しく追う場合は十二の巻とアテヌアータの違いへどうぞ。
流通量は多く、探すのに苦労する植物ではありません。大手通販モールで「十二の巻」を検索すると 217 件が該当しました(2026-07-24 時点)。参考までに「ハオルチオプシス」は 105 件、「アテヌアータ」は 158 件です。
これらは検索一致の総件数であり、表記揺れや別品種の混入を含む参考値です。同じ「十二の巻」の名で、原種・近縁種・選抜・交配が並んでいる可能性を含みます。当サイトは平均価格を掲載していません。件数も価格も時期で変動するもので、購入価格を保証するものではありません。
「錦」などの園芸銘がついた株については、名前の出どころを確かめてください。園芸品種名の正式な登録先は日本ハオルシア協会(ICRA)で、硬葉系の Haworthiopsis もその対象範囲に含まれます。協会の記録に辿れない銘は、流通のなかで付いた呼び名である可能性があります。和名・学名・流通名の対応は名前の対照表から引けます。
まとめ
Summary
原種の fasciata は、4 つの手がかりで捉えられる
白い疣は葉の外側だけに横に並び、内面は平滑。葉は繊維質で、折ると白い繊維が見える。自生地は南アフリカ東ケープ州の、ハムトース川流域からポートエリザベスまでの限られた帯。そして野生では準絶滅危惧(NT)で、個体群は減少しています。学名は 2013 年に Haworthia から Haworthiopsis へ移りましたが、旧名も広く使われています。
疣は外側だけ内面は平滑と記載される — 内側の粒は別候補の合図
葉が繊維質折ると白い繊維。買う前には使えないが記載形質
東ケープの帯ハムトース川流域〜ポートエリザベス・EOO 3,400km²
野生では NT入門種でありながら個体群は減少している
- 受容名は Haworthiopsis fasciata(2013 年・Rowley)。基礎異名は 1811 年の Apicra fasciata、旧学名 Haworthia fasciata も有効に使われています
- 認められている下位分類は var. fasciata と var. browniana の 2 つ。「variabilis」は異名、「patensie」はデータベースに無い呼称です
- 越冬温度に種固有の一次情報はありません。RHS H2(1〜5℃)と USDA 10a-11b を併記し、実用上は 3〜5℃ を下回らない場所を目安に(要確認)
- 園芸銘の正式な登録先は日本ハオルシア協会(ICRA)で、Haworthiopsis も対象範囲に含まれます
硬葉系のほかの品種と注目度を比べたいときは、ハオルチア人気品種ランキングが早い入口です。
FAQ
Haworthia fasciata と Haworthiopsis fasciata はどちらが正しいですか?
同じ植物を指します。2013 年の再分類で硬葉系は Haworthiopsis 属へ移り、現在の受容名は Haworthiopsis fasciata です。Haworthia fasciata は旧学名で、園芸の場では今も広く使われています。
十二の巻の変種はいくつありますか?
Kew の POWO が認めているのは var. fasciata と var. browniana の 2 つです。「variabilis」は現在は異名として扱われ、「var. patensie」は POWO・SANBI のいずれにも見当たらない呼称です。
何度まで寒さに耐えますか?
3〜5℃ を下回らない室内へ取り込む — これが実用の線です。出典は割れていて、RHS は耐寒性 H2(1〜5℃)、ノースカロライナ州立大学は USDA 10a-11b としています。凍結に耐えない点だけは共通なので、その最も安全側を取ったのがこの 3〜5℃ です。種固有の一次情報は無く、正確な値は要確認としています。
花は咲きますか?
咲きます。RHS の記載では夏に 40cm ほどの細い花茎が伸び、白い筒状の小さな花をつけます。先が 2 つに割れて開く二唇形で、これは Haworthiopsis 属に共通する花のかたちです。
安く売られていますが、希少な植物ですか?
栽培下では広く殖やされ入手しやすい一方、野生では SANBI のレッドリストで準絶滅危惧(NT)とされ、個体群は減少しています。分布域は 3,400km² と限られ、都市拡大と農地拡大が脅威に挙げられています。
手元の株が十二の巻か知りたいのですが。
次の 3 点を順に見てください。①葉の内側(上面)が平滑か ②白い疣が葉の外側で横に並ぶか ③産地の記録があるか。とくに①が効きます — 粒が一面に散っているなら、この種以外の候補が浮上します。近縁種との比較は別記事にまとめています。
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出典
- SANBI Red List of South African Plants — Haworthiopsis fasciata(保全ステータス NT・EOO 3,400km²・分布域・植生型・脅威・異名 17 名・評価者と版)
- POWO / Kew — Haworthiopsis fasciata および var. browniana(受容名・下位分類)
- GBIF Backbone — Haworthiopsis fasciata(受容状態・基礎異名・初出 Alsterworthia Int. Special Issue 10: 4 (2013))
- IPNI — Apicra fasciata Willd.(基礎異名の初出年と書誌 1811)
- RHS Plant Finder — Haworthiopsis fasciata (zebra haworthia)(耐寒性 H2・株の大きさ・花・栽培条件・成熟までの期間)
- NC State Extension Gardener Plant Toolbox — Haworthiopsis fasciata(USDA 10a-11b・株の大きさ・光・葉と花と果実の記載)
- ISHS International Cultivar Registration Authority list — #100 Haworthia Society of Japan(登録官・2014 年指定・対象属に Haworthiopsis と Tulista を明記)
- iNaturalist — Haworthiopsis fasciata(観察数 380 / var. fasciata 56 / var. browniana 7。2026-07-24 時点)
- Gildenhuys, S.D. & Klopper, R.R. (2016) A synoptic review and new infrageneric classification for the genus Haworthiopsis. Phytotaxa 265(1): 1-14(属内 18 種の整理・var. browniana の組み合わせ)
- Rowley, G.D. (2013) Generic concepts in the Alooideae. Part 3 — The phylogenetic story. Alsterworthia International Special Issue 10: 1-6(3 属への分割)
- 英語版 Wikipedia — Haworthiopsis fasciata(葉が繊維質であることを「もっとも根本的な区別点」とする記述・葉の内外面の疣の分布)
- 種数の見解(林 546 / Breuer 366 / Bayer 60)は当サイトの分類方針にもとづく併記です
- 写真は Wikimedia Commons の PD / CC0 / CC BY / CC BY-SA 画像のみを使用し、ライセンスと現行の同定を Commons API で確認しています(確認日 2026-07-24)
Field Noteデータ集約図鑑
画像クレジット
本記事の写真はすべて Wikimedia Commons の CC ライセンス画像です(PD / CC0 / CC BY / CC BY-SA のみ採用・ND / NC は不採用)。本文中の写真は個別の帰属を写真の下に常時表示しています。冒頭のプレートとカード内の写真については、ライセンス条文へのリンクを含む帰属を以下にまとめます。
冒頭のプレート(MBB Kabeljouws River): Photo: Abu Shawka / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
MBB6797 Paradise Beach: Photo: Abu Shawka / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
MBB6806 Loerie: Photo: Abu Shawka / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
MBB6809 Gamtoos: Photo: Abu Shawka / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
var. browniana(1): Photo: Abu Shawka / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
var. browniana(2): Photo: Abu Shawka / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
ライデン植物園 L 25181: Photo: Rudolphous / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
ライデン植物園 L 990033: Photo: Rudolphous / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons


















